幕間 母を訪ねて何千里? 5
いつの間にか400回目の投稿らしい。
「《―――そうですね、今いる場所はココです》」
ダグラックは机の上に置かれた空路図の上に小さな金属製の船の模型を置いた。
それを見て喜ぶプミプミと悩むゾゾロ。
「《どうしましたか?』」
考えているゾゾロにダグラックは訊いた。
「《あのね……ギザギザしててね。こうやってまっすぐにいけばいいのに》」
ゾゾロは地図に書かれている船の進行線を指して疑問を投げかける。
確かに地図上の進路図ではギザギザと遠回りになりながら進んでいた。
「《はい、まっすぐに行けば速いです》」
「《でしょ?》」
ダグラックは笑顔でよく気が付きましたと言う風に頭を撫でる、それに嬉しそうにするゾゾロ。
だが、ダグラックはスグに表情を変える。
「《―――ですがゾゾロ君。実はこの船は生きているんです》」
「《いきてるの?》」
「《そうなんです、ひじょうに神経質……気分屋で、すぐにすねてしまう困った子なんですよ。よく休憩をとらないと動かなくなってしまいますし、休んで世話もしなければいけません》」
「《そーなの?》」
「《えぇ、ほんとうに困ったちゃんなんですね、この子は》」
「《知らなかった》」
ゾゾロはプミプミと一緒に辺りを見回す。
有機物でない無機物の船内を確認していった。
「《ゾゾロ君、プミプミちゃん、この飛行船に来るまで何に乗ってきましたか?》」
「《うんとね……バシャ》」
「《そうですね、余程の事がない限り馬は長時間休みなく走りません。途中で休みながら水とかあげませんでしたか?》」
「《あげてた!》」
「《そうです、それと同じなんですよ。この子は休ませながら走りやすい場所を進ませないといけません、高い山や危険な場所も嫌いますし、無理に進もうとすればスグに気分を変えて勝手に休んで困ってしまいます》」
ダグラックは分かりやすくしようと故障と緊急着陸つまり墜落してしまうという事を伝えようとする。
「《そーなんだ……》」
「《いま、きげんよくない?》」
「《今はだいじょうぶですよ。元気に飛んでます》」
「《ほんとッ!》」
「《えぇ、音でわかりますから》」
「《そーなの?》」
「《えぇ、我々はその道を歩んできてますから》」
「《へー……すごい》」
ダグラックがそう言うとゾゾロは尊敬の眼差しで船員を見た。
その後もダグラックに船内の話と外の景色を一緒に見ながらその日を終えた。
―――別の日。
ゾゾロは船内で怪しい部屋を発見する。
扉には『関係者以外入場禁止』と書かれているが文字は読めない。
「《なんだろうね》」
隣にいるプミプミが不思議そうに声をかけた。
扉がいかにも厳重そうに閉められていて普通とは違っていたからだ。
「《はいってみよう》」
「《ダメだよー》」
「《でもでも、きになる》」
ゾゾロは興味ある目を向けて部屋の傍に寄っていくがどのように開けるのかは分からなかった。
「へへッ、ボウズ達、その扉は開かね~~ぜ!」
顔の怖い船員が声をかけた。
まるで世紀末の悪役のような登場の喋り方だ。
驚くゾゾロにプミプミ。
振り返り確認するとダグラックもその集団にいたようだ。
「《どうしたのですか? ゾゾロ君にプミプミちゃん?》」
「「《ラックッ!》」」
元気よく駆け寄るゾゾロにプミプミ。
「《元気そうで……もしかしてその扉が気になりました》」
ダグラックの問いにゾゾロとプミプミは扉の方を一回見て頷いた。
「《あれは外の甲板に出る為の部屋に行く扉ですよ》」
「《そと?》」
「《そうです、ですが今は飛んでいる最中ですから外にいったら大変ですよ》」
「《そうなの?》」
「《そうです、外に出られるのは限られた人のみです》」
「《なんでぇ?》」
「《……外は大風でとばされてしまいますし、何よりも寒いのです、それに気分もすぐれなくなって倒れてしまいます》」
「《……なんでぇ?》」
「《そうですね、説明はむずかしいですが、強い風が吹く雪山といった所でしょうか。風が強くて呼吸も出来ません、寒くて動けなくなってしまいます。そうしたら具合が悪くなってしまうんですよ》」
「《そーなの?》」
「《えぇ、そうです》」
なんとか話を合わせようとするダグラック。
幼い子供に雪山の厳しい生存戦略の話など分かるはずも無く感覚で分からせようとしていた。
しかし現実に飛行船の外に出て歩くだけで非常に危険な事など経験と知識を得なければ判断出来るものでもない。
「《このトビラあけるとそとになるの?》」
「《いいえ、実は部屋の中は“変圧室”になっていまして、外にでる準備室のようなモノです》」
「「《へんあちゅしつ?》」」
