告白
なんやかんやあって、ジョーと仲間と言い争う事になったレッドブローはニコの提案でお互いの話を聞く事、つまり調停の場に移行していた。
年の功という裁定だが、このままでは埒が明かない上に時間ばかり喰う事になるので互いに受け入れる。
「それであんたはどうしたいのよ?」
ラビスが高圧的にレッドブローに迫った。
「もちろん、こいつとの再戦だ。色々とケチがついては俺も引き下がれん」
レットブローは武器を下ろし仁王立ちのまま力強く頷く。
「ジョーとしてはどうなの? やるの、やらないの?」
今度はラビスが尋ねた。
「俺としては終わった事だ。再戦の約束も無いし、そんなのした覚えも無い、やる意味も無いし得るモノも無い不毛な戦いはごめんだ。これは何度も言っている」
「あんたってそういう所あるけど……譲歩は無いわけね」
「ない!」
ラビスの返事に断言するジョー。
「ちょっと待て! 戦いの中で感じたであろう! あの熱意を! 漢の約束を!」
熱く言うレッドブロー。
「約束の効力は口約束でも出来るが出来るだけ書面での約束を優先するという事がほとんどの国の原則になる。そうしなければ避けない争いが起こるからな」
冷めたものいいで返すジョー。
「約束とは魂でするものだッ!」
「書面での約束を希望するよ」
鼻息荒いレッドブローにジョーは深くため息を吐いた。
「それじゃあ聞くが、お前のいう漢の約束だが、それはあくまでもお前から俺に対する要望だ。その前にオレが他の重要な約束をしていた場合、約束の“優先順位”はどうなる?」
「優先順位?」
「そう、俺たちはお前のいう『漢の約束』をする以前に重要な約束をしてしまっている。お前のいう魂の約束だ」
「な、なんだと」
レッドブローは衝撃を受けた顔をしていた。
周りにいる者は(バカだな)と思いながら口には出さない。
「…それはどんなだ!」
「そこにいる、子供たちを獣人国まで連れていくという“漢の約束”(=任務)だ」
ジョーは指をさしながら馬車の陰から覗いている可愛らしい物体×4を指さしていく。
「彼女達を無事に故郷に送り届ける約束をしてしまっている、それもかなり前にだッ! 俺たちは無事に親御さんの元に彼女達を届けると“書面”でも“魂(=カネ)”でも誓ってしまった。そう考えれば、お前の言う『漢の約束』とやらは俺たちの約束が終わるまで“待つ”べきではないのか? 自分の我欲を通す為に無理やり約束に割り込む“汚いやり方”を選択するならいいが先に約束があるならソレを優先すべきでは無いのか?」
「ぐぬぬぬッ」
顔を赤くしながら言葉を噤むレットブロー。
彼は漢の約束を神聖視している。そして、その事をこれまでのやり取りで察したジョーは利用し始めた。
彼は考えて――。
「たしかにッ!」と納得した。
ジョーは(はい、バカ確定)と破顔した笑みを浮かべた。
「そうだろ? それだから俺たちの約束が終わるまで『ここで待っていてくれないか?』」
ジョーもまさかの提案。
しかし、レットブローは「わかった!」と言って快諾した。
彼はここで何日も待っていなくてはいけない、食料も寝床もその後の予定は何もたってはいない。しかし、疑問の余地を挟む事も無い快諾。
まさに漢らしい決断(?)である。
「そうか、では俺たちは先に依頼を終えるから……頑張ってくれ」と、言い残してジョーは去ろうとする。
しかし、その心内は(まさか成功するとは)と複雑な心境であった。
馬車に乗るジョー、そのまま出立の準備を終え早速出ようとしたら――。
「待てぇぇッい!」
快活な声が響く。
(さすがに気が付いたか?)
無理筋である提案に疑問の余地の入りまくる約束。
このまま出発できるなど思って無かったがレットブローもオカシイと思ったのかズンズンとジョー達の馬車に近寄ってくる。
「……どうした?」
嫌そうにジョーはレッドブローを見た。
「もう1つの用事を思い出した!」と彼は告げる。
「用事? 俺に?」
ジョーは困惑する。彼と他に約束などない。
もう1つとは何か考える。
「いいや、そっちの女性にだ」
レッドブローはジョーを挟んで奥のサイリアの方を指さす。
「わたし?」
ジョー以上に彼と接点のないサリイアは困惑する。
何かに言われたわけでも無い上に約束もない。
「うん!」
キリっとした顔で返事をするレッドブロー。
何故かサイリアの顔を凝視する。
動揺するサイリア、睨まれるような目線を向けられたからだ。
そんなサイリアの状態を気にする事なく、自然と片膝をついて両手を広げた。
真っ直ぐに彼女を見つめ、唇が動く。
「オレと……結婚しよう」
レッドブローが言った後に静寂があった。
時が止まったかのように全てが動かなくなるほどの静かな時間。
実際に空は動いているし雨が止んだわけでもないが、精神的な衝撃の間は言われたサイリアを沈黙と凍結の状態異常を起こしている。
彼女の混乱を他所に――。
「「きゃあぁぁぁぁ――――――ッ!!」」と興奮気味にカティアとフィフィは叫んだ。
人生の内で初めて生で求婚の現場に出くわした高揚で自然と声がでる。
しかし、サイリアは沈黙という凍結を続ける、先ほどから驚いた表情と体勢が変わっていない彼女が聞こえていないと判断したレッドブローは、再度、姿勢を直し。
「ここで出会った事は運命。さぁ、結婚しよう!」と――言葉を繰り返した。
「き、聞こえてる! 聞こえてるから!」とサイリアの硬直はやっと解けた。
だが、頭が追い付かない。
アワアワと顔を真っ赤にして硬直から混乱に状態移行する。
再び、後方から喚声をあげるカティアとフィフィ、興味深そうに見つめるイア、ただ、物陰から怪しそうに見ていたパポン。
そんな状態のすべてに挟まれた位置にいるジョーは思った。
(なんだコイツぅぅぅ―――――ッッ!!!)
スムーズにいくと思った矢先に予想外の方向に向かう。レットブローという厄災を呪うしかなかった。
なぜレッドブローは告白をしたか、その理由を考えてみよう。
ものすごく適当な理由です。




