旅先の朝2
朝食を客人であるジョーが食べ始めた事により、続いて子供たちも食べ始める。
順番かオモテナシの意味合いがあるのだろう。
獣人の文化に接客の詳しいやり方は教えられないが似たような風習はどこかしらにあるとジョーは考えていた。
暫くするとマルマが次の料理を出してきた。
皿に乗った肉厚のステーキのようだがイアがそれを見た瞬間驚いた。
「《にゃ! どうしたニャ!》」
「《ほら、おまえの分だよ。食べなさい》」
と、イアの前、それにジョー、カティア、フィフィ、サイリア、ニコにゾゾロの前“だけ”に置かれた。
「ナニこれ? お肉? 美味しそうだけど」
「独特な脂の匂い、でも、嫌いな匂いじゃない」
「にゃー! コイツはゴンニュダンの肉にゃ! 美味いニャ! うれしいときにたべるにゃ!」
興奮しながらイアはトモダチに伝える。
「お祝いみたいだけどなんだ、何かあったの?」
「にゃ? そうにゃ? 「《かーちゃん、なんでお祝いの肉を焼いたにゃ?》」
イアは振り返って調理場で料理を作り続けている母親に尋ねた。
「《それは、イアが帰ってきたからだよ!》」と嬉しそうに答える。
イアはその言葉を聴いた時に耳をピンと立て、尻尾を揺らしてクネクネと動いた。
「にゃ!にゃはははッ、うれしいにゃー……」
身体を左右に振り嬉しように肉を食べる。
「帰ってきたイワイにゃー!」
イアは言われた理由をカティアとフィフィに告げた。
「じゃあ、わたしたちも食べていいの?」
「おキャクだからいいにゃ! もてにゃすニャ!」
「そっか、じゃあ、いただきます!」
そう言われ、カティアとフィフィは肉を手づかみで摘まんだ。
味を確かめるようにモグモグと食べるゴクリと飲み込む。
「以外に肉汁が多くて美味しい」、「しつこいようでしつこくない。脂が違うのよね」
「味付け、塩だけだよ。でも、それで十分」、「朝からキツイかなと思ったけどイケるね」
味の評論をしながら次に行こうとするとカティアは何かに気が付く。
イアの側で食べているリィムやキィボ、ドゥリ、シュキマが皿の方を覗いていた。
カティアは一枚肉を摘まみ、空中に持っていく、左右に振るとそれに合わせてイアの幼い家族達が一斉に動く。
右に左に身体が動き、その肉を狙っていた。
まだ、皿に肉はあった。カティアは開いている左手で手招きをし「チュチュチュチュ、来なさい、リィムちゃん、ドゥリちゃん」と口を鳴らして呼んでみた。
呼ばれた2名は葛藤する。
奇しくも今朝すぐに怖い思いをした仲でわだかまりは残っている。
しかし、その肉の美味さは知っていた。
食べたい――しかし、警戒もしなければ。
フワリと匂った肉の匂いにふらりと動いたのはドゥリだった。
それにつられてリィムも動く。
食卓を回ってカティアの近くに腰を据えた。
「《ダメだよ、リィム、ドゥリ。お客さんのオイワイだよ》」
アントンが注意するがカティアは「大丈夫です、お父さん」とすました顔で遮った。
ちなみに獣人語は離せないので何となくで対応している。
カティアは皿をもって振り返っり肉をもって目の前で左右に動かしていく。
目線、顔の動き、それが揃い同調してリィムとドゥリは首ったけになっていた。
「今朝は、ごめんねぇ~♪」
機嫌よくいい声でカティアはドゥリの前に肉を持っていくと、そのまま手渡しで食べた。
そしてペロペロと指先を舐めはじめた。
「フフフッふーふー、くすぐったい」
興奮気味にカティアは感情を押える。
今朝の失敗をしないように耐えながら喜んでいた。
次にリィムに肉を持っていくと「にゃ!にゃ!」と言いながら吸うように口の中に消えていった。
「これで、許してくれる?」
カティアは標準語で尋ねた。
幼い子は獣人語でない為に伝わってない可能性があったが「ニャー!「ニャー!」とふたりが返事をした。
仲直りの間にイアの太もも付近にシュキマが腕を伸ばして「プニャー! フシャー!」と鳴きながらイアを見上げた。
もちろん、理由はわかっている。
イアがもらった肉だ。
「《ダメにゃ、ねーちゃんのニャ!》」
言い聞かせるようにイアは言うが幼いシュキマは「くれー、くれぇ」と言うように鳴く。
それをしてきたシュキマに仕方なしにイアは折れて「《1つだけだよ》」とお肉を分けて与えた。
しかし、数枚取られた。
お肉を貰えて美味そうに食べるシュキマ。
そして、物欲しそうに見つめるキィボをイアは見るが皿の肉は残り少ない。
自分も美味しい肉を食べたいイアは苦悩する。
「ほら、これでも食べろ」
ジョーが残っていた肉の皿を置いた。
「そうね、残ってるから食べていいよ」
サイリアも地面置きの食卓の上に皿を置く。
「十分に堪能したから、あとは食べなさい」
ニコも同意して置いた。
アントンは色々と言っていたが、結局、残ったお肉はイアと弟と妹達で分ける事になった。
ゾゾロとフィフィも分は食べてしまって気まずそうにしていたし、カティアは貰ったお肉を使ってタダで仲直りをしたりと色々あったが朝食は終わりにむかっていった。
最後にお茶を啜りながらカティアはジョーに尋ねた。
「師匠、今日は何をするんですか?」
「あぁ? とりあえず、馬車の片付けだな」
ジョーはそう返事をした。