ゾゾロとプミプミは聞きなれない言葉をきいてコテンッと首をかしげる。
「《そうですね……高い所、いや寒い所に突然行くとですね身体がビックリしてしまって倒れたりフラフラしてしまうんですね。そうなると船から落ちてしまうからひじょーに危ないんです。そうならない為に服を着替えて準備をする場所です》」
「《そーなの!》」
「《えぇ、だから関係者以外は禁止で……》」
「《じゃあ、入ってみる!』」
「《いえ、ゾゾロ君、話聞いてました?》」
ダグラックはゾゾロとプミプミを説得するのに多大な労力を消費した。
――別の日。
飛行船の操縦室内にゾゾロとプミプミは入っていた。
その機関室にいる女性船員にゾゾロは海岸で拾った貝殻を持ち上げた。
「まぁ、わたしにくれるの?」
「うん、あげゆぅ」
貝殻を受け取る船員。
陽の光でキレイに光る巻貝を見つめる。
「ありがとね」
笑顔で返事をすると女性船員はお返しに頭をナデナデ&アゴ元フサフサをプレゼントした。
一通りの礼を終えると船長ウッツの元にゾゾロ達は行ってしまった。
「ずいぶんと嬉しそうだね」
同僚の男性船員が女性船員に尋ねる。
「えぇ、うれしいわ。久しぶりの贈り物だもの」
「そう、結構、貰ってそうだけど?……」
「そうね……下心のない贈り物は久しぶりなのよ」
「……業が深いね」
――アブブロン領到着日。
飛行船が遂に最終目的地に到着した。
何時ものように作業音が鳴り響き、そして駆動音が停まっていく。
笛の音が鳴り響く頃、ジョー達は下船の準備を始め、現在は貨物室の荷物置き場で作業をしている。
扉が開けば出発できるその時にジョー達の元に集団が歩いてきた。
船長のウッツを中心とした船員たちだ。
「ウッチュ、ラック!」
馬車に登る準備をしていたゾゾロが人影を確認して飛び出した。
「ハハハハッ、ボウズ、元気だな」
ウッツは元気が良いと分かるほど尻尾を振った元気いっぱいのゾゾロを受け止める。
「《お別れですね》」
ダグラックは優しく声をかけた。
「《うん……》」
「《顔をあげてください、お母さんに会うんでしょ》」
「《うん!》」
ゾゾロは元気よく返事をする。
「母ちゃんに会えよ!」
ウッツは元気よく声をかける。
「元気にしてな」
顔の怖い船員は声をかける。
「じゃあね、ゾゾロ君」
女性船員も優しくゾゾロの髪に触った。
「また会おう」
「今度は美味いモノ食わせてやるからな」
「早く故郷に帰れるといいな」
「―――」
「―――――」
ゾゾロと関係ある船員が順番にお別れを言っていく。
ゾゾロもそれに答えるように可愛く返事をしていた。
言葉は通じつとも心で通じ合ったように――。
「「じゃあ、じゃあ!」」
ゾゾロとプミプミは馬車の後方から船員に向けて大きく手を振った。
ジョーが操作する馬車は貨物室の連絡通路を渡って遠くに消えていく。
「なんか寂しいっすね」
作業員の男がポツリと漏らした。
「バカだなぁ~、俺たちの仕事なんて渡り鳥のようなものだ。出会いと別れを繰り返すのが普通だ」
「寂しいのか? ママに会いに行けよ」、「あ~ぁ、そんな事を言うなよ」
他の職員が騒ぐ。
パンパンッ!―――と甲高い手拍子が響いた。
「ハイハイ! 無駄口は叩かない。船が到着したのなら忙しいくなりますよ。早く準備をしなさい」
ダグラックが手早く命令を出した。
「副船長は寂しく無いんですか?」
「いえ、寂しいですよ。ですが……ゾゾロ君やプミプミちゃん、他の方々が無事にここまで運べて両親に会える手伝いが出来て嬉しいんですよ……」
ダグラックは本心を述べて、連絡通路に消えていく馬車を見ていた。
「さて、船長も仕事に戻りますよ」とダグラックが声をかけると、仁王立ちのまま泣きそうな顔でいるウッツを見てダグラックはギョッとした。
「泣いてるんですか?」
「バカヤロー……嬉し泣きだよ」
「泣いている事に変わりないじゃないですか。ほら、仕事に戻りますよ」
「部下の扱いが酷くて、俺はもっと泣くよ」
最後にウッツは言い残しゾゾロ達のいる馬車に向かって親指を立てながら静かに拳を突き出した。
長くなりましたが幕間の話は終わりです。
飛行船について多々言いたい事はありました。
ですが、全て書くととにかく疲れます。それに長くなりますからある程度端折ってます。
高度の変更とか操作とか色々書きたかったです。
一番の問題は船外活動についてです。空の上とか気球に登る某ヒーローがいますが、移動中の飛行船はヤバいという話です。そう考えると天空の城のラピュタのパズーはよく船外活動出来ましたよね、それにシータもあんな危ない所登ったなと思います。




