短い船旅
日が昇り始め、しばらくすると大河に靄がかかるなかジョー達は上流の船着き場の列に並んでいた。
河に反射する光が対岸の土地を照らし、朝日の温度でキラキラと靄と水面を輝かせ、その間を船がゆっくりと進んでいる光景は異質であり神々しいと感じる程だった。
待合の列に並びながらカティアにフィフィ、イアにパポンは馬車の出入口からその景色を眺めていた。
「キレイ……」
「にゃー……キレーにゃ」
「イアちゃん、知らなかったの?」
「このトチははじめてにゃい」
「えッ、そうなの?」
「あの、イアちゃんもそうですけど、わたしたちは国境までは来ません、商隊や許可をえたもの以外は来ることがありませんから」
「そうなんだ……」
「自分の国でも知らない事ってあるよね」
「にゃー、父ちゃんもダメっていったにゃ!」
「そうかー」
「もっと見たかったにゃー」
「でも、いろいろ見に行けたよね……」
「そうにゃー、たのしかったニャー……」
イアがそういうと4名に沈黙が訪れる。
これまで回った島や景色、食べ物に買い物、その楽しかった思い出が巡るが、同時に旅の終わりの虚しさと寂しさが襲ってくる。
「しゅーぴー、しゅぴー」「ふぁー……、ふぁー……」
荷台で寝ているゾゾロとプミプミの寝息が聴こえるほどだった。
***
ガッコんッ!!
歪な事が響く。
船の後方が開いて、作業員が渡し板を船にかける。
太い長方形型の船型で快速船とはいえない輸送用の船だった。
ジョーとミックは馬を曳いて、ゆっくりと船内に進ませていた。
2台に連なっているのでさらに後ろでグレーとラリーが太い木の棒で車輪を浮かしながら乗船の手伝いをする。
4台馬車を入れるだけでたちまち船はいっぱいになった。
外の作業員が渡し板を外して扉を閉める作業をすすめていく。
「出発しますよ~!」
船尾にいる船頭が合図をすると、自信の手前にある水晶を触る。
船尾からボコッリと音が鳴って水流が膨らみ始めた。
船頭が船首にいるもう1名の船員に合図を送る。
船がゆっくりと岸を離れ始める。
靄と水面切り裂いて船は徐々に対岸に向っていく。
「ニャー、見るにゃ! 動いてるニャ!」
「船なんだから動くよ」
「みて、ほら、なんか曲がってない?」
「揺れてるけど…あれ、なんだろう?」
船の縁、そのような場所に捕まってギリギリ見える場所に顔だけ出しているカティア、イア、フィフィ、パポンは景色を見ながら船の中腹で離岸していく場所とこれから向かう場所をせわしく見ながら旅を満喫していた。
「《イアねぇ、みせてみせて》」
「《わたちぃも》」
ゾゾロとプミプミが起きてきて景色をみたいとおねだりしてくる。
幼いゾゾロとプミプミの体格では縁までま大きな壁だ。
「にゃ! 待つニャ」
イアが言い終わる前にラビスとニコがヒョイッとゾゾロとプミプミを持ち上げた。
「ほら、これでいいでしょ」
ラビスに脇を抱えられ、縁にゾゾロは手を添える。
「チロイッ」
「ほら、暴れない、落ちちゃうでしょ」
ラビスはゾゾロを抱きしめた。
「見たかニャ? ゾゾロ」
イアがゾゾロの頭を撫でる。
ラビスに抱かれながらキラキラした目で頷くゾゾロ。
寝起きだが、気分はキレイな景色で高揚していく。
「それにしてもぉ~、この船って何で進んでいるのでしょう~?」
ゆったりとした船旅にカティアもゆったりと言う。
「なんでだろうねぇ~」
フィフィもゆったりと答える。
「そうだねぇ~」
パポンもゆったりと返事をする。
「それは、後ろの水晶で船底の水流の流れを操作して後ろに吐き出しているからだよ」
ニコはプミプミを縁に固定しながら優しく教えてくれる。
「「「へぇ~……」」」
息の合ったゆったりした返事。
「そういえばぁ~、この船って横向きながら進んでいるよね、なんでぇ~?」
カティアが疑問をゆったり口にする。
「そだねぇ~」
フィフィが応える。
「なんだろうねぇ~」
パポンも応える。
「それはね、船頭が梶を切って上流方向に向っているから、それにこの河の流れに抵抗しているけど、流れが強いからね。私たちは結果としてこの大河を斜めに進んでいるんだよ。だから上流から始って、向こう岸に着くころには中流に着いて、最後は戻って下流の終着点に着くんだ。、ソコから始めの上流に船を引っ張っていく、三角形に繋がっているんだよ」
ニコは大まかに答えた。
「「「へぇ~、そうなんだぁ~」」」
河の流れのようにゆったりと応える3名だった。
***
対岸がすぐそばまで見えそうな所まで船は来てた。
船首にいる船員はゆっくりと船に括りつけた太い縄を手に持って流れの先にある船着き場を確認する。
少しだけ飛び出ている残橋と太い丸太の傍にいる作業員に手を振って合図を送る。
速度を緩め、河の流れに船を任せると
桟橋に徐々に近寄っていった。
慣れた手つきで船首の船員んは作業員の男に縄を投げる。
それを手に取る作業員の男は太い丸太に縄を括りつけてゆっくりと引っ張り始めた。
小さく揺れる船内、ジャバジャバと水が抵抗する音が聴こえる。
しばらくすると固定されたのか揺れが小さくなって船員が前を確認すると船首部分の扉が開き作業員の男2名が残橋と船の間に渡し板をかけ始める。
安全を確認し「どうぞ~」との声に船員は手招きをして合図を送った。
ジョーとミックは入った時と同じように馬の手綱を握って馬車を動かした。
こうして遂にジョー達は獣人国の地へと降り立ったのだった。




