幕間(ss) 人肌恋しい
飛行船はモノを運ぶために造られている。
この設計思想は基本的に揺るがない。
しかし、運ぶものによって多少の誤差はある、その誤差の基準は人間かモノかの違いだ。
さて、商船を基本として、無理やり人も運ぶように改造された船が快適に過ごせるだろうか?――というお話だ。
飛行船は空高く運行する乗り物、そのために基本的に地上よりも気温自体が低い、むしろ、速度と高度も相まって非常に寒いのが現状だ。
さらに言えば、寒冷地を飛ぼうものなら、機内の温度は非常に下がる。
例え、防寒対策をしようとしても限界というものがあるのだ。
ある夜、そんな寒い中でジョーは寝台に横になっていた。
しかしながら、部屋には暖房する器具も道具もなかった、寒いもので室内にいるというのに息が白い。
「さみぃ~」
毛布に包まりながら夜が明けるのを待っていた。
多少の改善を期待して陽の光を求めていたのだ。
だが、現在は夜。2枚掛けにも関わらず、冷気は毛布を突破してジョーの身体に突き刺さる。
――我慢、後は燃やして暖をとるしかないが、あいにく船内は火気厳禁なのだ。
そんな折、部屋の扉が鳴った。
「師匠いる? 入っていい?」
カティアの声が響く。
ジョーもそれに気がつき顔だけ起き上がる。
「なんだ、夜中に??」と返事をした。
ゆっくりとドアを開けるカティア、毛布をかぶって防寒対策をとっていた。
その後ろにフィフィもいる。おなじように毛布をかぶって深刻そうにしているようだ。
寒気が入らない様にサッと部屋に入るカティアとフィフィ。
それに気が付いていたニコはむっくりと起き上がる。
「どうしたんだい?」
ニコの問いに「寒くて……」とカティアとフィフィは答える。
「俺らも寒いんだよ」と、ジョーは答えた。この寒さの対策はいまのところ無い、静かに身を屈めて体温を減らさないようにするしか方法は無かった。
「そうなんですよぉ~、寒くて寝れなくて……。それで纏まって寝ようって思ったらイアちゃんとポンちゃんは1つのベッドで寝てて、それで、フィフィちゃんと一緒に寝てたんですけど、それでも寒くって……」
「そうだろうな、でも、この部屋は暖かいわけじゃないだろ?」
「はい、ですが、思ったんですよね。獣人の子って暖かいですよ、特にゾゾロちゃん」
カティアに言われ、ジョーの上の段で寝ている毛並みのいいゾゾロを思い出した。
「それじゃあ、失礼します」といって2段ベッドに上がっていくカティア。
「あッ、ずるい」というフィフィ。
ベッドは狭くふたりでも狭い。
「ごめんね、フィフィちゃん、早い者勝ちって事で」
そのまま幸せそうに寝ているゾゾロの寝台に入って行く。
時代が時代なら逆夜這いのようである。
急に入ってきたカティアに「ワフッ」と起きてゾゾロは反応するが、ワシャワシャと毛並みを撫でていく彼女と匂いにゾゾロは安心した。
「よしよし、いいこ! 一緒に寝ましょうね」と首元を撫でながら毛布に包まった。
「ワフッ、オフッ♪」
「よしよし、あれ? ものすごく暖かい……」
ニコの上の寝台でも「キュー」と鳴き声がして「あぁ、やっぱり最高」とフィフィの声が暗闇に響いた。
「毛並み、最高……、予想の10倍暖かい……。それじゃあ寝ますね、師匠おやすみなさい」
と、もう、眠そうな声が響いた。
ジョーは上を向いて無言で確認する。
そして、再び寝ようとすると不意にニコと目が合った。
静寂の中でニコは急に毛布を開くと「一緒に寝るか?」と誘ってきた。
あくまでも気遣い程度の言い方で――。
「いいよ……我慢できるから」とジョーは再び毛布に包まる。
雪山では緊急時に同性異性でも裸になって寒さをしのぐ方法があるが――その選択肢は選ばなかった。
(そっか……ゾゾロっていう手もあったな、今度は俺もそうしよう)と心に決めて。
雪山遭難の緊急時。相棒がいる場合、裸で抱き合って過ごすと生存率が上がる話。
でも、そもその危険な雪山レジャーは止めようという話。




