幸運なる島1
「それでは、明日の昼から出航予定ですので、それまでに戻ってきてください」という職員の声を後にしてジョーは愛馬パインブを連れて飛行船から一時下船した。
もちろん、ニコもミックもアンジーも自身の馬車に繋いだ乗馬を下ろす。
飛行船の停泊場所は島の港近くの櫂船並ぶすぐ傍にある、だから降りてすぐに潮風に吹かれた海辺を歩く事になった。
「にゃ!? なんにゃ? すごい水にゃ! へんな匂いにゃ!」
「海だよ、海」
「うみ? なんにゃ?」
「あれ? イアちゃんは知らないの?」
「じいちゃんにきいたにゃ! うみはでっかい水たまりでしょっぱいにゃ!」
「よし! それならまずは海岸に行きましょう、そこで実物を見ればいいわ」
カティアを始め、フィフィやイア、パポンが集団で和気藹々と観光気分で喋る喋る。
目新しいものだから仕方ない。
その後ろでニコの愛馬、鳥獣種の上にゾゾロとプミプミ、それにナワールが某動物歌劇音楽隊のような形で座っていた。
鞍の上から辺りを見回している。
「なにゅいあれ?」「ほら、ほら」
ゾゾロとプミプミが道路を歩く人の多さ。まるで人の波のような光景に呆気にとられた様子だ。
「《落ちないようにしっかり捕まってなさい》」
ニコは自分の馬の手綱をとって振り向きながら優しく注意する。
ゾゾロとプミプミを乗せたのはニコの判断により、港町の倉庫街の朝の人手の多さに道路を歩くよりも安全だと思ったからだ。
小さい体のゾゾロとプミプミが下を歩くよりも各段に良い。
しかも、それ以上に普段の目線と目新しい景色に何度も建物を見たり人の集まる場所を確認したり、飛んでいる海鳥を目で追ったり世話しなく目線を変える。
「よし、さっそく迷宮を見に行くわよ」
カティアが決意するように叫んだ。
「行かねぇよ、その前に宿屋だ」
ジョーはすぐに静止させる。
「師匠なんでですか? すぐに行きましょうよ!」
カティアは興奮気味に抗議した。
「あのね、カティア。迷宮街のような定住者の少ない所は宿屋がすぐに埋まってしまうの、だから先に宿の確保。それから散策しましょう」
サイリアが優しく教えた。
「なるほど……通過した町と違う訳ですね。その前に今日は飛行船に泊まらないんですか?」
「飛行船は整備と荷下ろしでかなり忙しいし、なによりも狭い場所で過ごすのは大変でしょ? 長い旅だから気晴らしも兼ねてるの」
「わかりました、宿屋を探しに行きましょう!」
カティアは直ぐに方向転換した。
(こいつ、俺よりもサイリアのいう事は反発せずに聞くよな)
ジョーはパインブの顔を触りながら寂しい気持ちになる。
――閑話休題――。
「さぁ。宿も確保したので行きましょう!」
さっそく目を輝かすカティア。
「いくにゃー!」
「わう!」――以下略。
宿屋の前で子供たちは叫んだ。
ジョー達と子供たちの部屋は確出来た、だが、宿屋は2軒に分かれ別の場所だ。
さすがに15名まとめて停まるほど部屋の空きは無い、それは仕方ないと諦めての方向転換、しかし宿を確保出来ただけでもありがたいと思っていた。
この島の産業の割合は宿屋が3割、食料関係2割、武器防具関係1割、大人の店関係2割、その他2割の完全迷宮街仕様となっていて他の町とは雰囲気も気概も全く違う。
そもそもこの島は元々の定住者もいないのだから仕方ない、迷宮の為に新しく造られた町であり、そして宿屋の半分以上は迷宮である島を管理する国家群の軍隊関係者が仕様しているので数の割には自由に使用できる宿屋というモノが少ないのが現状なのだ。
迷宮の観光に行くためにジョー、サイリア、ニコと子供達の9名と町の散策を希望したミック、グレー、ラリー、アンジー、ミレイ、ラビスの6名は分かれる事になった。
それでも三槍将とミラーキャットの乗馬は借り受ける事になった、船での運動不足を解消させるためだ。
無駄にデカい大通りをジョー達は馬を引き連れて進んだ。
「師匠、ところで迷宮の入り口は何処にあるのですか?」
ミック達の黒みがかった馬に乗りながらカティアはジョーが引いているパインブに近づいた。
ちなみにパインブの背にはイアとパポンが乗っていて、ニコにはゾゾロとプミプミ、サイリアが引いているのにはフィフィが乗っている状態だ。
「町の外だろ?」
ジョーは答える。
「なんでですかッ! 迷宮の町なのに迷宮が無いなんて!」
「お前、ヒュールに『迷宮法』について教えられてなかったか? 人が住む町の中に危険である迷宮の入り口がある訳ないだろ、その前に迷宮の周りに町を造ろうとしている時点で正気の沙汰じゃない」
「おぉ……そういえば聞いたような聞いてないような……」
うろ覚えながら聞いた記憶が蘇ってくる。
「まぁいいや……迷宮入り口に町は造らない、それは常識の範囲で覚えておけ。緊急避難所とか特殊な場合もあるが、隔離が一番効果的だ」
「はい、覚えました!」
良い返事を返す彼女。
「こういう時の返事はしっかりしているんだよな」
ジョーは懐疑的な言葉を向ける。
「それでは早速向かいましょう! いざ迷宮にッ!」
まるで英雄のようなポーズをとりカティアは宣言した。
追悼
ベルセルクの三浦健太郎先生の訃報。
それを聞いた時は本当に悲しかった。
それと同時にベルセルクが永遠の未完になるのか……悲しいなぁ。




