空旅5
「ほら、ゾゾロ、お菓子だぞ」とジョーは甘い焼き菓子をゾゾロの前に差し出すと自然と口が開いて、そのままお菓子を放り込む。
「ウマチッ!」と言いながらボリボリと食べていく。
半分の残ったのをプミプミに手渡してしていく。
彼女はポリポリとお菓子を食べだした。
「ウマチッ!」と同じように言って笑顔でお菓子を味わった。
「ほらほら、戦争で“民”が倒れていくぞ!」と意地わるくジョーが言うと必死にガードしていくカティアとイアの耳には届かない。
それどころか、悪ふざけでドンドンとお菓子を奪ってくラリーとラビスを筆頭に、ミックもアンジーもミレイも、それにグレーまで隙を見てはお菓子を奪っていく。
「ほらほら、戦争には“食料”の減りも速いよ」
「“カネ”も減っていくよ」
「略奪も多くなる」
「値段も吹っ掛けられるからね」
注意をしながら、菓子がドンドンと減っていくのは、カティア達は4人に対し、周りにいる大人はそれ以上に多いからだ。
『ゾゾロもプミプミも食べちゃダメニャ!』
『おいてィ!』
『うまうま!』
「師匠ぅ~無くなっちゃうよぉ」
「そうだろ? 戦争って言うのは、そういう事だ」
「いや~~~~~~」
――閑話休題。――
「はぁ、はぁ、はぁ~~~~~~」
カティアは息切れを起こし、テーブルの上に突っ伏す。
「これが、戦場だ。嵐のように事態は動いていくから予測が難しい」
ジョーにそう言われ、カティアはむっくりと起き上がった。
「ただ、一方的にお菓子を食べられただけだった!」
カティアは怒りの声で抗議する。
「そうじゃない、戦争する当事国にとっては一方的な搾取かもれないが、近隣国の商人からすると商売の機会だ。それをミック達は表現してくれただけだ」
「でも……あんなに取らなくても……。お茶菓子に提供されただけじゃない」
文句を言うカティア。
「違う違う、たしかにお菓子は食べられた、でもね、これは勉強なのよ」
ラビスはカリっと焼き菓子を口に含んで答える。
「勉強?」
「そう、戦争って言うのはカモにされるのよ。その場で誰がカモにされるか理解してないと自分がやられる厳しい世界なの。それを分からせるためにジョーは仕組んだのよ」
ラビスの説明にジョーは頷く。
「さて、こっち向くんだ」
ジョーは急に真面目な顔になってカティア、フィフィ、イア、パポンを見つめる。
「戦争をして、どうだった? 徳をしたか?」
そんなジョーの問いかけに――。
「「損しました」」とカティアとフィフィはハモッて答える。
その答えを聞いてジョーは満ち足りた表情で頷いた。
「そうだ、例えこの後に勝った国がカネを取ろうと、元にあった量とは程遠い。負けた国は多くの兵士が死に、戦力の確保が困難になる。徳をしたのは周りにいる連中だ、商人だったり、近隣の国だったり、そんな立場のモノが儲かる。総体的……、全てを見れば確実に減っているのが戦争の成果だ。残った国の中では多くの男性が死んで村の復興が困難になったり、カネが無くて借金生活を余儀なくされたり、復興が進まず夜盗があふれ、国が混乱したりと―――、さらに不幸が何十年も続く事になる。これが戦争の結果だ」
「……勉強になりました」
カティアは言った。
しかし、イアはまだ納得していない様子で「それでもセンソーするのはなじぇにゃ? いっぱい痛いニャ! そのままがいいにゃ!」と尋ねた。
「そうだな……、政治的と言ったが、もっとも多いのは感情だろう。どうしようもない“怒り”や、困難な道でも貫きたい“信念”、昔からの“怨念”、自国の戦力を見せる“虚栄心”、それと国家としての“栄達”、そして、諦めと“猜疑心”と“妥協”かもな。 イアにも俺にも分からないだろうが、その国の歴史や対立は、当事者以外は分からない、確実に辛い筈なのに戦争はやっていく矛盾は、理解されない感情が決めているんだろう。やりたくないと思っていても制御が効かないのが戦争だ。きっかけはどうでもいいんだ、もっと単純に言えば襲ってきたから戦う、危険だから戦う、そんな理由からでも戦争は始まるんだから」
「それじゃあ……この国はどうにゃ? ポンちゃんにおしえてもらったにゃ、同じ国であらそってるニャ?」
現在、イア達がいるイーララック国は内戦中。
2国間ではなく、自国のなか、全てにおいて制限がある戦いだ。
その事を聞いているのだろう。
「内戦か……。こう言っちゃなんだが、どちらが勝つにしても、その後は何十年も混乱が続くだろうな。何も無くなった所からの復興は奇跡の指導者が生まれない限り失敗に終わるだろうからさ」
「しっぱいしたらどうなるニャ?」
「また、内戦だろう」
「にゃ! くりかえしにゃ~~~」
「そうだね、上手い戦争なんて殆どないよ。こういった内戦はそれこそ繰り返すのが当たり前になるのが普通だよ」
アンジーも子供たちを揶揄うのをやめ椅子にどっしりと座って教えた。
「外からみれば何度も戦争をやっているように見えるが、当事国からしたら運命をかけた一戦だからバカにできん」
グレーもゆっくりと続けた。
「それに参加する傭兵とかも生活のためにやってる為か、ダラダラと続いてくれた方が良いって面があるよね」
ラリーは子供たちからお菓子をくすね終わってゆっくりとお茶を口に入れた。
「とにかく、戦いは『周りからみれば喜劇、身内からすれば悲劇』と言われるように内戦にしろ、自らを律して強い意志で国を立て直さない事には国そのものが消滅してしまう。そっからまた悲劇だ。だからカティアやフィフィ、それにイアやパポンには痛みを伴なっても事実を知ってほしかったのさ……」
ジョーは混迷広がる窓の外の景色を見ながら言葉を伝える。
情緒深くいう言葉に「師匠……」と、カティアは意味深に反応していた。
(別に、お菓子であらわさなくてもよかった話よね)――と、ポリポリと無言で食べながらサイリアはゆっくりとお茶を啜った。
旅なのに外に出られない。
日本人の感覚からしたらありえないですけど、実際に世界では旅に出てはいけない国、危険国家というものが実在します。
そんな内部的な話と戦争について考えたいと思いました。




