再戦1
「ほう、そうか!」と破顔した表情を浮かべるレットブローとの顔を思い出しながらジョーは決闘の準備に向かった。
ラビスもラリーも色々と言っていたがジョーは押し通す。
彼によって潰された時間は取り返せない。しかし、これから未来にかけての時間節約の為にはレッドブローとの決着をつけるのが一番の早道だとジョーは決断し実行したにすぎない。
ジョーは馬車の操縦席に座り戦いの準備を始めた。
「ねぇ、師匠、あの人と戦うの?」
「ボコボコにゃ! やってやるニャ!」
「あの、サイリア師匠との、その結婚の話は……」
弟子たちが準備をしているジョーに話しかける。
「うるさいから、静かに見守るように」
短剣を取り出し装備の状態を確認しながら、いるもの、いらないものを着脱していく。
【ケケッケッ、男女の仲を切り裂くのは“ヤブヘビ”ってもんよ、嫉妬か?】
チャカすようにスネークが話しかけてきた。
「キャー」、「やっぱり」などと黄色い声は無視してジョーは荷台から蛇腹刀を持ち上げる。
革柄といっていいか着脱用意なモノを外し片手に持つとジョーは刀身をよく確認する。
「余計な言葉は言わなくていい、様子はどうだ?」
【なに、絶好調ッ!】
「ひび割れたところは直ってるな?」
【もちろんだ、かすり傷程度だ】
前回の戦いで蛇腹刀は秘かにヒビが入っていた。
スネークの能力のひとつ、というか普通なら鍛冶で鍛え直すが、“生命ある武器”の蛇腹刀の自己修復機能、金属であるが生命宿るので自己修復するという矛盾を超越した機能であるが、レットブローの鎧も直っているので怪我が治る普通の感覚なのだろう。
準備しているジョーの傍にちょこんとサイリアが戻ってきて横に座った。
「あ、あのさ、その……ありがとね」と、ぎこちなくサイリアは告げる。
「何に対してだ?」
「その、困っていたから、助けてくれたでしょ?」
「別に、アイツがこのままついて来ると困るから、助けただけだ」
ムッとするサイリア。
「あっそ!……フンッ!」
そのままそっぽを向いてしまった。
【怒るなってサイリア。 そいつが素直に言う訳ないだろ?】
スネークは意地汚く笑う。
「ほんとう?」
サイリアが顔を覗き込むと今度はジョーがそっぽを向いた。
「どうなのよ?」
サイリアが問う。
「……別に……」
素っ気ない返事のジョー。
【ケケケケケケッ】
スネークの笑い声が刀から聞こえた。
「それはそうと……」
ジョーは振りかえる。
「――アレとは本当に結婚を考えて無いな?」
親指を立て、遠くで嬉しそうに素振りをしているレットブローを指さして質問した。
「当たり前! 出来ないでしょ!」
「後悔は?」
「無いッ」
サイリアがそう言うとジョーはニタリを笑った。
そして――耳元で囁く。
目を見開くサイリア。驚いた表情のまま固まった。
***
蛇腹刀を携え、ジョーはレットブローに「あっちでやるぞ」と提案する。
立ち合い人はサイリア、ラビス、グレー、ミック、ラリー、そして興味本位のカティア、フィフィ、イアにパポンだ。
ちなみに、ゾゾロとプミプミはニコとアンジー、ミレイが面倒を見ている。(危険な為)
決戦の場は雑木林、決して手入れはされていない場所で静かに対峙する。
うっすらとした雨のなか、靄のかかる程度にぼやけて見える視界。
互いの距離は間合い程度の距離を保っている。
蛇腹刀を肩にかけ、ジョーは不意に質問をした。
「はじめる前に訊いておきたい、俺たちの後をどうやって追跡た?」
「勘だ!」
快活な声での答え。
「そうか……」
ジョーが蛇腹刀を構え、戦う雰囲気を見せる。
迷いは無くなった、普通に考えてジョーとレットブローがこの場所で出会う確率は非常に少ない、だから他の方法、よもや非常に高度な追跡術を使用して追ってきたと心配したがその心配は彼の言葉で取り払われた。
むしろ勘なら仕方ないと思えるほどに。
「それじゃあ、楽しもう」
レットブローの甲冑から兜が生き物のように動き顔を覆う。
覆われる前の動きは戦闘する高揚で笑みを見せていた。
張り詰める空気、静寂と沈黙が続く。
ジョーが「ふぅ――――……」と深い息を吐いた。
「しゃぁッ!」
レットブローが駆けだして武器を横薙ぎ。
威圧感のある衝撃が襲う。
近くにあった木々に接触、巻き込むようにそのままジョーの元に向かう。
衝突音、破裂音が段階的に響いた。
静かに――ジョーは他の木の幹に足をつける。
地面に水平でなく垂直な姿勢のまま眼下にレットブローの攻撃後を見据えた。
(やっぱり、前回よりも時間を置いているから魔力量が回復、増大してるな。だけど……攻撃が単調なのは変わらないか……)
そのように冷たい目線をレットブローに向けたままでいると彼が視線に気が付いてジョーがいる木々を根本から薙ぎ払った。
落下するジョー、きりもみ式に身体を捻って、蛇腹刀を鞭打のように打ち据える。
巻くような斬撃がレットブローの頭に振ってくるのを彼は片手で防いだ。
常人なら頭をひしゃげるほどの圧撃だが余裕のようだ。
地面に着地するジョーにレットブローが襲い掛かる。
身体を低くして避けるジョー、剣を撒いて地面を切り裂き持ち上げる。
舞う水飛沫と泥の飛沫、小枝や葉っぱが瞬時にジョーを隠した。
振りかぶりレットブローは周囲を薙ぎ払う。
風圧だけで視界を切り開こうとする。
追う、レットブロー。ジョーを追いかけ追撃せよと身体を動かした。
木の葉のようにブレるジョーの身体。
「また珍妙な技か!」
前回の対戦で見せた身体をすり抜ける奇妙な術を彼は思い出した。
そして――それに対応する技も。
「ハハハッ」
そう笑いながら乱れ打ちにして打撃の壁を創った。
しかし、その後を見てもジョーは居ない。遠く離れた所で静かに剣を構えていた。
「やはり決闘は楽しい、血が俺の中で喜んでいるようだ」
【やってやれ親友よ】
彼は好戦的に走り出す。
何をいいますか、蛇腹刀の新機能?
多くの方が思いますが生命があれば新陳代謝もあります。
傷がなおるのも生命ある証。
我々の皮膚が日々入れ替わっているように蛇も脱皮します。何もオカシイ事はありません。




