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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第6章;獣人国に行きたい?
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博引旁証2

「師匠、それっておかしくないですか?」

 カティアは自分の住んでいるブリューシュ王国視点から疑問が湧いた。


「何がだ?」

 馬車を操作しながら素っ気なくジョーは返事をする。


「この国だと、奴隷は禁止ですよね。奴隷に出来ないじゃないですか?」

「あぁ、その話か……確かに、奴隷を“ 所持”して“使役”する事は禁止されているが、他国に“売りに行く”事は禁止されてないんだよ」

「それって本当ですか!」

 カティアは驚いているが――ジョーは(この国の貴族の関係者の1人だろ!)と言いたい。


「あぁ、本当だよ。“ある理由”でね」

「ある理由って?」

「今回のように悪さをした者を捕らえる。その先を考えればわかる事だ」

「その先?」

「そう、悪いやつを捕らえて、国はどうしたいか考えてみな」

 そう言われてカティア達は考える。


「うーーん、捕らえて……」、「そのままだと悪い事をするでしょ」、「にゃー……ポンちゃんはどうにゃ?」、「国として考えると……」

 各々がそれぞれ考えだした。


「そうか!」

 カティアは閃いた。そして「――更生させて、国の為に働いてもらう!」と自信満々に言った。


「……考えが浅い。平和ボケの考えだ」とジョーはひと言で片付ける。


「なんでですか! 良い案でしょ!」

 カティアは食って掛かった。自分の考えが悪い事だと思ってはいないからだ。

 ジョーはため息を吐いて「話の流れで分かると思ったんだが」と愚痴をこぼす。


「師匠、ししょう、どういう落胆ですか!」と可愛らしく怒り続ける彼女にジョーは言った。


「盗賊稼業にも2種類ある。国が荒れて食っていけなくなり“仕方なく”始める者と、他人に迷惑をかける事を前提に悪事を働く奴だ。この国は荒れてもいないし、戦時中でもない、よって奴らは後者を意味する盗賊になる。さて、そんな盗賊さんたちは果たして更生させる事が出来るでしょうか?」

 と――カティアに問う。

「う――ん……時間をかければ……」

 彼女は歯切れ悪く答えた。


「それじゃあ、どのくらいだ? 何日、何年、何十年か?」

「えっと……結構長く?」

「そうだな、自ら進んで悪事を働く奴が直ぐに更生できるわけでは無い。時間がかかるだろう。さて、そこで問題だ。その間に、その世話は誰がする?」


「世話ですか?」

 フィフィが疑問に思って聞いた。

「そうだ。捕らえられている奴に飯を食わせなくてはならないし、監視する奴も必要だろう。その為にかなりの額のおカネがかかるという事だ。つまりだ……国としては時間もかかって更生するかもどうかもわからない奴におカネと時間と労力をとられる訳だよ。北方にある大国家のように民主主導で決めているような国にはカネも労力もある所からすると出来るかもしれないが、中小国家群のように余裕のない所からすると囚人が増えるのは困るわけだ。ここまでは理解できるか?」

 振り返り弟子たちに確認を求める。

 カティア達は頷いた。


「よろしい、では、更生には時間も金も労力かかる。そんな事をするならば、貧民街で施しをした方が国益としてはマシになる。なら、捕らえら囚人をどうするか。答えは簡単だ。見せしめとして処分(=処刑)するか、奴隷として売った方が良いと判断するだろう。だから奴隷を売る事は違法にはしていない、そうしないと国が困るからだ」


「ムムムムッ……、しかし、国が困るのと奴隷に落とすのは違う気がしますが……」

 カティアは悩みながらボソッと呟く。


「いい視点に気が付いたな、カティア」

 ジョーは素直に褒める。

「えへへへッ……」

 彼女は気持ちよく破顔した。


「なぜ、奴隷に落とすのか、なぜ処分をするのか……、その理由は1つ。この件に区切りをつける為だ」


「区切りですか?」

 カティアは不思議そうな顔で迎えると、イアは「何にゃ?」とポンちゃんに訊いていた。


「今回の件は、被害にあった住民や近隣の村まで襲われている、そうした者達にも厳しい処置を見せて怒りや憤りを抑える事も目的としている。彼らの望みは厳罰だ、親類や恋人を殺された恨みっていうのは根深い問題だからだ。そんな彼ら対して囚人を更生させ、国の為に尽くせば無罪だなんて言えるのか? 脅かされた村人は許せるのか? カティアやフィフィが大切な人を失ったら許せるか?」


 馬を操作しながら寂しそうな表情で前を向きジョーは後ろの弟子に問いかける。

 その様子を黙って聞いていたサイリアは横からそっと見ていた。


 ジョーに問われた弟子達は再度押し黙る。

 考えてみても理不尽な事だと彼女達も感じ始めた。


「……恨みって言うのは国法を乗り越える事がある。 被害にあった者達をなだめる為にも領主は厳しい処置を見せなければならない。それが治める器ってものだ。俺の国じゃ“五業五徳”を持つ者が統治者の器って言われている」


「ごぎょうごとく?」

 カティアは聞き返した。 

「ごぎゅうごどくって何にゃ?」

 イアも疑問のようだ。


「そうだな……簡単に言ってしまえば『悪い事を5つ、良い事を5つ』出来る者って事だな」


「師匠……良い事だけ出来ればいいんじゃないんですか?」とカティアは疑問を口にする。

 フィフィも同様のようだ。


「にゃ!」

 その間にイアは割って入る。

「よい事って何にゃ? わるい事って何にゃ? おしえてニャ!」

 イアに言われて、ジョーは少し間を置いた。

「そうだな……智勇……いや、統治者は、勇気がある事、頭がいい事、優しい事、魅力がある事、約束を守る事などが“五徳”と言われている。要するに人に好かれる事って事だ。逆に“五業”とは、臆病である事、ずる賢い事、残忍である事、疑り深い事、話を聞かない事を言う。要は嫌われる人って事だ」


「にゃ? 何でニャ?」

 首を捻るイア。

「師匠! やっぱり人に好かれる事だけでいいと思います」

 カティアが当然を口にする。

「だから、その両方が必要なんだよ。統治者っていうのは」

 呆れるようにジョーは答えた。


 五徳というのは古来より孫子などで出てくる 仁、義、礼、智、信などが有名ですが、ガス台などで見る調理器具ではありません。

 ちなみに五業の部分は創作ですので意味ないですが、陰陽説では逆の事を尊ぶというか、必要だったという考えからの付け加えです。

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