バカと天才は紙一重と言うが……1
「あんた! バカぁなのッ!」
ラビスは大声を上げて非難した。
彼女がこの場に入るのは先ほどに続いて2回目だ。
レッドブローの告白から間を置かず、不穏な空気を察した仲間が再び集合する形をとった。
集まった仲間は当初事態を飲み込めず、困惑するがレッドブローの言葉とジョーの話により事態を把握、そして詰め寄った形だ。
「そうだ、てめぇッ! 何寝ぼけて 『結婚しよう』と言ってんだ!」
ラリーも剣幕がすごい。
「バカではない! 本気だ!」
レットブローも反論するというか只の大声で反撃した。
「告白の決め手は何だこのヤロー! 胸か! 尻か!」
「サイリアのオーパイッは私んだッ!」
ラリーとラビスも怒鳴り合う。適当な事を大声で。
「そんな不純ではないッ! ビビッときちまったんだよ……」
レットブローが感慨深くサイリアにホレた原因を言う。
「なに? ビビッと? 直感か?」
ラリーは彼の言葉に反応する。
「あんた、言っておくけど、男女の第一印象の直感なんて大抵外れているからね」
険しい表情のままラビスは辛らつに告げた。
「ちがう……、あの感覚……体が痺れるように震えて、激しく頭が割れる衝撃に襲われ、そして目の前にマブい女が立っていたんだ。間違いねぇ……運命に出会っちまったんだ」
レットブローは空を見上げ自分の運命に出会った――そう確信した顔をしていた。
――思い返してみれば、あの時である――彼とサイリアが出会ったのは。
暴走するレットブローにサイリアが戦闘中に【墜雷】の魔術を行使、巨大な雷が直撃(魔術的に)、さらに往復の電撃2回目で痺れるどころか感電死の威力を叩き込んだ魔術。
その後――彼は正気を取り戻し“サイリア”を見た。
レットブローの中でそれが“運命の事実”だ。
彼の幸運は凡人なら即死級の電撃を浴びても平気な鎧とその頑丈な体で“勘違い”をして、サイリアにとって不幸なのは魔術を放った直後の“発見者”になった事だろう。
もし、初めに見たのがラビスであったなら彼女に告白し、ミレイであったなら彼女に告白した程度の運命である。
結果的、因果的、運命的な不幸によりサイリアがレットブローに見初められた経緯の説明は以上となる。
そして、サイリアは荷台に籠り、操縦席のジョーはニコ、アンジー、ミック、ミレイを囲って緊急の円環会合を開いていた。
「――つまり、奴はサイリアと結婚したいという気持ちとジョーと再戦したいという気持ちから再び現れたという事でいいのか?」
「おおむね」
「それれもヤバい奴だな、出会って直ぐに告白なんて頭がイカレてる。ほとんど一瞬で好きになったって事だよ」
「それは置いておいて、どうする? 彼をこの場に留めておくいい手はあるか?」
「理解できない生物だからな……」
「最悪、着いて来るとか言いそうだよな」
「あ~、そうだね。あれについて来られると迷惑だよ。、ミレイもそう思う?」
ミレイのジェスチャー。
「その前に彼とは一度この場で待つと決まったはずだ。それで押し通せないか?」
「理解ある常識人ならそれでもいいけど、アレは理解できない。俺たちとは常識が違う、理解をしようと考えただけで無駄になると思う」
ジョーの言葉に周りを囲っている者が頷いた。
「それで……サイリアの方はどうなんだい?」
アンジーが心配そうに馬車の荷台の方を確認する。
幌の出入り口を完全に閉じで籠城中だ。
「あ~~、やっぱり理解が追い付かないのか停止してる」
ジョーは困ったように説明した。
「それじゃあダメだね」とアンジーは馬車の操作台に足をかけてヒョイッと駆け上り荷台の中に入った。
「おい、ちょっと!」ジョーの言葉も意に介さずにアンジーは荷台の奥に丸まってるサイリアの近づいた。
イアもカティアもフィフィもパポンも居たが、アンジーの精悍な顔を見るなり自然と場所を開けた。
「サイリア!」
とアンジーは後ろから声をかける。
「ひゃい!」サイリアは驚いた声を出した。そして驚きつつ後ろを見る。
顔は赤いまま、眼も動揺しているかのよういせわしく動いて視点があっていない。
そんな状態のサイリアにアンジーは両手でパチンと頬を叩いて真っ直ぐに彼女を見た。
痛みと驚きで視点をアンジーに合わせるサリイア。
「しっかりしなッ! 嫌なら嫌と言えばいいし、好きなら承諾しなさい!」とアンジーはそのまま強い視線を向けた。
ほんの少しの沈黙と間。
サイリアの瞳に力がかえる。
それを感じたアンジーはムニュッと力を込めてサイリアを強制変顔状態にした。
「わかった?」
という彼女の問いにサイリアは頷く。
「よし、行くよ!」と手を放しサイリアを手招きするアンジー。
サイリアはパンパンと顔を叩いて自ら気合を入れ、そして立ち上がった。
A:サリイアを好きになった理由。
意識が戻って第一発見者だからです。
吊り橋効果ならぬ落雷効果です。
うん、新しい出会いの仕方ですね。




