旅先の朝1
カティアは呼ばれていた微睡みから覚醒しはじめ薄っすらと目を開ける。
胸に重みがかかり、何かに呼ばれた――。
顔に重み、柔らかさ、衝撃が交互に重なりさらに目を開けていく。
薄暗い部屋に光源となるドアからの採光と、うっすらと光る天井のランプの光源が近くにいる影の輪郭を朧気ながら瞳に映し始めていた。
「にゃー、ニャー」と可愛く甲高く鳴く声に導かれる彼女。
昨夜はイアとフィフィと共にはじめて休む岩窟の部屋のなかではしゃいで喋りながらいつの間にか寝てしまった事をなんと無しに思い返し、次第に意識を取り戻しイアの家にいると思い出していた。
意識がハッキリし始め視界も徐々に開いていく、するとそこにはカティアの顔を交互に叩くリィム、ドゥリの姿があった。
「《おきたにゃー》」
「《『メシ』にゃー、たべんニャー》」
「《メシーイにゃ! にゃんニャー》」
可愛く騒ぐイアの弟に妹の姿を見て――カティアが瞬時にとった行動が――ガッシリ両腕で巻き込んでふたりを抱きかかえた。
「とったぁぁぁぁあああああああああああ!」
喜びの声をあげるカティアと対照的にリィムとドゥリは――。
「にゃんにゃぁぁぁぁぁぁァァァッ」
「《たべられちゃうにゃぁぁ》」
恐怖に声を枯らして叫んでいた。
岩窟のような部屋に奇声が響き、カティアは気にせずにふたりを愛でカワイガリと言う名の愛情表現を重ね、その声に驚いてフィフィが起き上がるという経緯を過ぎて。最後にリィムとドゥリの反撃があり。
「いたーーーい」と――部屋中に響いた。
***――イアの家、広間から~
ジョーの仲間は昨日泊まったカティアとフィフィ、ゾゾロにニコとジョーの5人に治療の為に呼びに行ったサイリアを合わせた6人が朝食前に広間に集まって朝食を待つ。他にいたアンジー達や半地下に泊まったミックは違う御宅で朝食をごちそうになる手筈をとっている。
だからこの場にはジョー達6名とイアの家族のアントン、マルマ、子供たちの『キィボ』、『リィム』、『ドゥリ』、『シュキマ』の7名を合わせた13名しかいない。
「ほら、動かないで」
サイリアは朝食前に顔に傷を負ったカティアを回復魔術で治癒していく。
耳元と頬についた傷が徐々に癒え。
「サイリア師匠、ありがとうございます」とお礼をいうと向かいに座るイア――の後ろに隠れたリィムとドゥリの方を見た。
毛を逆立てて警戒モードのまま「シャー、シャー」と警戒音が聴こえてきた。
「嫌われたな」
ジョーが朝食前に出されたお茶を飲み終えて、ボソッと呟いた。
「うぅぅ……、そんなつもりは無かったのに」
カティアもそんなはずでは無かったと後悔の言葉を口にした。
しかし、直ぐに仲直り出来るはずも無く。
カティアとふたりの距離は食卓をはるかに越え遠くにいるように感じる。
そのうちにカティアの治療が終わり、薄っすらと痕が残った程度で血筋は消えていた。
アントンとマルマが昨日宴会を行った場所と同じく床に座り、ザイブを囲って朝食が入った皿が並べ始める。
「さア、さア、たべてクださーイ」
アントンが笑顔で食事を進めるが――ジョーはどう食べていいか分からなかった。
唯一、ニコが「タタンコスかな?」と料理名を口にしたくらいだ。
木皿に詰まれた薄いパンのような黄色く焼かれた何かが大量に、そして肉を切って炒めた何か、野菜を炒めた何か、香辛料ぽい何かを和えた何か。それらが並べられ困惑する。
それに掬うようなスプーン状の食器があり、サラダっぽい何かがあったりと――それでどうする? という食べ方の疑問があった。
「どうしたにゃ?」
手をつけようとしないジョー達にイアは声をかけた。
「これって、どう食べるの?」とカティアとフィフィは素直にきいた。
「にゃ? 知らにゃーのか?」
「うん!」
「おしえんニャ―! こうにゃ!」
イアは白っぽい薄パンを一枚とって床に置かれた食卓台の開いている所に置く。
「――このうえに、こうにゃ!」
適当な皿から肉の炒めたモノや、野菜を掬ってパンの上に置く。
「――これから、入れんにゃ! あまいにゃ!、 からいにゃ! ぷっくらにゃ!」
香辛料ぽい皿から適当にパンと肉と野菜の上に撒くと薄焼きパンをを2つに折って口に入れる。
「なるほどね、そうやって食べるんだ」、「サンドイッチぽい料理だね」
イアの動きを見たカティアとフィフィは同じようにパンを食卓台に置いて肉や野菜の炒めたモノを適当に入れていく。
そのままイアの真似をして食べた。
「これ、美味しい!」、「ピリッとくるよね」
目を見開きカティアとフィフィは感想を言い合う。
そのまま貪るように一気に口に入れていく。
ジョーも自分で作って食べ始める。
ニコはゾゾロの作る分を見ていた。
「《それは、ちょっと入れ過ぎじゃないか?》」とお肉の具材だけを入れるゾゾロに口添えをするが彼は首を振って「《これで、いいの!》」と返事をすると大きな口を開けて一気に詰め込んでモチャモチャと食べ砕いていった。
「面白い味ねぇ」
サイリアも自分でつくって食べながら感心しているようだ。
「これって何の生地なのかな?」
薄焼きに伸ばされた円形のパンを見てサイリアは食材が気になる。
「それは、クォーンの実にゃ!」
イアが食べながら答えた。
「クォーンって昨日食べたヤツ?」
「あの、黄色いやつでしょ?」
カティアとフィフィが反応する。
「そうにゃ、ソレをかわかすにゃ、くだくにゃ、粉になるにゃ!」
「そうか、パンと同じなんだ。発酵してないから膨らんでないけど、小麦と同じ粉なのね」
パン屋の娘のフィフィは正解にたどり着く。
「へぇ、そうなんだ」と談笑を始めながらカティアもフィフィもイアもサイリアも朝の食事を楽しみだした。
「サあ、コレもどうぞ」
マルマがスープの入った容器と食器をそれぞれの場所に手渡しで配り始めた。
ジョーは会釈しながら受け取ると「そう言えば、おじいさん達を見かけませんね」とそれとなくアントンに尋ねた。
もちろん、オルオンとサフの事だ。
「あァ、父もはハも遅イよ。先にたべテいいノ、後で食べるヨ」
アントンはそう言って笑いながら答えた。




