整備
蒼天の屋外で重なるように声がする。
「降ろすぞ~~」
ジョーは辺りに警戒を促すように声をかけた。
今朝の宣言通り馬車の荷下ろしから掃除をして点検をする予定になる。
もちろん総出で作業をする事になった。
“浮遊する板”を軸に大きい荷物を地面に置いて馬車を掃除し、幌を外して整備しやすくする準備をしている。
「わふッ♪ ウォン、ウォン♪」
ゾゾロは歌いながら掃除道具をもって、ニコの馬車の荷下ろしの手伝いをしていた。
――非常に機嫌がいい。
「ほら、ミレイ、これ忘れてる」、「ちゃんとまとめておいて」
アンジー達も馬車も3人が手早く荷物を降ろす。
――非常に手際が良い。
「オラよッ!」、「ラリー、静かに降ろせッ!」、「あん? 降ろせばッいいんだろッ!」、「静かに作業しろッ!」
ラリー、ミック、グレーの3名は目の下にクマがが出来て怒鳴り合っていた。
昨晩は夜中に激しいやり取りがあったのだろう。
ラリーとミック、グレーとの間で不協和音のやり取りがある。
――非常に仲が悪い。
ジョーを始め、事前に用意した敷き布の上に馬車から降ろした荷物が積み上がり、鉄板や幌の骨組みを始め、多くが解体され畳まれていった。
馬車を清浄する為にゴミをとって馬車全体を水拭きし乾かすと、それなりの時間が経っていく。
いつしか、荷物の上にリィム、ドゥリ、シュキマが寝るほどに。
「《ここで寝たらだめにゃ! 悪い子ニャ!》」
イアが荷物の上に寝ている子たちを起こしに回る。
「大丈夫だよ、ほら、かわいい」
イアが怒ている様子なのにカティアとフィフィは仔猫達をかわいがるように撫でていた。
馬車の洗浄が終わるとアントン達、集落の者達に手伝ってもらい集落の共同倉庫に間借りした所に荷物を移してる。
無礼無知に見られると思いつつ、気にしない様子だったので、ご厚意に甘えた一行は予定よりだいぶ早い時間に作業が終わってしまった。
だから、次の作業を考えていなかった。
「師匠、次はなにするの?」
カティアがシュキマを抱きかかえながら尋ねてきた。
(コレと言って予定は無いから、装備の点検? 訓練でもするか?)
あれこれ悩んでいると――。
「みんなで“ユヤ”にいくにゃ~!」
イアが元気に提案をした。
「ユヤって湯屋か? 熱いお湯があって身体を洗う所だぞ?」
ジョーがそう言うとイアは頷く。
「いくにゃ! きのーはいってニャいにゃ、はいれるとき入んニャ!」
「あるのか?」
「にゃ! あっちにゃ」
イアは森の遠くを指さす。
ジョーはお湯を溜めて身体が拭ければいい――程度の考えだったが、そのような設備があるとは考えても見なかった。
家には家事の為の窯はあるがお湯を溜める施設はこの山のような住居で見ていないので他の所にあるのだろう。
(遠くというなら野外にあるのか?)
露天を思い浮かべるジョーは言われるがまま身体を洗いに行く準備をし始めた。
(そういえば、全員(=イア達)、町の湯屋で驚いた様子も無かったから同じような施設でもあるのか?)
***
「にゃんにゃあ~♪」、「ニャン、ニャ♪」、「ナァあ、うにゃ♪」、「にゃん、にゃん」
歌いながらイアを先頭にリィム、ドゥリ、シュキマも歌う。
そして、声色を変えてカティアもフィフィも声を重ねて歌っていた。
そんな様子で歌いながら森林を切り開いたような道を歩いていく集団の先頭は子供たちだった。
「うんッ? アレは何? 石柱ぽいモノがあるんだけど」
カティアは生い茂る木々の間から異様に見えるモノを尋ねた。
「にゃ? あれにゃ! いずみにゃ! あとでおよぐにゃ!」
「泉があるの? あの岩のような柱の所に?」
「そうにゃ! むかしからニャ!」
「遺跡ぽいね」
「にゃ!」
「およぐにゃ!」
「ふにゃー!」
「よしよし、あとで泳ごうねー♪」
緊張感も何もない会話をしながらひたすら道なりに進んでいった。
その後ろで――。
「ジョー、あの子たちで大丈夫なの?」
杖を持ち警戒しながらサイリアが尋ねる。
「大丈夫だろ? 歌は魔物除けになるし、一応、警戒はしてるんだろ?」
探知の魔術をかけているサイリアにジョーは問いかける。
近くに危険な大型の魔獣などは発見されていない事を知っている様子だ。
「まぁ、危険なのは居ないようだけど、毒もっている虫とかいる訳でしょ?」
「そこは諦めよう、運だ」
ジョーがそこまで言うと無言で背中を彼女は殴る。
***
住処となる岩山を少し進んで森の中に洞窟が見えてきた。
確かにイアの指さした方向に洞穴があり、その周りに出店のようなモノが数店見つける。「あそこにゃー!」
元気よく位置を教えるイアは、洞窟の奥を指さす。
確かに洞窟内に水か流れている音がしていた。
しかし、それ以上に子供たちが気にしているのは洞窟前にある屋台の商品であった。
開店前の準備をしているのか売り出しては無かったが作業をしている。
その様子をカティアとフィフィ、それにゾゾロが興味津々に見ていた。
「何やってるのかな?」
「木の実? なんだろ、蒼い実だよね」
「ワァフゥッ!」
「ナイフで切ってるの?」
「どこを食べるんだろ?」
「その前に食べ物なの?」
「アレは“クォクォナイツの実”にゃー! あんなかに甘い汁があんにゃ!」
イアが説明して「飲み物だったの」とフィフィが声をだした。
「にゃー! あの台のうえでキルにゃ。下にニャがれるにゃ! にゃかの実、切るにゃ、まぜんにゃ。うまいにゃぁぁぁ!」
身振り手振りでイアは行程を説明していく。
屋台にはそれっぽい造りの作業台が置かれていた。
「そうなんだぁ……今飲めるかな?」
「はいってからのむニャ! うまいにゃ!」
カティアは風呂上り飲むか風呂前に飲むか迷ったが風呂上がり後を選択した。
「あっちに変なのあったよ」
隣にあった店も気になるフィフィは直ぐに報告を入れてきた。
皿に入った大量の虫、それもお腹周りがプックリと膨らんでいる。
「コイツは“蜜虫”にゃー! あまいニャ!」
「ウまイにゃ!」「にゃぁぁぁ!」
「うにゃ;あ;あ;あ;あ!」
イアの後にリィム、ドゥリ、シュキマが叫ぶ。
顔を引き攣らせて、怪訝に思いながらもカティアは「そうなの……」と考え込んだ。
いままで昆虫食の経験が皆無で不思議そうに思っている様子だ。
「おーーい、いくぞぉ――!」
屋台に居て待っているジョー達が遠くから声をかける。
「いま行きますよ――ぉ! ししょぉー!」
カティアとフィフィは元気よく返事をかえして、イア達をまとめ洞窟風呂に入って行った。
次回予告。
温泉回、以上。 これ以上心躍る単語は無い。




