紹介
黒地に白ブチが混じっているのか毛並みは少し特徴的で一番の印象が目元がアイマスクのように黒く覆われていた事だ。
丸っこく金色に近い光る眼はキョロキョロと動かしながらジョー達数名を見ていくと顔を左右に動かしながら「にゃ~♪」とキレイに鳴くと近くにいたミックの足元にきて靴と脛あてをパンパンと叩いた。
ミックは動じなかったが「どうしたんだ」と言葉を発するがその頃には隣にいたグレーの方におもむき身体によじ登った。そのまま慌てた様子のグレーだったが長い髭にぶら下がるとアンジーとラビスがその子を捕まえてグレーから離そうとする。
「《にゃ! 止めるニャ“シューちゃん”》」
あまりに無礼な行動にイアがそう叫ぶとラビスとアンジーに持たれたままの子はイアの方を見て「にゃ~」と鳴いた。
「悪戯好きだね」
「元気ね、男の子だからかな」
アンジーとラビスは興味深くその子を眺めると手と尻尾をフリフリさせていた。
悪びれる様子もなく目新しいジョー達の顔をキョロキョロと確認していく。
イアはアンジーとラビスからその子を受け取ると抱きかかえ皆が見える方向に向けた。
「《ちゃんとアイサツするニャ!》」
母親のように言うイアに「《チュキィにゃ、チュッキィにゃ~》」と身体を広げ何かを言う小さな獣人の男の子。
「この子は『シュキマ』っていうニャ。小さいから言えないニャ。みんにゃから“シューちゃん”てよんでるにゃ」
イアが代わりに紹介をしてくれた。
これでイアの妹と弟は『キィボ』、『リィム』、『ドゥリ』、『シュキマ』と言う名前だとわかった。
紹介が終わるとシュキマはバタバタと暴れて地面に降ろすように動作を続けた。
シュキマは地面に足をつけると異様な視線を感じる。
カティアがこっちに来るように念を送っていた。
「さぁ、きなさい、こっちに」
両膝をついて手を広げているが異様な雰囲気に近寄りがたい。
シュキマも警戒してマジマジと見たまま固まった。
「カティアちゃん、たぶん怖がっているんだとおもうよ」
フィフィがこっそり耳打ちで相手の情報を伝える。
「仕方ない、対タイオワ必殺吸印『コッチニオイデェ』を発動するよ」
カティアは両手を前に突き出すと手で大きな輪っかを造った――15センチ位の円を真剣な表情でシュキマの前に突き出した。
カティアの異様な印にシュキマも警戒していたが、何故がフラッと身体を動かすと徐々に加速してその円の中に顔を突っ込む。
それは彼らの本能のような習性を利用する印、ちなみに成功率は50%程の印。(※ゾゾロ成功、プミプミ失敗)
「ほら! やっぱり顔を入れてくれた!」
そうなったらカティアは慈愛の掌をもって優しく包み込むように撫でる。
そうなったら服の上からでも泡を包むようにやさしく触っていく。
シュキマは目を細め安らいだ表情を見せると[ゴロゴロッ]と喉が鳴った。
「カティアちゃん、わたしも触りたい」
フィフィはゆっくりと人差し指でアゴ付近を優しく撫でる。
「そうだ、わたしの名前を言って無かったわね。わたしはカティア、あなたの“母親”よ」
共通語でそんな嘘を堂々とついたカティアだが、シュキマに伝わる筈もなく「にゃ~♪」と元気な返事が聴こえるだけだった。
あくまでも心意気として母親の母性をもっているという事だろう。
そんな様子をジョーは(なんだ、こいつ……)と訝しんで怪しむような瞳で見続ける。
紹介が終わるとアントンとマルマが来て家の中に入れてくれた。
***
「さぁ、ドうゾ、ドーぞ」
アントンは暗い部屋を明るくする光源を手にとって家の中に迎え入れた。
暗かった部屋は光源の反射で明るく灯った。
部屋はドーム型をくり抜いた造りになっていて壁際に食器棚や生活雑貨が置かれていた。
入り口付近には料理かまどや料理器具か吊るされ真ん中に独特な柄の敷物があった。
その部屋の奥の方から揺れる影が見えてスグにヨタヨタと歩く老いた獣人が現れた。
ひとりは男性の獣人、白髪の毛並みが多いネコ型の獣人、そしてもう一人は女性の獣人、老いてシワが目立つが男性を支えるように歩いていた。
「《じっちゃん、ばっちゃん!》」
イアが元気よく駆け寄り抱き着く。
イアを優しく抱いて何かを言っていた。
しばらく喋っているとこっちに気が付いた老いた獣人がジョー達に方に出迎えてくれた。
「よく来てくださっタ。何にもないガ、ゆっくりとしていきなぁさイ」
そのように挨拶をするとアントンとマルマに指示をだしてお茶の準備をされていた。
――閑話休題。
「《これにゃ! これにすわんにゃ!》」
キィボ、リィム、ドゥリは部屋の奥から来客用のイス【ザイブ】を持ってきた。
【ザイブ】とは――木の蔓や木材を薄く細く加工して編み上げたイスの事。形状は円形で厚みがあり中央が少し凹んでいる。特徴として軽い。
「もってきた」
しかし、ジョー達全員分座る量は無かったのでクアンが近所をまわり多くのザイブを運んできた。
マルマは台所で鍋でお湯を沸かし始め、アントンはもてなしの準備に入るように動く。
その間にジョーは荷物や装備を置いてイアの家でくつろぐ準備を始めようとしていた。




