幸運なる島3
「それは魔物の数が多い、つまり、その場所で育った土地があるという理屈ですか?」
カティアはこれまでの経験を元に予測をたてる。
「そういう事、迷宮の奥、その先からこぼれ出る魔物の量を比べ、生活できる食料、大気、土地、資源が一定数あると予測される。それを連合国家は狙っているという訳だ」
「そうですか……でも食料や資源が無いからあふれ出た可能性もありますよ」
「それもあるかもな、あくまで仮説だから……もっともこれは迷宮のロマンの話になる。他の仮説では迷宮の奥で不定形生物が魔物を無限に生み出し続けているという話もあるんだ」
「本当ですか?」
「そこは誰にも確証とは言えないよ、だが、魔物が出現している事は事実だ」
事実は事実、結果は結果だ。魔物が地下より飛び出している以上“迷宮”の奥で生み出されているのは間違いない。しかし、どうやって?――などの確証は得られていない、もちろん方法も不明だ。
「なるほど……“地下魔物帝国”論か“不定形生物出生”論か……あれ、“地底人”がいてそういう国が攻めてきている可能性もある!」
カティアは何かを考えながらSFチックに話を膨らませていく。
むしろ確証がない事が妄想力を掻き立てているように。
「そういうのもあるかもな、、可能性は低いと思うが……」
「なぜです! あるかもッ! 地底人がついに地上に侵略を開始した! これからジュウリンされてしまうかもしれませんよ」
心配から興奮気味に言うカティア。
「もし俺が地底人の指揮官だと考えても、地上に出たら周りが海の土地でどうしようも無い場合いったん撤退させるぞ、魔物を放置数して何もしないなんてあり得ないだろ? 現場を見ないで魔物だけ送って放置とかどれだけ頭悪いんだよ」
仮定の話、カティアの話の通りに地底人が魔物を地上に送る穴だったとして、その出口が絶海の孤島、そして共食いを始め島は荒れ、他の大地にたどり着く前に9割以上が死亡するハード条件なのに何もしないでいる場合、それは地底人の頭が悪すぎると言っている。
「あッ!」
カティアは何かに気が付く。
「もし、その程度の地底人がいたとしたら侵略されないから安心しなさい」
「はーい、ですが……なぜこの島を選んで、その穴から魔物が出るように決まったんでしょうね?」
カティアは少しすねたように尋ねた。
「それは知らない。 仮説だけで誰ひとりとして迷宮の奥にたどり着けてないからなぁ~。たどり着いたら答えが出るんじゃないか?」
「よし! それなら、わたしが攻略します。行くわよ、フィフィちゃん!」
後方を向くカティア。
後方にいるフィフィに賛同を求めるが返事はない。
なぜなら、フィフィは現在も――「そうそう、姿勢は真っ直ぐ、ゆっくりでいいから体の力を抜いて、焦らない」とサイリアと一緒に騎乗の訓練の為か緊張した面持ちで馬の手綱を握りカティアの声を聞く余裕は無さそうだ。
彼女は空いた時間でジョーとサイリアから乗馬を習っているがカティアほど上達はしていない。パン屋の娘だから馬に乗る機会というモノに恵まれてはいなかった。
「仕方がない、でも、わたしたちなら出来る!」
そう、断言するカティア。
そのまま馬の腹を突いて我先にと駆け出した。
はやる気持ちを抑えきれないようだ。
(お前、明日には船が出来るだぞ……)
未攻略の七大迷宮の1つ“幸運なる島”を攻略するつもりでいるカティアをジョーは遠い目で見守っていた。
もちろん、カティアが馬を飛ばそうが乗合馬車がスピードを上げるようなことはせずに戻って来ることになるのだが―――。
***
丘を上がり、少し下がると半円状城壁が見えて来た。
奥は崖なのか小高い山のような場所に切れ込みが入ったような地形にそれは建設されていた。
その不自然に造られた城壁の近くに、長く巨大な平屋の建物がざっと見ただけでも5棟見える。
そして道の終点のように草木の生えない広場が広がっていた。
この場所が乗合馬車の到着点だろう。
「よっと!」
慣れたように馬の背から降りるカティア。
「到着です!」
「おい、馬を止めるから手綱は持っておけよ」
ジョーも馬を降りた。
「おーい、ジョー、あそこにタダで馬を留める場所があるそうだ」
ニコが愛馬を引っ張り、乗合馬車の乗組員に聞いた話を教えてくれた。
教えられた場所は城壁近くの場所にある広場の端にポツンと木製の停留所の柱が並んでいた。さらに小川から水を引いている石造りの水路が通り、その先は海の方に流れていく。
ココに馬を係留させて水を汲んで休めるようにしてあった。
ジョー達は誰もいない場所に馬を係留させてイア、パポン、ゾゾロにプミプミが降りた乗合馬車の終点に向った。
ここまで約半時(=30分)とちょっと、距離にして数キロ離れた迷宮入り口にたどり着いた。
「ワンッ!」
パポンに抱きかかえられているゾゾロは元気に声を出した。
尻尾を振りだしている事から再会を喜ぶ合図だろう。
しかし、たった数分の間、それも馬を繋ぎに行っただけである。
「よしよし、待っていてくれたのかな」
とりあえずカティアはゾゾロを撫でておいた。
「さて、これから迷宮を見る事になります。いいですか? 気持ちは出来ていますか?」
カティアは気合を入れて皆を前に問いただした。《ジョー、ニコ、サイリア以外》
元気の良い声が返る。
「それじゃあ、行きましょう! あの階段を登ります!」
そういうとカティアを先頭に一斉に駆けだす。
「おい、転ぶなよ」とジョーの声を無視するかのように、城壁に併設された昇り階段、何十段あろうかという石造りとはめ込み式の木製の手摺りのみの大階段だが、それを子供たちは競って昇る。
そして100段目を越え、つきあたりを曲がると城壁の屋上にたどり着いた。
カティア達はそのまま迷宮の入り口がある方向に駆け寄ってキラキラした希望に満ちた目でその景色を見つめた。
参考。
クトゥルフ神話 、映画の地下帝国の話、グレンラガン。
地下世界といえばその手の話に夢がありますよね。




