再会と涙
扉が開くと子供たちが一斉に駆けだした。
奥に見える集団が一斉に「イア!」、「プミプミ!」といって声を重ねる。
種族の特徴が色濃く出ているので親族関係が集まっているようだ。
20数名程の中にウサ耳、ネコ耳、タヌキ尻尾のモフモフが溢れている。
その中でイアはある女性に抱きついていた。
「《か~ちゃん!》」と聴こえていたので母親なのだろう。
プミプミも白いうさ耳の母親とモフモフな父親ウサギ獣人に抱きしめられて泣いている。
パポンも親族に囲まれてワイワイと何かを話し、潤んだ瞳で安堵の表情を浮かべていた。
そして、その中で、ゾゾロは部屋に入ってキョロキョロと辺りを見回している。
尻尾を振りながら嬉しそうに――。
プミプミもイア姉もパポン姉も家族に会えたようだと思い、自分の親を探してみた。
思い出の輪郭、懐かしい匂い、安心する声。
ゾゾロの記憶に思い出される甘美な気配。
自分も早く会いたいと辺りを何度も確認するが――似ている種族の獣人がまったくいない事に気が付いた。
周りのイアやプミプミやパポンは嬉しそうにしている。もちろんその親族もだ。
声をだして喜び合っている。
当たり前に嬉しい事。
でも、ゾゾロには無かった。
何度も何度も部屋の隅々まで見たがゾゾロの親族らしき影も無い。
次第に気が付く、だれも自分を探してないと――。
尻尾もしなびれたように下がり――。
ゾゾロの視界がゆっくりと歪んで目元が熱くなる。
ゾゾロにもあるはずの再会が無いと気がついてしまった。
そうなったら一気に気持ちが決壊して――崩れた。
「……うぅぅぅッ……。えぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇッ! グェぇえええええええ――――――――――――――!!!!!」
大きな泣き声となって無遠慮に周囲に響いた。
――閑話休題――。
突然に泣き叫ぶゾゾロ。周囲に困惑は広がる。それはそうだ、なにしろ子供が泣いているという行為は目を引くし、なにより理解できずに大抵は固まるだろう。
それでも泣く子にスグに駆け寄る者もいる。
「《おーッ、どうした、どうした。ゾゾロ》」
ニコがゾゾロの傍について、ゆっくりと右手で頭をなで、膝を床に置いて、泣いている彼の顔を近くで合わせていく。
ボロボロと涙を流すゾゾロは「おうぇいえぇぇぇいがうぃぃぃ、うえぇえ―――ッ!」と何かを言っているが理解の範疇にはいる言葉は出来なかった。
そして、また泣きだす。
「よしよし、ゆっくりでいいから……」
慰めようとするニコは優しい笑顔をゾゾロに向ける。
子どもが泣いたら『泣かない』と命令しても無理な注文だ、だから泣き止むまで待つしかない。
「ちょっと、大丈夫、ゾゾロちゃん?」
「泣かないでね、ねッ」
カティアとフィフィが心配そうにゾゾロに寄ってきた。
周りについて話を聴こうとするが相変わらずワーワーと泣き続けるから言葉の呂律が乱れ、何を言っても聞き取れず、そしてまた泣くという行為の繰り返しをしている内に『母親』と『こない』という言葉を聞き取るとやっと泣いている理由が伝わる。
「ゾゾロちゃんのお母さんは来てますか?」とカティアは尋ねる。
ジョーもコツ、クゥ、リンに尋ねるが――。
「あの子は白狼族に連なる者だと思いますが、彼らの住処はココからかなり遠い山間部と草原にある場所を行き来している者達です。使いをやってもスグに来れる距離ではありません」とコツが答えてくれた。
ジョー達が国境にある砦から交易都市に到着して約3日、近くに住んでいる者なら呼ばれてすぐに到着出来るが遠くにある場所だと行って戻ってくる時間もかかる、さらに移動に準備が必要になるだろう。だから唯一、この場所にゾゾロの親族は居なかった。
「なるほど、理解はしました。ですが泣いたままで落ち着かせないと不味いでしょう、違う部屋を用意してくれませんか?」
ジョーの要望にクゥはスグに行動を起こし、部下に命じてゾゾロを違う部屋に移すように動き出した。
***
ジョーとコツ、クゥ、リンは別の場所に移動している。
先ほどの騒ぎ(ゾゾロ泣き叫ぶ)から暫くたってサイリア達はゾゾロの面倒を見る為に広間から違う場所に移されている。
現在、ジョーが行政の補佐官と思われる3名と対峙しているのは、選政官の到着の前に取り決めと書類の引き渡しの確認を行う為だ。
部屋に到着すると対面式の机と椅子が置かれている。
大陸調を意識した造りで外交向きの部屋だ。
「武器は預かりますが?」
ジョーはとりあえず聞いてみる。
ここに来るまでに身を守る為に蛇腹刀や短剣など装備しているが、このような外交の場では不向きであり無礼になるから大抵は到着したら預かるという行為に自然とたどり着くはずだが――何も求められないのでそのまま進んで、この場所まで到着していた。
「いいえ、どちらでも構いませんよ」
リンが軽く答える。
「椅子に座るなら邪魔でしょう、ソコの棚に置かれては?」
邪険にするわけでもなくコツが提案した。
信頼か、おおらかなのか、わからない対応にジョーは困惑しながらも彼は上半身にたすき掛けになっている鞘の革帯を外して蛇腹刀を言われたとおり棚に置いた。




