国家両替所
「―――――そ、だから国の安定、規模、国力によって価値が変わってくる。これは不変的なカネの価値観を変えた、当時、商人の間で―――」
ジョーは講義の意味も含めて話をしていくが――熱心に聴いている年上の者達よりゾゾロとプミプミは飽き気味だ。
そんな時に――通り道の先に露店のような建物が複数見えて来た。
「あ~~~~」
ゾゾロは嬉しそうに駆けだす。
「《これ、ゾゾロ何処に行く》」とニコの言葉を置いてけぼりにして彼は嬉しそうに前にでた。
「おかっし、おっかし♪」
店にあるものの多くは『菓子類』や軽食の類が多く、町中でも多くがソレだったのでゾゾロの経験上、何かの食べ物やという認識になる。
駆けだした先の露店にあったもの――それを見た瞬間にゾゾロは停止して不思議そうな顔をした。
「《先にいっちゃダメだろ》」
追いかけて来たニコが彼に言う。
「《おかしな~い》」
尻尾は下がり明らかに落ち込んでいる。
「《ゾゾロぉ~》」
プミプミもゾゾロに体当たりして止める。
しかし、何も反応しないゾゾロ。
「《どうしたの?》」
「《おかしナイ》」
ゾゾロとプミプミは見上げて、露店の1つの台の上には大きな秤と棚のようなものだけがあり、旨い匂いや美味しい音などが何処にもなかった。
「《ここにオカシは無いよ、全て両替の為のお店だ》」
?マークで不思議そうな顔をニコに向ける2名の可愛い獣人がいた。
その後ろで――。
「おー! 何か店がやってますよ……って、秤? 全部?」
カティアは指をさし興奮気味に告げる。
歩きながら一店一店の商品を確認していく。
「あれは、個人りょうがえ屋だな。その店でカネを替えてくれる場所だ」
「あんなにいっぱいですか? それだったらあそこでいいじゃないですか?」
「ちょっと違うな、あの場所は上級者か超初心者しか行かない場所になる。危険もデカい」
「おカネを替えるだけで危険ですか?」
「そう、初めての人は絶対に国家両替所にいく事をおススメする!」
ジョーは指をたててそう断言する。
「それは今から行くところですか?」
「そう! そこに行ってから説明したほうがいい、初めての奴が交換出来るほど甘い世界じゃないんだ」
「でも、安くするよ~とか言ってますよ」
カティアはジョーにそう告げる。
店の中の店員が笑顔で声を掛けているが、ジョーはそれを怪しめの眼で見つめていた。
「いいか、カティア、フィフィ。世の中には商売の為に色々言う輩がいるが、それにはれっきとした“やり口”がある。交換する為に甘い言葉を吐く事から始まり、交換率を操作して騙したり、偽ガネを渡したり、捨てガネ(=壊れた硬貨)を混ぜられたりして損をするんだ!」
ジョーは断言にも似た商売上慈悲の無い言葉を列挙する。
「エッ――――――――!!! ここにいるいる人達はわたし達を騙そうとしているのですか?」
カティアの驚きの頃は周りに響いた。
「全部じゃない、中には良心的な店もあるが、極少数のそれを見極めるのが難しい、特に交易路のような場所では時間に追われて両替を急いだら騙された、という話が多いのは昔からの話のタネだ」
「なるほど……」
カティアが怪しい眼で店の方を見渡すと何名かの店員が眼を逸らした。
過去に何かやったとか後ろ暗い事に心あたりがありそうだ。
ジーと店員を凝視するカティア、全てが怪しく見えてくる。
その周りでイアとパポンが「にゃんでダマすニャ?」、「たぶん、儲けるためだよ」、「よくわかんねーニャ? アレをあつめるといいのかにゃ?」という話し声も聴こえる。
「そういう訳で、この場所では替えない、いいから行くぞ!」
ジョーはそのように促して強引に先の道に歩みだした。
