暗闇に光る瞳
「 にゃ~♪ にゃにゃ~ん♪」
イアは仲間に囲まれ、話を続け、帰還した事を報告して回り――それが全てひと段落ついた。
だから、彼女は上機嫌だ、鼻歌ついでに軽やかな足取りで自分の実家に進んでいく。
その理由は友人、顔なじみ、知り合いから帰郷の祝福されたから。
久しぶりの故郷、懐かしい匂いと感覚。不安からの払しょくでイアはさらに舞い上がった。
「こっちにゃ! ここにゃーッ!」」
ターンをしたりステップを踏んだりしながら元気に手招きをして2階にある廊下の崖の側面にある扉の前で停まった。
指し示す場所は開いた空間の岩肌の一部、確かに三角形のような入り口があって、切り取り窓のように加工された開いた穴が壁にいくつかある。
「ここなの?」
カティアは興味深そうに眺める。
そして壁にそって板の廊下を左右に見ると似たような造りの入り口がいくつもあった。
「そうにゃ! いくにゃー!」
「まだ、みんなついてないよ」
先行しているカティアやフィフィ、それに住人のイアやクアンは先に付いているがジョー達はゆっくりと後を付いてきているので遅れていた。
「じっちゃん達いるからニャンてことにゃいよ」
クアンはイアに教えてあげた。
「じっちゃんいるにゃ! それだったらいくにゃー!」
イアは慣れ親しんだ扉を元気よく無造作に開いた。
「《帰ったニャー! みんないるかにゃ!?》」
元気よく挨拶するが、部屋はほとんど闇に覆われ、天井から差し込む光が2筋見えるだけだった。
その光が暗闇の部屋をほんのり明るくしている。
揺らめくような光の奥から音が聴こえてきた。
「《ねーちゃんのこえにゃ!》」、「《かえったにゃ?》」、「《ほんとかにゃ?》」、「《うそにゃ!?》」
暗闇の中に光る眼がひょっと2つ出てきたと思ったら、上に2つ増え、下に2つ、さらに2つ光るモノが増えてきた。
暗闇に8つの球体がイアの方に目を向けている。
「《ねーちゃんのにおいにゃ!》」、「《かーちゃんの言ってたとおりにゃ!》」、「《かえってきたニャ!》」、「《まだわかんにゃいにゃ!》」
ニャーニャーうるさく騒いでいると暗闇の中の光はイアの方に駆け寄ってきた。
闇の中で動く物体はそのままイアを襲う。
イアは正面から受け止めるが、胸や脚に飛びついてそのまま後ろに倒れる。
「《ニャー! ねーちゃんにゃ!》」、「《そーニャ!》」
上に乗って姿を見せたのは幼い獣人の子供、それも大きさも不揃いだが、イアの身体にまとわりついている。
「にゃああぁぁぁぁぁ…………」
イアは弱々しい声を上げるが、身体からグイグイと来る圧力を感じ、嬉しそうに身体を震わせてグリグリと振動がくる感じが懐かしとイアは感じる。
「《イタイにゃ》」と言いながら胸に抱き着いている子をゆっくりと撫でた。撫でられた子はそれに気がついて、手にグリグリと頭を擦り付ける、そして胸にも顔を埋めた。
「《ねーちゃん、こっちにゃ!》」
他の子もイアの顔元にきて首を撫でたり、ペロペロと顔を舐めはじめる。
「にゃあああぁぁぁ……《くすぐったいニャ、やめる》ニャァァァ……」
イアは何とも言えない表情でその行為を受け入れた。
親愛に近い何かの行動なのだろう。
カティアもフィフィも事の経緯を見守る。
その事にやっと気が付いた獣人の子供たちはビックリした表情で見慣れない彼女達を見ると「《だれにゃ!》」、「《ヒトにゃ!》」、「《たべられちゃうにゃ》」などと騒いだ。
「シャー!」と警戒音をたててカティアとフィフィを威嚇するイアの妹弟たち。
先ほどの可愛い行動から一気に様変わりした。
フィフィは驚いた様子だが、カティアは両膝を地面につけて目線を下げ、両腕を広げて「さぁ、わたしにも来なさい」と自信満々に体制を整えた。
イアにやっていた事を要求しているようだ。
当然、警戒するイアの妹弟は飛び込まなかった。
「《だいじょうぶにゃ……、助けてくれたナカマにゃ、オンがあるにゃ》」
イアは妹弟をどかしながら、そのように告げて立ち上がる。
警戒は無くなったが訝しむ気持ちは無くならない、キラキラ――いや、ギラギラした瞳で待っているカティアの気圧されイアの足元に獣人の子達は隠れてしまった。
にらみ合っているとその後でジョー達が到着する。
***
「《にゃ!? アイサツするにゃ!》」
イアは改めてジョーに向かい合い、イアの妹弟を紹介していく。
初めに言葉を発したのはイアの次に身体の大きい子だった。
すらっとした体型、可愛い獣顔、愛くるしい瞳にカタチの良い耳、黒っぽい毛むくじゃらの体毛の男の子の獣人。
「ニャ……『キィボ』にゃー……」
周りにいる大人に警戒しながら小さい声で名前を告げた。
「『リム』にゃ! にゃぁぁ……」
次に名前を言ったのはイアにもその母マルマにも似た顔の女の子の獣人だった。
妹だと言えば容姿はよく似ているのだが毛質はイアと違い赤縞模様、小さく可愛い子。
「『ドゥリ』…にゃ! ヨッチャにゃ!」
キィボに似たスラッとした体型、人懐っこい笑顔とクルリとした瞳が特徴の茶縞模様の獣人の男の子が元気よく返事をする。
そして、最後にこの中で一番小柄で先ほどからジョー達の方を何度も身体から顔を確認している獣人の男の子が前に出てきた。




