神殿の道 川下り編
「う、うん? なんで森の中に舟があるの?」
首を捻りながらカティアは考える。
「周りは森だよね?」
フィフィの指摘もその通り。
密林といっても過言でない程、木々が茂り、周囲から鳥の泣き声が聴こえていた。
「にゃー? ここは雨ふんにゃ、ダバダバふんにゃ、そうしたら水がたまんニャ、そこの木のとこまでくるにゃ」
つたないがイアの身振り手振りでの説明を真剣に聞くカティアとフィフィ。
「雨が溜まるのね? でも、そんなにふるの? ここも危険になっちゃうの?」
カティアの言葉にパポンはゾゾロをあやしながら追加で情報を補足してくれる。
「大丈夫だよ、雨季っていうこの地方が季節の変わり目に大雨が降る事でそれがたまに、その時にここら辺一体が浸水しちゃう時があるの、大丈夫な時のあるんだけど、すごい時はそうなちゃって、しばらく降っているかんじかな? 何年かに1回の周期で大きいのがきて、そういう時に森が雨に浸かってしまうんだよ」
「うんにゃー、うんにゃー、そうにゃー!」
「そうなんだ、じゃあ、ここはその時の為の小屋ってことね」
「そうそう、舟を修理すための道具とか取り付け器具が色々揃っている保管場所にもなってるの。ここまで水はこないからね」
「へぇー、だから森の中に舟があるんだ」
カティアフィフィも納得の表情を浮かべた。
「……あれ? そうれじゃあ、これから舟に乗るの?」
「そうにゃー! この先に川でいくにゃ!」
「エェ――! ほんとッ!」
カティア達は先を急いだ。
ーーさらに先に進み下り坂を抜けて開けた場所に出ると水が流れる音が大きくなる。
大河というには小さく、小川というには大きい川が流れている。つまり普通の川が目の前に出てきて丸っこい石がゴロゴロと辺りを埋め尽くし、途中で巨岩がいくつか転がっていた。
その側に先ほどの小屋にあった大小様々な舟がいくつか並び、それを整理する獣人が2名で作業をしていた。
イアは早速話しかけ、何やら交渉しているとすぐにカティア達を呼び寄せる。
木製のステージのようになっている場所に駆け寄ると、さっそく自分たちが乗る舟を吟味する。
「なにこれ? なんか思ったよりも軽い感じ」
1つの船体を持ちあげてカティアは思った事を口にした。
たしかに、カティアより少し大きい程度の割に軽々と持ち上がる船は木材で造ってあるとは思えない。
「ソイツは“コルコの木”でつくったにゃ、かるいニャ、かたいニャ」
「確かに、 軽いし、硬い」
船を降ろしてコンコンと叩いて強度を確認する。
「この穴なにかな? 3つあるね」
船の側面に突起のようについている何かを通す木製の穴。
「こいつは、こうやってつけるにゃ!」
イアは近くにある乱雑に置かれた道具箱のなかから突起穴に付属棒と側面につける浮遊物を合体させた。
適当に他の道具箱からモノを物色して舟に投げ込む。
「――こうにゃ、しめるにゃ」
抜けないように浮遊物と棒に縄を巻きつけて固定する。
「そしたら、こうにゃ! これで水におちないニャ!」
誇らしげに見せる彼女にカティアとフィフィは拍手を送る。
「はやーい」 、「すごい手慣れてたね」
「にゃははははッ、ニャーも、うれしいにゃ。それで、こぐのはこいつにゃ!」
でっかいスプーンのようなモノを上に掲げる。
「なにそれ、かわいい」、「おもしろそう」
「こうやるにゃ、こう、こう、こう、こぐにゃ」
実演をかねてイアは動作を繰り返す。
それを見ていたゾゾロが真似をしだした。
ウキウキでその動きを褒めるカティアは色々とイアに質問する。
「あっちの、なんかつながっているヤツは何用なの?」
「あれにゃー? うめーヤツがひとりでやるにゃ……」
「へぇ、じゃあ、長い舟と短い舟どっちがいいの?」
「どっちでもいいにゃ! どっちも川はわたれんにゃ」
イアはそう断言する。
ゾゾロと舟を漕ぐ動作を終えたフィフィが寄ってくる
「初めて舟を漕ぐからドキドキするね」
笑顔のまま素直な感想をいう彼女の瞳は好奇心旺盛なままだ。
「そう、そうなの。ベルンの町じゃ、舟なんて無かったよね」
「川はあるけど・……底は浅かったからね」
「なんにゃ? のったことにゃいにゃ?」
「イアちゃん、こうやって舟に乗る事が初めてのヒトもいるんだよ、 教えればいいじゃない?」
「わかったにゃ! みんなでレンシュゥにゃ!」
――暫くの間、舟の操作を覚える練習時間になった。
***
「準備はいい?」
船場にある残橋の周りでカティアは尋ねた。
「行けんニャー!」
「いけるよ」
「…………」
「師匠、返事!」
「なんだよこれ……」
「出発の儀式です」
「……そんなのいらないだろ?」
「いります! これから川下りですよ」
ウキウキのカティアにジョーは疲れた顔を見せる。
舟に乗るのは4名、メンバーはカティア、イア、サイリア、ジョーと、もう一隻にはゾゾロ、パポン、フィフィ、ウィルキが乗り込む。
全員で乗り込みたかったが、8名が乗り込むほど大きく安定した舟は無く、舟の操縦をする経験者と初心者を混ぜた2チームに分かれ川下りをする事になった。
もちろん、全員の体重を加味した結果でもある――。
久しぶりの投稿、ごめん




