露見
「にゃぁああああ――ん! 帰ってきたニャ! どうだったかニャ?!」
と――開口一番にイアは元気よく聞いてきた。
かなりのハイテンションである。尻尾と耳が良く動いていた。
「心配するな、ポンちゃんなら見つけて保護したよ」とジョーは応える。
「にゃったニャッ!! どこにゃ? どこにいるニャ?!」
大声で喜び、キョロキョロと辺りを見回し、それらしい輪郭を探すイア。
「ここにはいない、治療と事情の確認の為に領主に保護されている」
「にゃッ! それじゃあスグにあいたいニャ! 行くニャ!」
「落ち着け、落ち着け、会う前に色々としないといけないだろ? 会いたいのはわかるが日が暮れそうだし、向こうにだって都合があるかもしれない。一日くらい待ってやれ」
「にゃッ!……わかったにゃ」
元気よく振っていた尻尾が急に振られなくなり落ち込んだ様子だ。
「師匠、帰ってたのー! よかったッ!」と元気な様子でカティア、フィフィ、それと、ヘレンと一緒に眠たそうにしているゾゾロとプミプミは彼女に優しく手を繋がれて部屋に入ってきた。
一通りの挨拶を済ませると、イアに話した事をカティアとフィフィにも伝えてあげる。
ジョーは「そっちもちゃんとやったのか?」と改めて問うと「もちろんです、ゾゾロちゃんとプミプミちゃんの世話はちゃんとやりました。お昼寝させたり、歯を磨かせたり、身体を拭いたり、遊んだり、本当に色々と苦労しましたよ」とカティアは元気よく返答する。
(こいつも……ちゃんとやっているようだな)と――ジョーは弟子の成長を感じ取る。
振り回された事もあったけど、結果として面倒を見てくれて正解だったと思い始めた時、
ゾゾロが尻尾を振りながらキラキラした瞳でジョーの足部の服を掴んだ。
「どうしたゾゾロ、イイ子にしていたか?」と優しく頭をなでる。
(・∀・) ウンッ! という風に頷いて、ゾゾロは「いいこ~? いいこぉだぁいぞう!」と言う風に発言して、ジョーから離れるとその前で元気よく踊り出した。
(んッ?)
ジョーは不思議な踊りだが規則性があり、それでいて手、足、お尻部分を振るい、回転し、飛び跳ね、全身運動に近いコミカルな動きに違和感を覚える。さらに口ずさむ歌は単調であるが乗りやすい音楽、気持ちよさそうに踊っている。
自分で考えたにしては完成度もテンポも格段に良かった。
さらに不思議なのはそれに合わせて同じように踊っているプミプミの存在である。
合わせるにしても、即興のゾゾロに合わせた踊りは出来ないはず。
しかし、動きに違いはあれど、まるで習ったかのように踊っている。
――違和感。圧倒的な違和感がその踊りにはあった。
「ゾゾロは踊りが上手いなぁ~」と表情は固定してジョーは彼を誉めておく。
「『なぁ、ゾゾロ? おいしいモノを食べたか?』」と獣人語で簡単に訊いた。
ゾゾロは踊りを止めて――前のめりになって――「『たべた! たべた! こぉー~なね、でっかいお肉とか、ぼうにささったお肉とか、それとねぇ、あとはぁ~あまいヤツ、ぶるぶるんしてるヤツで、あまいヤツ、それとねぇ、なんだっけ? しろくてとにかくあまいの!』」と元気よく答える。
「『そうか、そうか、よかったなぁ~。 “どこ”で食べた?』」と優しく聞いた。
ゾゾロはしばらく考えた後――口を押えて「『……いっちゃいけないって』」と答えた。
「『そうか、”いけない”…か。誰かに言われたのか?』」
「『うん……それもいけないって』」
キラキラした目で答えるゾゾロ。
やましさはどこにも無い。
「『わかった、あっち行っておかし食べといで』」とジョーは笑みを向けてゾゾロに言うと彼は頷いて「おかし~、おかし~」と騒いでプミプミを連れて行ってしまった。
しばし、ジョーはニコニコした後――若干ドスの効いた声で「カティア、フィフィ、イア! ちょっとこっちに来なさい!」と急に言い出した。
ニコやサイリア、それにアンジー達と雑談をしていたカティアは驚きながら振り向いた。
ジョーから発生られる剣呑とした雰囲気に圧せられながらもオズオズと前に出ていく。
「……なんでしょうか? 師匠?」
困惑しながらもカティアは尋ねた。
椅子に座っているジョーが、いつもと違う深刻そうな表情だから気が引けている。
「カティア、フィフィ、イア。 俺に何か言うべきことは無いのか?」
ジョーがそう尋ねた瞬間にカティアとフィフィは間が開き、目を逸らした。イアは「にゃー」と小さく言いながら下をむいて顔を逸らした。
「な、いです」
カティアは答える。
「フィフィは?」
「ないです……」
「イアはどうだ?」
「……にゃいにゃぁ~」と考えながら弱々しく答えた。
「そうか……お前たちは俺の言いつけを守り……例えば、この屋敷の外に出たり、遊んだり、美味しいモノを食べに行った――という事は無いという事か?」
と――3名に堂々と問いかける。
ジョーに問われ、泳ぐ3人の目、不安な表情を浮かべた。
「返事は?」と威圧感たっぷりにジョーは言う。
「な、い……です」とカティアは代表して答える。
「そうか……フィフィもイアも同様の答えでいいか?」
ジョーが2人に問うと迷いながらもコクリと頷く。
「そうかぁ~~」とジョーは言いながら、深く考え込み。その後、椅子から立ち上がってユーイとビルビスの座っている席を向いた。
「申し訳ないがビルビスさん、隣の部屋を借りたいと思いますがよろしいでしょうか?」
簡潔に用事を述べるジョーに「どうぞ…」と、ビルビスは答えるしかなかった。
笑みを浮かべていたが確実に怒気孕んだ表情だったからだ。
「カティア、フィフィ、イア! 俺についてこいッ!」と厳しく命令をする。
ゾゾロは何を言って踊ったか。
それは正式名称『よい子の為の体にとってもよい動かし方第1 略称いい子体操』という児童向け(3歳から6歳まで)のお兄さんやお姉さんとギリギリ不気味ではない着ぐるみマスコットと一緒に踊る体操の事。“児童劇”という子供向けの民間支援劇(商業主導、領主主導など)公演の一部。
――話の都合上省略させて頂きました。




