神殿の道
「《にゃぁぁぁあ! はニャすぅぅ!》」
イアはまとわりつく妹・弟達を引き離そうとする。
神殿には自分たちに行けると思っていたら、少人数でいく事になっていた為に無理についていこうとする年少組、シュキマ、ドゥリ、リィムが自慢のネコ爪でイアの服に掴みかかって抵抗を試みていた。
「《ねーちゃん、いくなぁ~》」、「《いっしょにいかせてぇ》」、「ニャー。ニャァァァ!」
「《ダメぇニャァァァ、おくれるニャ!》」
イアの言葉も虚しくガッツリホールドによって 、引き剥がせずに、遊びだと思ったゾゾロも参加する事態となり外にいるパポンとの合流にも遅れてしまっていた。
「にゃぁぁぁ、つかれたにゃぁぁぁ・……」
一仕事終えたイアは出発した道中でポツリと漏らした。
すると、フィフィに手を繋がれてるゾゾロがソワソワと辺りを気にする。
「どうしたの、ゾーゾーローちゃんッ」
カティアはいつものように顔から首部分を撫でて愛情を表した。
「《みんなでいかないの?》」
ゾゾロは思った事を口にした。
「えっと……《すべて》? だっけ? あと《いく》 《いこう》?」
「《すべて》じゃなくて《まとめて》って意味じゃないの?」
カティアとフィフィは聞きなれない獣人語を道中で習い、単語から覚えている最中だったが、徐々に言葉の意味を聞き取れるようになってきた。
「だいたい合ってんニャ! ゾゾロは『みんなで行く』って言ってんにゃ!」
イアは話を聞いて答えを口にする。
「そうか、みんなで行こうね」
カティアの言葉にゾゾロは反応するが再び辺りを見回した。
「《いないし・……ないよ。ウ――――ッ》」
ボソッとゾゾロは唸る。
「《どうしたニャ、ゾゾロ》」
イアはボソボソと喋るゾゾロに聞き耳をたてていた。「ニャー、ニャー、そうニャ―」と話を聞くとカティアとフィフィは「どうだったの_?」と尋ねる。
「ニャー、わかったニャ―。みんなでって全員って事にゃ。ここにいないので行くとおもってたにゃ」
「そーっかー、そうね、みんなでいきたいのよね」
ゾゾロの顔の毛をゆっくりと撫でまわし何かに不安そうなゾゾロを落ち着かせようとしていた。
「よしよし、いいこ・……」
カティアがゾゾロを落ち着かせている間にイアがゾゾロの前に立った。
「《いいか? よく聞くニャー、 神殿(=タイタロス)に行くのはお礼のため! タイオワに無事と清めにいって、戻れた感謝を示さないといけないのはゾゾロでもわかる事だーよ。神殿は大人数で行く事は禁止されているのは知ってるよね。儀式とかそういうので集まる時以外はダメなんだよ。だからみんなでは行けないの! わかった?》」
イアの話にゾゾロは戸惑いながらも頷いた。
「《それに、すぐに戻れるから、そしたらまた、遊べばいいよ》」
イアの言葉にゾゾロは「ウンッ! ワァンッ!」と元気よく叫んだ。
「《いいこ、それじゃあ…かーちゃんにもらった干し肉をおやつにあげる》」
持っていた袋から干し肉を取り出すとゾゾロは嬉しそうに尻尾を振ってカミカミしだした。
「もう、大丈夫、話は終わった?」
カティアがそう尋ねるとイアは「ニャッとくしたにゃ!」と元気よく答える。
閑話休題――。
暫らく、森林と切り開かれた道を進み、今度は獣道のような場所に入って歩いていく。起伏が強く成っていく道をカティアとフィフィ、パポンとイア、それにゾゾロは楽しい話をしながら時折見える動物や植物に心を奪われ楽しそうにお喋りを続けていた。
――その後ろをジョーとサイリアはゆっくりと見守るように歩いてく。
「あーーーぁ……、つかれたぁ……」
「別に疲れてないでしょ?」
「今日はゆっくりと寝たい気分だった」
「十分寝てるじゃない、屋根がある所で寝られて最高じゃない」
「冒険者としてはそうだな……。暇だと思ってたが、これが世間では『最高の余暇』というやつだろうか?」
「何言ってるのよ。暇すぎでボケはじめたの?」
「サイリアは理解できないが、本当にキツイ環境を潜った先にある何もしない自由ってヤツ、――つまり平和の価値を知るって事だと思う」
「なに? 哲学者になったの?」
「哲学か・………あれって何かいい事言って、どうするんだろうか?」
とめどない、どうでもいい会話を続けながらジョーは後ろをチラリと確認すると――後方にいるパポンの護衛である『ウィルキ』が辺りを警戒している。
ウィルキはパポンと同じ種族であり、チャーガマが選んだ守護役であり、出発前にパポンが御付きの者帰らせようとしたが、何とか色々あってその集団の中から選ばれ、ひとりだけ着いて来る事になった者。
簡単に言えば、ジョー達のような観光ではなく、仕事として守護者として同行している獣人は彼だけで、それも出来るだけ邪魔にならないように控えとして側にいるのだった。
そんなウィルキは短弓を背負い、矢と矢筒を装備し、短刀よし少し長い刃物を腰にさしている。
他の者よりもずいぶんと身体が大きいのは戦士として戦っていたらしく、年齢もサイリアの倍近く、この集団の中で最高齢である。
ジョー達も出発前に挨拶をしたが極めて常識人であり愛想もある。
タヌキの獣顔にゴリゴリのマッチョというのがいささか不均等である感じが否めない。
――ウィルキはジョーの視線を感じ取ったのか愛想よく笑っていた。
イアを先頭にしている一行は幾つかの峠道を越えて森の中の道に小屋を発見する。
その小屋の周りにはいくつもの細長い小舟が立て掛けて置かれていた。
「あそこニャー、もう少しニャ!」
イアが元気よく指をさしてカティアとフィフィに教えていた。
だが、森の中に船が置かれている状況に不思議そうな顔で状況を見極める2人がいる。




