魔剣対魔装 13
サイリアの目の前で弾けるジョーとレッドブロー。
レッドブロー遠くに、そしてジョーは――森の奥まで飛ばされていく。枝の折れる音、そして大きな衝撃音が――大きく響いた。
「ジョォ―――――――――――――――――――――――!!!!」とサイリアは絶叫する。
レッドブローより明らかに大きな力で弾け飛んだジョーの身の安否を心配するのは当然の事だが、守ってもらったという気持ちの方が大きい。
感謝より、率直な気持ちが声に出たが、追いかけるより前に「サイリア! 急いでその場を離れな!」とアンジーの声が硬直したサイリアを解し、我に返らせる。
レッドブローはジョーほど弾け飛んでないが、激突ちてんからかなり後方に地面を数度打ちつけられていた。
しかし、すぐに起き上がりそうな気配がある。
後方に下がり体勢を立て直す。――論理的戦術思考によりその選択肢になる。
サイリアは悔しそうな表情で再び走り出した。
せっかくジョーがくれた時間を無駄にしない為に。
***
薄暗く、木漏れ日もまだらな森林の中で、1つの木々が折れ、その幹の根本にジョーは動かないでいた。
【まったく、腕がなまったんじゃないか? アイツの攻撃に当たるなんて】とスネークが声を掛ける。
「……直撃じゃねぇよ」とスネークの声にジョーは反論する。
レッドブローとの対峙の瞬間、蛇腹刀を盾にして直撃は避けていたのだ。
【だが、吹っ飛ばされた。それに見て見ろ、オレの体を】と――。そこに現れたのはひび割れた刀身のスネークがあった。
「問題ないだろ?」
【あるわ! たわけ! 昔だったらこんな程度のやわい攻撃を喰らわなかった筈だ! 腕が鈍ったと素直に認めろ】
「いやいや、全然平気だし、なにより、ここまで俺の予想通りだし!」
多少早口になりながら否定する。
【減らず口を……意地っぱりが】とスネークの呆れたような口調が聞こえた。
「いや、8割……5割の力でやってやるよ」
ジョーはそう言って顔を向けると両目が怪しく鈍く光った。
***
「オォ――――――――――――――――――――――――――――ォッ!!!!!!」
大きな咆哮を上げてレッドブローは起き上がる。
鼻息あらく武器を振り回し暴れ出した。
その様子をサイリアは離れた場所から見つめ、そしてゆっくりと目を閉じ深呼吸する。
「……できる。できるから……」
それからすぐに目を開き、杖を強く握り後ろを振り返った。
「それで…これからニコとかミック達を呼んで戦力を整える?」、「その前に兵隊の陣形も整ったから、みんなで囲った方が良いと思うよ」、「安全圏確保したいけど……」――などとアンジー、ラビスの話、それと焦っている様子のミレイがいる。
「ね、ねぇ!」
サイリアは緊張しながらもアンジー達に声をかけた。
「どうしたんだい?」とアンジーは振りかえる。
「あ、あのね。少しの間でいいからアイツの動きを止められないかな?」
「それは無意味さ、動きを縛って攻撃しても効果は殆どなかった、捕まえてもすぐに壊されて逃げるだろうね」
「うん、だから魔術でやろうと思って……」とサイリアは言うがアンジーは目を見開いて驚く。
「ちょっとサイリア、ムリだって! いいッ! アイツには炎系魔術とか、土系魔術でも動きを止められなかったの知ってるでしょ? 固めても剥ぎ取るし、縛っても引きちぎっていく奴だよ。魔術全般は効かないって事よ!」
ラビスは強くサイリアの意見に反対を出した。
「うん、わかってるよラビス……」
「何か……思いついた事でもあるのかい?」
不安そうにしているサイリアにアンジーは話しかけた。
「うん……表面上の攻撃はあの鎧の硬さに負けるけど、威力を“貫通”させればいいと思うの、中の人には効果があると思う」
「それって風魔術の“衝撃”系統の事かい?」とアンジーは聞き直す。
その問いにサイリアは首を2回振った。
「たぶんそれじゃあ効果は薄いと思う。私がやろうとしているのは“天候魔術系統”の雷魔術」
「出来るのかい!」とアンジーは驚いた声をだした。
「出来るけど……成功は2回に1回程度。実践だと初めてだから……」と答えた。
サイリアの言う雷魔術は複合魔術の部類に位置する高難易度の魔術の事である。
系統の違う魔術を同時にまたは連続して使う事を複合魔術と言う。
無系統や単一系統の魔術よりも発動が難しいが威力は高めという特性はあるものの発動まで時間がかかるという弱点もある。
さらに術者の力量次第だが、サイリアでは成功率も高くいとは言えず、実践での投入の機会が初めてなのは発動までの時間がかかる事と扱いが難しく直撃できないという問題点も含まれる。
だから――サイリアの主張はほとんど失敗する案であると思えたし、アンジーも同意見であった。
なにより確実に効くという確証すらないのだから。
「…………わかった、やろう」とアンジーは考えとは裏腹な言葉で同意する。
「ねぇさんッ! いいの!」とラビスも驚く。
「どっちにしろ私たちに出来る事は少ないんだよ。本当はアイツが狂っている内に素早く撤退したいけど仲間を見捨てる事も出来ないし、少しでも可能性があるならやるべきだ。こんな……追い込まれた時にはね」とアンジーは諭すように告げる。
それを聞いてラビスは黙った。ミレイも大人しく考え込むが反論は無いようだ。
「それでサイリア……私たちにどうして欲しいんだい?」
アンジーは目を据えてサイリアに問う。




