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巻き込まれ宇宙人の異世界解釈 ~エリート軍人、異世界で神々の力を手に入れる?~  作者: こどもじ
七人の子編

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尽きない労働力


 「よし、これでしばらくの間この果実で生きながらえる事が出来るだろう」


「お、おお……! あの焼き尽くされた荘園が、あっという間に実でいっぱいに……!」


 エリアス他避難民たちは、目の前に現れた奇跡のような光景に言葉を失う。


 そこには、わずか数秒の間に、ダンの創造主の筆(クリエイター・ツール)によって、果樹園と化した荘園の光景が広がっていたからだ。


 ダンの持ってきた食料は穀物類がメインなので、ビタミン不足が懸念されていた。


 そこでフルーツを与えておけば、ひとまず生き長らえることが出来るだろう。


 創造主の筆(クリエイター・ツール)ではありがたいことに、実を実らせる木を生やせば、おまけと言わんばかりに果実もたわわに付いた状態でニョキニョキと生えてくる。


 緊急用の食料の補充としてかなり有用な存在であった。


 生やしたのはリンゴやラズベリー、柿やザクロなどの寒冷地に強い果樹だ。


 聖都は緯度が高く、冷涼な気候なので寒い地方のフルーツなどが美味しくなりやすい。


「ま、まさかまたたく間に果樹園まで創ってしまうとは……。首領殿は本当に神の一柱ではないのですよな? あまりに奇跡じみているというか……」


「違いますよ。ただ……私にこの力を与えた存在は定かではありませんね。もしかしたら本当に神かもしれません」


 ダンはそう答える。


 実際のところニンフルサグが神を名乗っても、ダンとしては否定する材料がない。


 何せダンをもってしてもその原理を欠片も理解出来ない技術なのだから、そう答えるしかない。


「なんと勿体無い……! 神の果実、地上にもたらした奇跡を、まさにこの目で見られようとは! やはり預言者様こそ、我らが導き手! 神の御使いであらせられる!」


 エリアスたち避難民は、そう感涙に咽び泣く。


 その光景に呆れつつ、ダンはりんごの樹の実を一つもいで齧ってみる。


「うむ、美味い。なかなかの糖度だな。皆も分けて食べるといい。食べ過ぎは良くないが、一人一日一つくらいなら身体にもいいしな」


 ダンがそう言うと、避難民たちが歓声を上げながら、こぞって果樹に群がって実をもいでいく。


 荘園は1ヘクタールほどもあり、薪を採るために生やしたクヌギの切り株が残っていても、まだ果樹を生やす空きスペースは十分に残っている。


 びっしりと実の成った果樹が並んでいるので、かなりの人数の胃袋を満たすことが出来た。


「食料はこれでしばらくはいいとして……あとは防衛のことも考えねばならんな」


「いくつかの城門は焼け落ちて、入ろうと思えば野盗なども入りたい放題となっております。何卒、預言者様の奇跡でお助け頂けませんでしょうか?」


 そう頭を下げるエリアスに、ダンも頭を悩ませる。


 ダンとて全知全能の神などではない。やれることには限界がある。


 城門を修復して閉じるくらいならどうとでも出来るが、ここを防衛するとなるとダンが常駐する必要が出てくる。


 そんなことは流石に出来ないので、どうにか方法はないかと頭を悩ませていた、その時――


『――船長(キャプテン)、本機から提案があります』


『む、なんだ?』


 突如として体内通信を通じて、ノアから情報が送られてくる。


『先の山の館(エクル)より手に入れた、翼獅子(アンズー)のコントロール・コアの解析が完了しています。本機の内部で同様のものの生産が可能となりました』


『ほう……それは朗報だが、それが今一体何の関係があるんだ?』


『多少性能が落ちますが……本機の工作設備で小型のコントロール・コアの量産が可能です。それを用いて、半永久的に動作する魔導機兵(ゴーレム)を製作することを進言します』


