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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第7章;獣人国に行くよ
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再戦3

「まてッまてまてまてぇーい」

 レットブローは木々の間を抜けるが倒木などはお構いなしに直線で壊しにかかる。

 嬉々とした声が雑木林の中を響いた。


(待つか、バカ)

 木々の上をとび跳ねながらジョーは心の中でツッコミを入れる。


(――しかし、奴は元気だな)

 前回の対峙の時、微かに感じだ焦りが今日は無い。

 睡眠と食事をとって完全な健康体なのだろうと考える。

 心に余裕すらある、彼の行動を目で追い。その後ろからつかず離れずの距離をおいたミック達の姿を確認したジョーは微かに笑みを浮かべた。


(ここまでは順調だな)

 ジョーがそう思うとグラリと木々が揺れた。

 レットブローが根元から抉って木々を倒したのである。


 気安く跳躍すると他の木々に移り、忍者のように側面を走り次の木々に飛び移っていく。

 そのまま地面に降りて一回転、素早く体勢を立て直すとまた走り出した。


 その後ろで地面が跳ね上がる、倒木と落ち葉を舞い散らせレットブローが飛び出してくる。


「待っていたぞ!」


 威勢のよい声と一緒に威圧する巨躯の鎧男はそのままジョーに襲い掛かった。 

 ジョーは後方から襲われたにもかかわらず、一瞥(いちべつ)すると、急停止して、むしろ距離を詰めた。

 懐に潜り込み、彼が攻撃に振り上げた右腕を内側から剣を巻き込むように掴んで、ジョーの左手は首元のとっかかりを抱え、背負い投げた。


「うおッ!」

 浮遊感と景色が逆転するのを感じたレットブローは声を出す。


 そのまま担がれた身体は頭から地面に落ちた。

 変形の甲冑組手術、『首落とし』、戦であれば甲冑の重みで首の骨が砕ける技だ。


 体重と勢いも相まって[ズドンッ]と重い音が響く中、地面に事がってレットブローにジョーは蛇腹刀の切っ先を首元の隙間に突き刺した。

 金属の擦れる音が響くが途中で止まる。


「ダメか……」

 ジョーは通常なら止めとなる攻撃が効かないとわかるや、すぐに森の中を駆けだした。


 上半身を起こすと首を振って確認を終え、すぐにレットブローは起き上がる。


「油断した……クソッ! まてぇ―――!」

 ジョーの後を追って駆けだす。


【ジョー、もう少しだ】

「やっとか……」

 スネークが言うと後方を走るレットブローをチラリと確認しながらジョーは返事をする。

「まあいいや、ここからが本番だ」

 ジョーは足元悪い地形を蛇行しながらレットブローとの鬼ごっこを楽しむ様子だった。


***


 雑木林を抜けた先、開けた場所に突き当たった。

 開けているのに理由がある。出た場所が巨大な渓谷が目の前にあるからだ。

 雨が降り、靄のかかる谷の底はうかがい知れない。

 

 ジョーは後ろの藪から音がするのを確認するとレットブローがゆっくりと歩いてきた。


「逃げ場はないぞ」


「逃げてはいない」


 彼の言葉にジョーはすぐに返答した。


 レットブローが詰め寄って横薙ぎの一撃をジョーは後ろに少し倒れるようにかわす。

 次の攻撃も、次の攻撃も、ジョーはかわしていく。


「そんな気のぬけた攻撃など当たるはずがない」とジョーは挑発する。

 レットブローは瞬間的に怒り上げ、持っている武器を振り上げて真上から叩きつけようとした。


 その瞬間、ジョーも蛇腹刀を持ち直し担ぐように間合いを詰めて蛇腹刀を振りぬく。

 

 気迫の衝突。互いの渾身が――はじけることは無かった。


 ――瞬間だったが、結果は激突音の後に決まる。

 レットブローの攻撃が逸れ、ジョーの蛇腹刀がレットブローの顔面付近で止まっている。


 自分の攻撃の軌道がスルリと変わった事の衝撃で彼は硬直してしまっていた。


「よかったな頑丈な鎧があって、普通だったら頭・…かち割られているぞ」

 ジョーの挑発じみた言葉でレットブローの金縛りにあった体が動き出す。


「ンぐぅ……うぁッ」

 レットブローは威勢のいい言葉で反論をしようとするが声が出なかった。

 それは――ジョーの向ける目線と剣の切っ先から、いままで感じたことが無いような殺気が放出されていたからだ。


 ――気圧された。


 言葉にすれば五文字だが、体感するに恐怖と混濁の感情で張り裂ける。


「お前の事は“理解”した。 もう何もしても勝ち目はない」

 ジョーはそう言い切る。威圧する。


「……俺は――」とレットブローが言い出すと被せるように「――負けていない…か?」と言葉を重ねた。


「お前……自分より弱い奴としか決闘をした事ないだろ?」

 ジョーは停まったレットブローに言葉を浴びせた。


「なにッ!」


「だからガキっぽい決闘なんぞを口にするんだ。男らしく、潔くとか都合のいい言葉を並べて、自分が有利なやり方で決着をつけたがっている奴なんだよ、お前は」


「そんな事は無い!」


「いいや、その頑丈な鎧に守られて危機感もないやり方で攻撃をぶん回し、相手を圧倒してきたろ? 倒して、俺が強いと誇示する。ガキの喧嘩よりもタチが悪い弱い者虐めの頂点がお前だよ」


「正々堂々と――」

「試合をしてきたか? ただ相手を倒してきただけだろ?」

「違う!」

 レットブローは持っている右手の武器を目の前にいるジョーに叩きつけようとする。

 だが、ジョーは背をそらしてかわすと同時に前蹴りをレットブローの腹部に当て、その反動で後方に跳んで回転して立ち上がる。


「ほら、都合の悪い事になると力で訴える」

 そのまま侮蔑するようにジョーは笑った。


「俺は違う!」

 

「違わないね、お前の事を理解した俺からすれば実に稚拙な奴だよ。戦いに幅が無いのは弱い奴としかやってこなかったからだ。『俺は違う』というなら証明してみせろ」

 ジョーは2、3歩後退すると、蛇腹刀を操って自分の周囲に剣旋で円を描いた。


「俺はココを動かない、お前の最高の攻撃で俺を倒して見せろ」

 剣を掲げて、そして切っ先をレットブローに向けて挑発する。



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