観光2
「にゃー、こっちくるにゃー!」
岩盤岩舎の屋上から降りたイアはジョー達を引き連れて下の町に繰り出していた。
彼女達がいる場所はジョー達が通行してきた大通り、獣人達が行き交う喧騒とした物売り通りだ。
ここは人間の国で言えば紛れもない交易都市、他国から入ってくる輸入品の7割はこの場所を通る。国境から入って大きな集落だから自然と獣人は増える。溢れかえっていると表現していいくらいの賑わいだ。
他国の人もチラホラ見るが殆どがモフモフキュワキュワの獣人達。
交易関係の仕事を生業としている集まりでもあった。
当然、寝る所も食べる所も充実している。
「ココで食べれるの?」
「そうにゃー! 、その店ニャー!」
カティアの質問にイアは大きな声で答える。
この通りの端に看板が道端に置かれ、造りの同じような店舗が連続して建てられ、そしていい匂いを漂わせて屋台料理の通りだと初見で来てもわかる所だった。
「まってんにゃー! かってくんにゃー!」
イアはみんなにそう言うと――「《とーちゃん!》」と元気よく一緒についてきたイアの父親のアントンを呼んだ。
もちろん、彼が一緒にいる理由は娘が心配だったのと、なにより物を買う財布係だからだ。物を買うにはその国の貨幣が必要なのは当たり前だが帰ってきたイアがそのような貨幣を持っているはずもなく、父親に出してもらうほかない。
イアに連れられてアントンと一緒に屋台に買いに行ってしまった。
置いて行かれたジョー達は「あの、あそこに座りましょう」とパポンに促されて野外の屋台に用意されたドンッと武骨な食卓に小樽のような椅子に並んで座った。
座るとスグにイアはとアントンは戻ってきた。
木の皮で造った笊に緑色の植物を盛って食卓の真ん中にいきなり置いた。
「こいつがクォーンの実ニャー!」
イアは元気よく紹介した。
「こ、これがクォーン!」
「イアちゃんが言っていた、この国の国民の大半が主食とする、子供から大人まで大人気の植物、煮たり、焼いたりして食べる懐かしい味らしい!」
カティアとフィフィが説明口調でクォーンの実について説明してくれる。
どこかの美食役者のようだが大体は伝わっただろう。
「それで、どうやって食べるの?」
「にゃー! 塩でゆでたやつにゃー! このままむいて食べんにゃー!」
イアは無造作にクォーンの実を一個とって皮を剥いた。
それに習ってカティアもフィフィも無造作にとって緑色の皮を剥いてみた。
中にはギッシリと黄色の粒がキレイに並んでいる。
「へぇ、中身は粒々で黄色いんだね」、「どこを食べるんだろ?」
カティアとフィフィが困っていると「こうやって表面を歯でこすように食べるんだよ」とパポンは食べ方を実践してくれた。「芯は硬いから食べないでね」と注意もする。
それをみて「なるほど」と頷いて恐る恐る口に運ぶ。
一口食べてムシャムシャと咀嚼をするとカティアとフィフィは同時に目を見開いた。
「おいしい!」「甘い!」と感想を口にする。
「プチプチおいしい!」、「うまいニャ―!うまいにゃー!」、「塩でゆでたのに甘い!なんで?」、「そういうもんにゃー!」などと一気にクォーンの実の話が咲いた。
ゾゾロも皮を剥いて一気に喰いつく。
鋭い歯を武器に実を回転させて粉砕するように独特に食べると――当然、あたりに飛び散った。
「きゃーッ!ゾゾロちゃん、服汚れちゃうよ」
サイリアが驚きながら急いで布をとり出そうとしていた。
ゾゾロは構わずにクォーンの実を食べていく。
そのようないつもの光景を横目にジョーも塩ゆでされたクォーンを手にとっていた。
しかし、口にはしていない。
ゆっくりと中身を回転されて黄色い粒の数を数えているように見える。
「たべないんですカ?」
そんなジョーにイアの父親のアントンが話しかける。もちろん大陸共通語で。
「いえいえ、めずらしいモノで興味があったんですよ」
ジョーはそれとなく返事をした。
「さア、食べて、ウマいよ、うまイ」
陽気に答えるアントン。
ネコのヒゲと耳がご機嫌に揺れている。
上手くはない大陸共通語だがもてなす気持ちは伝わってきた。
「我々の分も買って頂いてありがとうございます」
それとなくお礼をいうジョー。
「イイよ! みんニャでたべると、うまイ、それにこうミえて持ってるから、あんしんしてヨ」
懐から財布のようなモノを取り出し見せるアントン。
訳すと支払い能力はあるから大丈夫と言っているように聞こえる。
ココまで陽気で気前が良いのもイアが戻ってきたからだ。
娘の恩人であるジョー達に少しでも恩返しがしたいという行動だろう。
しかし――彼はこの食べ歩きが終る頃には後悔することになる。
通常であれば何も問題ない食べ歩きだが、1つの不穏分子が紛れ込んでいる事をしらない、いや、これから知る事になる。フィフィと言う超高燃費食料消費魔術士がいまにも胃袋を解放しようと着々と準備を進めていたのだ。
ジョーは一口食べて「旨いなぁ~」とタダて食べれる食事に感謝した。
「にゃー! 次はパックォーンを食べんニャ!」
食べ終わったイアがスグに次の提案をした。
「なに? ぱっくおーんって?」
「すぐに食べにいこうよ」
「しゃくッ、フワッってニャるヤツにゃー!」
「それじゃ、わかんないよ」
「色々な味があるんだよ。おススメは蜜かけのヤツかな?」
「どんなんなの?」
「とにかくおいしいかな」
「それはスグに食べないと!」
「すぐそこでやってんニャ!」
盛り上がる女子たちと対照的にアントンは食べ終わったクォーンの芯を笊に戻して片付ける。
(なるほど、元の店に戻すのか)と買った店に食べ終えたゴミを戻して店を移動する様子をジョーは思い思いに眺めていた。
適当な店で注文をして、イスと卓のある所で食べ、終わったら捨てて次の店に移動していく。
(ずいぶんと違うんだな)と普段の食事の仕方と異国の食事の仕方の違いの細かい所を感じながら「《とーちゃん、こっちニャー!》」と元気よくアントンを呼んでいるイアを見てジョーは席を立った。
トウモロコシってウマいよね。