『ゴーレムとはまた随分とファンタジーな響きだな。まさかそれで防衛を担えということか?』


 ダンはノアの提案に、奇妙な顔をしながら聞き返す。


『肯定します。聖教会本部のコントロールセンターから、辺り一帯に強力な電波が発せられています。よって、それを司令塔として複数の無人機を同時に展開することが可能です』


『なるほど……生産に時間はかかるのか? 素材は何が必要なんだ?』


『崩れた瓦礫と土に、ナノマシンを混合して連結させるだけで素体(ボディ)として使用できます。兵器としての強度は落ちますが、コアが無事な限りは何度でも修復出来ますので、防衛戦力としての評価と補充のしやすさから最も現状に適していると判断しました』


 その返答に、ダンも納得する。


 そう言えば幽冥の主(アスラ・ロード)たちの使っていた骨兵(スケルトン)や人面蛸のようなモンスターたちも、倒したら必ずコントロールコアが採取出来たことから、あれらも恐らく遺体を素に造ったゴーレムの一種なのだろう。


 流石にあそこまで悪趣味なことをするつもりはないが、その力を利用出来るようになったのは幸運と言えた。


『なるほど、瓦礫の処理と防衛問題が同時に片付く訳だな。よし分かった、すぐにコアの増産に取り掛かってくれ』


 ダンの命令に、ノアは通信で『了解しました』と返答した。


「どうかしましたか? 何やら目を瞑って、考え込んでいたご様子でしたが……」


 突然黙って考え込むダンに、エリアスが不思議そうに尋ねる。


「いや……少しいい案を思い付いてな。ちょうどいい、後で皆の前でお披露目しよう」


 ダンはそう答えると、甘い果実を楽しむ避難民たちで賑わう荘園から外に出た。



 * * *



 ダンが船に戻って工作室を確認すると、そこにはケースに入った、十二面体のゴルフボールほどの赤い石が二十個ほど並んでいた。


 石の内部は透けて見えており、中にはマイクロチップのような複雑な構造物が幾重にも重なっていた。


「これはどういう風に使えばいいんだ?」


『簡易式のコントロール・コアは、素体(ボディ)となる素材の内部に埋め込むことで、ナノマシンを介してその素材に応じたゴーレムが自動的に生成されます』


「なるほど……さながらこれは"ゴーレムの種"といったところか。ではありがたく使わせてもらおう」


 ダンはそう答えると、ケースごとコントロール・コアを持ち出す。


 外では避難民たちが待ち構え、ダンの手元を興味深そうに眺めていた。


「預言者様、その赤い石は一体……?」


「これはゴーレムを創り出す種だ。なに、口で説明するより見たほうが手っ取り早いだろう。そこで見ているといい」


 ダンはそう言うと、集まった避難民たちを掻き分けて、聖都の隅に積み上げていた、石や木材などが積み上がった瓦礫の山の前に立つ。


 後で城壁の外に放り出して埋めてしまうつもりだったが、思わぬ使い道が出来た。


 ダンはそれに適当にコントロール・コアをばら撒いたあと、しばらく様子をうかがう。


 ――すると、ガラガラと瓦礫がひとりでに一箇所に固まりはじめ、不安定ながらも人型を形成してゆっくり起き上がる。


 やがて、それがいくつにも増え、焼けた木材や石を組み合わせた、歪なゴーレム兵が完成しては瓦礫の中から起き上がっていく。


 やがてそれはダンの前に整列し、ビシッと敬礼するようなポーズをとった。


「うむ、ご苦労。まさかただの焼け残った瓦礫が防衛戦力に化けるとは。何でも取っておくものだな」


「こっ、これは……! またしても預言者様の奇跡でございますか!?」


「ああ、これはゴーレムと言ってな、兵士や労働者としても使える有用な即戦力だ。身体の中心のコアを砕かれない限り、剣や魔法でも倒れないし、かなり役に立つと思うぞ」


 ダンはそう言うと、ゴーレムに近付いて指示を出す。


「よし、出力試験だ。試しにここの岩壁を殴ってみろ」


「…………」


 そう指示をするや否や、ゴーレムはダンが指し示したほとんど崩れかけた瓦礫の岩壁に近付くと、無言でその拳を振り上げる。


 そして殴るや否や――自身の拳も含めて岩壁ごと勢いよく粉砕する。


「うおおっ!」


 その威力に避難民たちから歓声が上がる。


 ゴーレムは、崩れた岩壁の瓦礫から自身の拳を再構成したあと、何事もなかったように復活した。


「うむ、なかなかの威力だな。人間相手には十分過ぎる。これからこのゴーレムたちにこの聖都を護らせる。彼らは痛みや疲れを感じることはないし、一日中動き続ける事が出来る。食事も必要ないしある意味理想の兵士と言えるかも知れないな」


