洞窟風呂2
>>洞窟内、男湯サイド
ニコは上半身を裸にすると左腕義手の補助具である腕から背中にかけて巻かれた帯を、右手で外していく。
そして、左手の残った腕に取り付けられた金属拘束具を外し、魔導義手を取ろうとしている。
理由はもちろん風呂に入る為。
そのまま入っても構わないように防腐食対策はしているとはいえ、温泉という錆びる所に入れる道理も無かった。
「《てつだう、てつだうよ》」
すでに裸になった毛玉のように可愛らしいゾゾロが足元に来てニコの魔導義手の取り外しをキラキラした眼でお願いした。
幾日かの旅路ですっかり仲良しになったニコとゾゾロ。
こうやって手伝うのも当たり前になっていった。
「《なら、持ってくのを手伝ってくれるか?》」
ニコの優しい物言いにゾゾロは頷く。
ゾゾロは重量感ある魔導義手の左手部分を掴んで持ち上げるがニコが右手で大半の重りを吊り上げて持って負担的には2対8位の割合労働だが懸命に手伝いカゴの中に入れた。
「《よしよし、ありがとう》」
ニコが笑うと、ゾゾロは尻尾を大きくふった。
なんとも健気な光景だが、その横ではギスギスとした雰囲気でラリー、ミック。グレーが服を脱いでいた。
「おい、近いぞ」
「だまって服を脱げッ」
「ふろ入るなら、余計な事はするなよ」
「男湯では、なにもしねぇーってッ!!」
ギスギスしたまま風呂に入る準備を整える3名
しかし、グレーとミックが不思議なモノを装備していた。
短剣と細長い革帯を持っていたのだ。
「おいおい、そのまま入るつもりか?」
さすがにジョーはその行動を咎めた。
「あぁ、もし問題行動を起こしたら。俺が縛って動けなくする」
ミックはチラリとラリーを見た。
「そして、オレが切る」
グレーは短剣を抜いて“ナニ”とは言わないが、ラリーの中心部分、ヘソから下あたりにある突起物を切るような仕草を見せた。
それを見たラリーは蒼い顔で股間付近をそっと隠す。
「それだったらいいけど、剣が錆びるぞ」
「仕方が無いが、後で磨くしかないだろうな」
グレーは悔しそうに短剣を元に戻した。
鉱山人の血を継いでいる誇りか普段から武具や防具を大切に扱ってきた。
そんな彼が自ら進んで錆させる場所に武器など持ち込む事は無いが、誇りより危機をどうするかと言う選択の結果だ。
ジョーはそれ以上何も言わなかった。
「ほら、早くしろ」
「止めろ、触んじゃねー」
「おとなしく、していろよ」
「オカシナ行動をしたら直ぐにちょん切ってやる」
「や、やめろ~、剣を向けるな!」
騒がしいままミック達は風呂の方に消えていった。
ジョーも裸になって支度を済ませ、立て掛けていた蛇腹刀を棚にあげようとする。
【待て! なんで入れようとする】
柄にある眼がギョロリと動いてスネークは何か言った。
「いや、温泉らしいから入れねーだろ? 公共のフロ場だぞ」
【バカモン、一緒に連れて行けよ】
「いやいや、裸に武器を持ってはいるのって礼儀知らずじゃないか? 一般的に。グレーの件は置いておいて……」
【せっかくの温泉だぞ】
「錆びるかもしれないだろ?」
【錆びん、やわな剣と一緒にするな。それよりも連れていけ】
「連れてどうするんだよ」
【一緒にはいればいいだろう】
「刀と一緒に入るなんて不審がられるだろ?」
【それでもッ!】
「それもじゃないだろ……。中どうなってるかわからないのに」
【それでもッ! ちょっと端のほうでもいいから贅沢は言わない。譲歩しているのだからそっちも素直に受け入れるべきだ】
「いや、あとで桶にお湯張って綺麗にしてやるから」
【だめだ、だめだ、せっかくの温泉の機会を逃してはダメだ】
ジョーはスネークの固い意思を確認すると、ため息を1つ吐いて。
「できなかったら、戻すからな」といって蛇腹刀を裸のまま背負った。
そして、風呂用具、大剣所持、裸という出で立ちでフロ場に入って行った。
>>洞窟内、女湯サイド
「お、おぉぅ…これがフロなのね」
カティアの前に広がるなだらかな勾配の通路は中央にある小さな山に沿って造られていた。
山のような場所からは湯気のあるお湯。つまり温泉が不規則に湧き出て、棚田のように水溜まりならぬ、お湯溜まりが造られ上から下に流れて落ちている。
そして洞窟の中央を看板のような板の壁が男湯と女湯を分けていると思われ。
閉鎖的な空間を想像する洞窟内だが、広い空間と所々に空に抜ける採光が洞窟内に入っているので密閉している場所でもない。
湯気の中に漂う異様な空間にカティアの足は停まった。
「あそこからお湯でるの?」
フィフィは不思議そうな顔をしてお湯が出ている小さな突起物の上を眺めている。
町でも湯屋には入った事があるが、人工的にお湯を沸かして流している場所。普段は町の外にも出る事は稀で、小さいころからそのような生活を続けていた彼女にとって自然に湧き出る温泉を見て、とまどうのは当たり前と言えば当たり前だ。
「にゃー! 入るまえにコッチでながすにゃー!」
イアが濃い湯気の中を手探りでカティアとフィフィを誘った。
そこは流れ出るお湯を溜めるタルのような容器と木彫りのスプーンのような大きなモノがあった。
仕掛けを動かすと洞窟内に流れる川から水を引き込むようになっていて、タルからは随時、源泉かけ流し状態のままだった。
「ニャハハハハッ」
狂ったように笑いながらイアが自分の弟にも妹にもタルのお湯をかけていく。
それに合わせて嬉しそうに遊ぶキィボやドゥリにシュキマ。
そして、それに交ざるカティアとフィフィは汚れ落としとしての一定の遊びを終えて、少し冷静になった。
ビショビショに濡れながらカティアは髪をかきあげる。
「それにしても、あんな所からずっとお湯が出てるのが不思議」
「そうかにゃ? でも、いまんとこキケンないニャ」
イアが朗らかな表情でカティアに答えた。
「キケンってどういう意味?」
「にゃ? キケンにゃ。アレがゴゴゴッ、ズコズコ言ったらにげんにゃ」
イアがそのように擬音で説明する。
と――。
突起物の隆起体から[ゴボォ、ジュ、ZUUUUUぅ―――――――……]という不可解な音が聴こえてきた。
現在、治療中。
ミナサンも健康には気をつけよう。
侮ったら大変なことになる。




