幸運なる島8
ガヤガヤ、ガタガタと騒がしい、もとい賑わいのある食堂『シーホース亭』にジョー達は移動していた。
迷宮城壁→地図屋と場所を変えると、食事をとりに城壁守備兵のおじさん達に教えられて町で美味いと評判のこの店に入店したはいいが、前評判通りに店内は、ほどんど満席に近く、昼の時間をずらしたとはいえ、この混み具合と喧騒な状況から優良店だとジョーだけでなくサイリアとニコも同じ事を思い期待に胸を膨らませた。
――注文を済ませ、海鮮料理が自慢のこの店の名物をみんなで待っている状況。
「町は面白かったか?」
ジョーは近くに座るカティア、フィフィ、イア、パポンに尋ねた。
それまで騒がしく旅の話と料理の話をしていた彼女達は一斉に彼の方を向き直って「面白かった!」と言い切った。
「まさか、この町の地下にあんな巨大な空間があるなんて!」
「すごかったよね、周り海だけど、水は入って来ないのかな?」
「行くのにスゲーかかるって言うニャン!」
「迷宮に入り過ぎるとからだ壊すっていう話も怖かったよね」
「最低でも3月を目安に地上に出た方がいいって」
「でも、潜るだけで1月かかるらしいよ」
「聞いたニャー! なげーにゃ!」
「でもでも、測量してて恐ろしい声が聴こえるっていう話もあるよ」
「グリアーム公国の騎士団長が迷宮攻略の組の中で一番強いって」
「それ聞いたよ、最前線は毎日魔物と戦うって大変らしい」
「にゃー? メイキュウのメシは不味いらしいニャ、たいへんニャ」
「乾燥した保存食が多いって言ってた、ゼンさんも仕事で機材もって大変らしい」
「それよりハラへったニャー」
「もうすぐ来るよ」
堰を切ったように和気藹々と喋る彼女達を見てジョーは少し安心した。
なぜなら島の観光はイアやパポン、ゾゾロやプミプミのリハビリの一貫なのだ。
色々と刺激を与え、飯を食わせ、歩かせる事で気分転換をする事が重要だとサイモンの手引書に書いてあったのだ。
特に獣人の子供は動かないと抑圧に弱く体調を崩しやすい――等々の警告的なご指摘もあった。
(まぁ、それだけじゃないだろうけど……カティアとフィフィがいて一緒に楽しんでいるのが良かったのか……)
楽しそうにお喋りをしている彼女達を見てジョーは少し安心していた。
自分ではここまで親しく出来たかは判らないからだ。
そうこうする内に給仕の女性が木製の台車をひいて「おまたせしました~♪」と軽やかに挨拶をして配膳を開始し始める。
――大きな木製の板のような皿に給仕された海産物、エビやロブスターのような甲殻類の塩ゆでから、貝類のグリル、あとは野菜をボイルしたものがドンドンと置かれ、複数のソースと香辛料入った底深い小皿に分けられ置かれていた、あとは飲み物各種、中央にパンが適当に盛られている。
フォークやナイフの食事用のモノは無い、切り取り用に大きなナイフが1つだけ、つまり、ここの料理は手づかみで食べるのが普通らしい。
その作法にしたがってジョー達も「いただきまーーす」と挨拶してから食事をとりだした。
「こえって? かちぃー」
『エイビィ=(ロブスターに似ている)』を両手で掴み折り曲げようとするゾゾロ。
「《ほら、かしてごらん》」とゾゾロの変わりにニコが手助けで割ってあげる。
手慣れた様子でエイビィを割ると周りの殻をとって中身をナイフで切り分けた。
「《ちょーだい》」
ゾゾロは切り身を適当なソースにつけて口に運んだ。
「ウマチッ!」
眼を開いて感想を告げる。
「《そうか、よかったね》」
「《これやって~ぇ》」
今度はプミプミがニコに助けを求める。
そんな様子を少し離れた場所からジョーは見ながら、同じように海産物を食べていた。
「これって美味しいね」
隣にいるサイリアが話しかける。
「あぁ、ソースはなんだろうな、乳製品に岩塩か? それだけでずいぶんと美味い」
「そう言えば、いまさらだけどイアとかゾゾロちゃんって獣人は海産物食べて大丈夫なの?」と疑問を呈してきた。
ジョーは食べるのを止め、手についたソースを舐めると、サイモンの手引書をとり出す。
数枚に分けられた紙を眼で追い「たぶん……大丈夫そう」と言った。
「本当に?」
「わからん、腐ったモノを食べれば誰だって腹は壊すだろ」
「もう、そういう事じゃなくて、食べたら病気になる事だってあるでしょ?」
「判別できないね、サイリア、全ての食事の中に入っているモノなんて判らないだろ? 以外に食べれるモノって直感でわかるそうだ」
「そいとも言い切れないじゃない……もう、ジョーはそういう所は勝手よね」
サイリアは少し不満そうな顔をする。
「元気に喰ってりゃ平気だろ」
ジョーはイアとパポンの様子と、ゾゾロが豪快に食べている様子を確認した。
「もう、わからないならいいけど、私達は元気に安全に送り届けないと行けない義務があるのよ」
「わかってるって、しかしだ……いくら資料を用意した所で抜けている箇所もある。現場である程度の修正は必要だ。それに過度の警戒は余計な厄介ごとを招く」
手に持っている紙を揺らして、そのまま折りたたみ元の場所にしまっていく。
「何事も、適量適分って事?」
「そう、俺たちが今やらなければならない事は、この料理を美味いうちに食べて英気を養うことだよ」
そう言い終わると、カブリッとエイビィにソースをつけて齧りついた。
「そんなんでいいの?」
「いいの、今日は“気を抜く日”だからだ。心配事は考えるな」
ジョーにそう言われ納得したサリイアは、貝類の身を適当な香辛料のソースにつけて食べると眼を見開いた。
「あらッ、不思議な味……でも、すっごく美味しい」
そう、眼を輝かせる。
活動報告にも書きました。
しばし、間を開けます。
腰治療大事。




