観光3
イアは屋台の前に陣取って中で作業をする獣人の動きを説明していた。
「これがパッククォーンにゃ! ニャベに油をいれるにゃ!」
よく熱した大型の鉄鍋に白っぽい何かをいれて溶かしていく。
作業をする獣人は手慣れた手つきでオタマのような調理器具で混ぜるとアツアツとした煙があがった。
スグに横から袋に入っている容器を取り出すとすくって中に入っている乾燥クォーンの粒々をナベの中に入れてスグに蓋をした。
「こっからにゃ! 一気に出来るニャ!」
イアがそう言うとカティアとフィフィは乗り出してナベの方を見る。
イアが言ってからスグに鍋から[ボンッ]と弾けるような音が鳴ると、連鎖するように[ボボボッボボボッボボボォボボボッ!]――はじけ飛ぶ音が響いた。
「あぁ! みてみて、蓋が動いてる」
「白いのが膨らんでるの?」
「いい匂いにゃ!」
イアの言う通り香ばしい匂いが漂ってきた。
「あぁ、なにこれ~」と、うっとり眺めるカティアに「これ、ぜったい美味いやつ」と食べてもいないのに味を想像するフィフィは調理中の料理に釘付けだった。
お構いなしに調理をする獣人は手際よく作業を進めていく。
音が出なくなると蓋を取って、隣の大きなかごに入れて、スグに塩をふって混ぜていく。
「これで完成なのパックォーンって?」
「ぱっくク~オンって呼びにくいね」
「そうかにゃ?」
イアと一緒にカティアもフィフィもかごを振る獣人の動きに合わせて動いているが、そんな会話をしながらパポンが「パックォーンって呼び方じゃなくて最近はボボボっていう風に呼んでるよ。正式な呼び方は無いらしいけど」と間に入ってきた。
「へぇ~、『ボボボ』か、そっちの方が言いやすいね」
「どっちでもいいにゃ!ボボボでいいにゃ!」
塩をかごの中で振り終わったモノが深型の金属皿の上に広がっていく。
「これで完成かな」
カティアが確認の為に尋ねた。
「そうニャ! あとは味をえらぶニャ?」
「味が選べるの?」
「そうだよ、塩が普通で、蜜をかけて甘いのと、辛いとか刺激的な粉をかけるの、この3つが大体の店で選べるかな」
パポンは笑顔で説明をしてくれる。
「へー……どんな味なんだろうなぁ……たべたいなぁ」
言動がどんどん幼児退行していくように目の前にある『ボボボ』の事が気になりだすカティア、それにフィフィ。
「フフフッ! まかせんニャー! とうちゃん!」
イアの呼び声を待っていたかのようにアントンが飛び出してきた。
そうして味違いを4つ、合計12個買う事になった。
***
「やっぱうめーにゃ~」
イアは席に座りながら
パックォーンもといボボボを手とってシャクシャクと音を鳴らして食べていく。
――ちなみにボボボは皿ではなく特大の葉っぱにクルクルと円錐状にして包まれ渡される食べ歩き用のお菓子である。
「わたし気が付いた。甘い、しょっぱい、スパイスの順番で食べれば永遠にいけるよ」
「まとめてでもいけるよ」
「でも、なんでこんな形なの?」
「しろくて、ワシャッてなってるよね」
「乾燥したクォーンの実を煎るらしいけど」
「茹でたの焼いたらこんなのになるのかな」
カティアとフィフィが意味のない会話を続けている。
「だめだよ、赤ぽい実のだけしか弾けないんだって」
パポンは甘いボボボを食べながら注釈をくわえる。
「へぇ~なんで?」
「それがわかんないだよね。黄色いのは焦げるだけだっておじいちゃんもお父さんも言ってた」
「むかし、やったにゃー!かぁちゃんにおこられたにゃー!」
「まぁ、いいや、黄色はふつうで赤が弾けるのね」
お菓子を囲ってどうでもいい話に花を咲かせているのは平和な証拠である。
スパイスの効いたボボボを静かに食べて(これで酒がのみたいなぁ~)と静かに考えるジョーは「ジョー、どれが美味しい?」と言うサイリアの声で我に返った。
「これかな、酒に絶対に合いそうだ」
いままで食べていたモノを見せる。
「そう、それなら後で買っていこうか? ニコとかアンジー達のお土産に」
サイリアは優しく提案をしていた。
「いいかもな……」
ジョーも同意するように頷く。
すると、突然、「この後どうするにゃー?」とイアが尋ねてきた。
「それりゃぁ、飯を食べるんだろ?」
ジョーは返答する。
「ち・が・うにゃー……。この後は肉くって、果実くってくいまくるにゃー!けっていにゃ! 聞きたいのはとまるところにゃー」
「そりゃあ、決まって無いけど、コツ、クゥ、リンさん達が宿を手配してくれるって言うからそれに従って休ませてもらうよ」
「にゃ? そのあとにゃ?」
「馬車を直さないといけないから暫らくこの場所に留まるだろうな」
「にゃ! それにゃら、うちにくるにゃー! みんにゃくんにゃー!」
イアは興奮気味に答えた。
「うちってイアの家にか?」
「そうにゃ! オレイがまだニャにもしてにゃいニャー!」
「お礼って?」
「たすけてもらったにゃー! そのおれいにゃー! しないと獣人として恥だニャー!」
「恥っていうほどか、それにイアの一存で決められるほど簡単じゃないぞ、大人数だし、修理とか工員呼んでくれるみたいだし……」
急展開に言い淀むジョーだったが――。
「だいじょーぶにゃー! とーちゃん、みんニャ泊めてもいいかにゃ?」
ちょうどお茶を買いに出ていたアントンが戻ってきてすぐに答えを求めれられる。
「いいんじゃナイかい?」と簡単に同意する。
「にゃ! きまりにゃ! ポンちゃん後でじっちゃんに言っとくニャ!」
隣でいるパポンにお願いをしておくイア。
「いいよ~、言っておく」と軽く頷くパポン。
そのままボボボの塩味を美味しそうに食べだした。
「そんな簡単に決めていいのか!?」
ジョーも驚くゆるふわ即決。
「コレ、パックォーンにあウ、茶ィーヨ。オイシイよ」
アントンはお茶の入った容器をそっと置いた。
ずいぶんと気遣いができる獣人だとジョーは思いながら言いたい事を飲み込んで無言のまま再びボボボを食べ始めた。
ポップコーンは店で買うよりコストコの電子レンジで出来るヤツが神。