「おお……なんと素晴らしい! さすがは預言者様です!」


「食事も給金も要らぬ、疲れ知らずの兵士とは……我が国の軍務大臣が見れば喉から手が出るほど欲しがるじゃろうな。そんな恐ろしいものがポンと出てくる辺り、相変わらず首領殿は凄まじいというかなんというか……」


 ランドルフはその光景を見て、戦慄したように言う。


「はっはっは! とは言っても、このゴーレムたちは聖都の防衛限定です。あの聖教会から出た魔力を素に動いてますので、他国に攻め込むには使えませんよ」


 ダンは笑いながら答える。


 実際のところ、聖教会のコントロールタワーの影響範囲は西大陸をすべて覆いつくすほどに広大なので、大陸全土を征服するくらいのことは容易く成し遂げてしまうだろうことは分かっていた。

 

 しかしそんなことを言っても周りに恐怖を与えるだけなので、あえてその力を小さく申告した。


「……それでもこれは凄まじいものです。重要拠点の防衛だけでも任せられるなら、大陸の勢力図が塗り替わりますよ」


 フリックも流石にこれには驚いたのか、顔を引き攣らせながら言う。


「流石にこれは軍事に関わる技術なので容易く譲渡は出来ませんが……それ以外の警護や労働力としてなら、段階的に売買や譲渡してもよいと考えています。さっき見た通り、力もあって肉体労働にも強いですからゴーレムたちは」


「おお、それは重畳! 恥ずべきことですが、我が国の経済は奴隷と植民地からの搾取によってどうにか成り立っておるのです。彼ら全てを突然解放すると、国中の大混乱は必至。奴隷の早期解放にはどうしても代替が必要だったのです」


 ランドルフはそう語る。

 

 実に愚かな話ではあるが、これまで奴隷によって甘い汁を啜っていた連中が、いきなりそれらを手放せと言っても素直に従う可能性は低い。


 皇帝の命令と言えど反発し、最悪内乱が起きる恐れもあった。


 しかし代替の労働力が確保出来るなら、その混乱も少なくて済む。


 なんとも世知辛い話だが、例え奴隷解放という正しいことを成したとしても、その後の影響も考えねばならないのだ。


 状況をソフトランディングさせるためにも、ゴーレムという第三の選択肢を用意できたのはダンにとっても幸運と言えた。


「ならすぐにでもゴーレムの量産体制に入らなければなりませんね。上手く使えば、帝国や聖都のみならず、世界中の人々の生活が格段に豊かになるでしょう」


「おおお……! 預言者様は、既に世界を見据えておられるのですか! さすがは神々の使徒でございます!」


 エリアスが大仰にダンを褒め讃える。


「私はそんな大層なもんじゃない。ただの漂流者だ。……だが、自分だけ技術を独占して優位に立とうなんてことを考えるつもりもない。全人類の発展の為に、戦争に利用しない技術に関しては随時開示していく用意がある。皆が平等に豊かになれば、わざわざ戦争を起こそうなんて国も徐々に減ってくるだろう」

 

「ふむ、首領殿の野心は、その実この世のどんな為政者より遥かに巨大かも知れませんな。並の王や皇帝では、この世から根本的に戦を無くすなど考えもつかぬことでしょう。無論、我もその野望に協力させて頂きますぞ。つまらん戦など無くすに越したことはありませんからな」


 そう答えるランドルフに、ダンは大きく頷いて『その時はよろしくお願いします』と答えた。


 

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