***
私営の両替商人のいる場所を抜けると平地の真ん中に突如として鉄柵に囲まれた大きめの建物が見えて来た。
周りにはパンテオン王国の国旗が等間隔であげられ、一目見てもこの国の重要機関であるとわかる仕様。
門扉の前には小屋があり、警備兵が2名常駐している。
「おーぉ、デカい建物。何か造りが違くないですか?」
「見て、カティアちゃん、屋根の飾りの所に……弓兵みたいな人がいるんだけど」
「ポンちゃん見るにゃ! ひろい庭ニャ! あの像はなにやってんにゃ?」
「わぁ――――、こんな場所、故郷にはないね……」
カティア、フィフィ、イア、パポンの感想はそれぞれ違っているが、目の前にある建物が殊更厳重に警備されているのは理解している。
「そうだろうな……、こうやって国家にとって重要な事を扱う場所は厳重に警備されているのが普通だろうなぁ~」
感慨深く告げるジョーは、そのまま中に入ろうとした。
その前に警備兵が立ち塞がり「いきなり失礼だが、施設のご利用か?」と尋ねてくる。
「そうだが? そうしないとこの場所に来ないだろ?」と返すジョー。
「それだったら、あそこで武器類を預けてもらう事になっている、短剣や暗器、攻撃性の道具、護身用の物もすべてだ。もし隠し持っていた場合こちらも強い手段に出る事になるが?」
小屋を指さして指示をする警備兵。
脅しともいえる言い方にジョーは納得しながら失念していた事を思い出した。
国家間で重要なカネの取引所に武器をもって侵入する愚かさを、当然、安全管理の元に判断すべき内容だった。
ジョーはクルリと向きを変え、弟子達に告げる。
「お前たち、剣や武器の類は外しように……それにしても面倒だな」
ジョーは愚痴をこぼす。
「ちょっといいかな? そこの人、敷地内に武器の持ち込みは禁止という認識だという事だが、それだったら外で武器を持って待っていても問題ないという事か?」
ニコが警備兵に質問をする。
「それだったら……規則上問題ありません」と、ハッキリ答える警備兵。
「よし、なら、私がみんなの武器を預かっておくから両替してくればいい」
「いいのかよ、ニコ爺?」
「まかせておけ、預ける手間も無くなるだろう。そっちの方がいい」
ニコは笑顔で答えた。
「《どうしたのぉ~?》」
プミプミと手を繋ぎながらゾゾロはニコの顔を見上げる。
「《私は待っているから、先に行きなさい》」
ニコが返事をすると「《じゃあ、ボクもまってる!》」、「《あたちもぉ~》」とゾゾロとプミプミは答えを返した。
元気よく尻尾をふって嬉しそうにニコを見つめる。
「《いいのか? 一緒に入らなくて》」
「《べつにいいよぉ~》」
「《あとではいる!》」
「《そうかぁ~》」
ニコはゾゾロとプミプミの答えにニコっと笑った。
「それじゃあ、俺たちは先に入って用事を済ませておく、準備開始! 30秒で支度しな!」
ジョーは装備していた短剣と長剣を外していった。
――時間経過。
「《よい子で待ってんにゃ!》」
手を振っているゾゾロとプミプミにイアは応える。
こうして、ジョー達は両替をする国家機関の中に入って行った。
両替屋は、貨幣経済の最も重要な位置にいる商人ですね。
日本にもかなり前からあったものです。
カネを持つ者は汚いとか色々蔑まれた時代もありました。ユダヤ人の迫害もそのような関連があるのですが詳しく話しません。長くなるからです(ネットや本で調べよう)
現在の紙幣でも、その損傷割合に応じて銀行で替えてくれると記憶しています。真っ二つに割れても価値でも大丈夫で3分の2を基準として全額交換してくれるという話だったと思います(記憶違いがある)のでそのような場合には銀行に行こう!




