イアの仲間
ジョー達はイアの住処の近くまで到着する。
長い旅路でないものの何事もなく来れたという安心感により気の張り方も和らいだ。
先導していたアントンが騎乗していた乗りものを降りて大家の厩舎に居る者達に手を振っている。
彼らは毛むくじゃらの何かの動物を管理している者たちなのだろう。
都市まで案内してくれたンゴが騎乗していた動物に似ているという事から、この地域では一般的な移動手段として使われている。
アントンの合図でスグに自分達の馬車を止めて下車する準備にはいった。
「《ほら、おいで》」
ニコは馬車にむかって両手を広げた。
スグにゾゾロが飛び出してくる。
義手と本物の手で受け止めるとゆっくりと地上に下ろした。
「《おっきい》」
ゾゾロが見上げた先にはイアの住処を見ていた。
「《おっきいな》」
猟犬兼相棒のナワールを降ろしたニコはゾゾロの頭をそっと手を置いた。
ナワールはゾゾロの足元を回って遊ぶ。
「《ヤマだよね》」
ゾゾロはキラキラした瞳で尋ねた。
「《山じゃないな……たぶん“側火山”の一種じゃないか?》」
ニコは己の持つ知識と見識から答えを導き出した。
『側火山』――巨大な山のマグマ噴火する時に火口以外で遠方でも地面から漏れ出てマグマが山のように吹きだす現象の事。溶岩ドームなど奇形火山と呼ばれる。
「《カジャンって?》」
ゾゾロにそう言われニコは少し考える。
「《そうだなぁ~、山がゴゴゴッってふるえて、ドッカーンて爆発してバンバン出来ることだよ》」
すこしコミカルな動きでニコは擬音を用いて曖昧に火山の説明をした。
正式に原理を説明しても全ての理解は不可能と思ったからだ。
「どっかーん、ゴゴゴッ、バンバンッ」
ニコの真似をした後、ゾゾロはケタケタと愉快そうに笑った。
「《さて、馬車を停めるからイアねいちゃんの所にいこうね》」
ニコがそう言うとゾゾロは「《わかった》」と頷いてナワールを連れてイアのほうに駆けて行った。
***
「ここに住んでるの?」
フィフィが感嘆の声を漏らした。
「えぇぇ~、全部が家なの?」
カティアも小山だが丸ごとだとは思わなかったようだ。
「にゃー! こっちにゃ!」
イアが腕を振って元気よく合図を出す。
すると、カティアとフィフィの足元に衝撃が来た。
ゾゾロが跳ねて遊んでいた。
「ゾゾロちゃん、ほらこっちこっち」
カティアは手でぶにッと顔を撫でて甘えてくるゾゾロを向い入れた。
「ナワールも行くよ」
元気よく尻尾を振るナワールはフィフィが押える。
イアはキラキラした目で見知った岩の切れ目の入り口に向った。
「《にゃー! ひさしぶりニャー!》」
元気な声で顔見知りの門番の獣人男性に挨拶をした。
「イア、本当に帰ったのか!」と驚かれたが元気よく挨拶を済ませるとそのまま奥に進んでいく。
入り口は縦横4メートルほどの穴が開いていて程よく削らてている。
人工的に削ったような穴だが入って数メートル進むと岩を支える木柱が何本も設置されていて、その先が急に開けてきた。
岩の割れ目が天の上まで通り空が見え、薄暗い中に光の柱が何本も降りて辺りを照らしている。
広場のように広がった場所に木材で足場が組まれ獣人(ネコ型)が頻繁に行き交っているのが見える。
イアはキョロキョロとあたりを見回し、ゆっくりと大きな息を吸って吐いた。
「にゃー………」
感慨深く故郷の匂いを嗅いでいると――。
スグに「イアだ!」と幾人の獣人が気が付いた。
ソコからは早かった。
周りに気が付かれると何人かの女性ネコ獣人が駆け寄ってくる。
「《イア、無事だったにゃ》」、「《しんにゃいした》」、「《帰ってくるって聞いてたにゃ?》」――と各々が様々な事を言ってイアに抱き着いて来る。
イアは各人と顔や首元でスリスリすると「《帰ってきたニャ~》」と嬉しそうに返事をした。
暫らく歓待をされていると置いてけぼりにされたイアとフィフィとゾゾロに気が付いた。
「《そっちのにゃ?》」、「《ヒト族かにゃ?》」
部外者である彼女らを警戒するように幾人もが興味深く見つめる。
驚き顔のカティアにフィフィだが向こうも同様のようだ。
同じように警戒している両者は不思議な緊張感に包まれた。
「《ニャ……助けてくれた仲間だにゃ! 恩人ニャ!》」
イアがそう言うと緊張感は解けた。実に簡単なモノである。
[にゃー、にゃー]と泣き声が響く中周りを囲まれてカティアとフィフィにもネコ獣人が周囲に集まっていく頃に――2階に繋がる足場の上から黒い毛むくじゃらの物体が何かに気が付いて移動する。
黒い物体は高速で動き、階段も使わずにそのまま下の柱にしがみついて爪を引っ搔いて下に降りる、そのまま途中で手を離し床にゴロゴロと転がって起き上がった。
それに周囲も気がつくが黒い毛玉の獣人は目もくれず混みあっている周りをかき分けてイアに近寄った。
「《イアッ! 大事にゃいか!》」
「ニャー! 《クアンひさしぶりにゃー》」
イアは知古の仲であるように顔を合わせる。
黒い大きな毛玉のネコ、『クアン』はそのままイアに抱き着いた。
「《無事で……よかった……》」
キュッと抱きしめるとしばらくそのままだった。
「《にゃー……くるしいにゃ……》」
イアはモフモフの毛の間から声を出す。
「《ごめん……》」
クアンは離れると、すごく困った顔をしながら顔を背けた。
「《ここに来るまでに国境でドアンおじさんにあったにゃ》」
イアがそのように報告するとクアンは「《父親にあったのか》」と、しどろもどろになりながら勢いと感情に任せた行動を後悔しているようだ。
そんな二名の様子をイアとフィフィはニヤニヤした顔をで尋ねた。
「イアちゃん、そちらの方は?」とクアンの事を知りたいようだ。
「にゃ!『クアン』っていうにゃ、あそこであったドアンのむすこにゃ!」
「どんな仲なの?」
「昔からの知り合いニャ! 遊ぶ仲ニャ!」
イアは元気よく返事をして、クアンは恥ずかしそうに「……ヨロシクね」と答えた。
側火山についてはしらべてもらった方が良いかもしれません。
説明の難しい火山です。
wiki推奨。




