魔剣 対 魔装 11
「うッ……」
ラビスは少し足元をふらつかせる。
そして、傍にいるサイリアの肩に寄り掛かった。
「ちょ、ちょっとどうしたの!?」
驚く彼女はラビスの方を振り返った。
「ごめん……気分が悪くって…マナ酔いかも」とか弱い声で返答するラビスの声にサイリアは心配そうな顔を向けた。
《※マナ酔い≒マナ欠乏症。軽症の表現》
ラビスは大規模魔術の行使を行っている、その彼女が魔力欠乏症状になってもおかしくない。
サイリアはラビスの髪を上げて表情を見た。
「大丈夫、私の顔分かる?」とマナ酔いの初期症例で一番出やすい視界狭窄や初期混乱状態を確認する為だ。
少し火照った表情の愁いを帯びた瞳と目が合う。
「うん……わかるよ……。でも、“こうしていい”?」とゆっくりとサイリアのバストに顔を埋める。
その際、小さい声で「デヘッ」と気持ち悪く聞こえた。
「ちょっと!」とサイリアは困惑した声を思わず出した。
「いやー、やっぱヤバいわ、いまちょっと酔ってて混乱かな? 上手く立てないし足元フラフラで、もう、わっけ訳わかんない!――」と言いながら顔をグリグリトと押し付ける。
「――もう!なんて言うの! 真っ暗だけど柔らかい、でも!もっと言えば下に鉄帷子着ない方が良かったかも、あーソコだけ残念だわ」と歓喜の声をラビスは上げ続ける。
「ラビス、止めてよ!」
「聞こえなーい! 私、現在、コンラン中デスよ! まったく分からなーい!」と聞く耳も持たない。
[ゴギンッ!]と突然アンジーが金属製の何かをラビスの頭の上に落とす。
そのままラビスは地面に崩れた。
「正気に戻ったかい? ラビス」とアンジーは声をかけた。
「うん……戻ったよ、だ、い、じょうぶ」と地面にキスをしながらラビスは返事をした。
「それじゃあ、コレ飲みな」と手に持っていた金属の水筒を地面に落とす。
中身は魔力回復薬の原水が入っている。
遠くで――「おいおい、アイツはなにやってんだよ」とジョーは呟いた。
***――閑話休題。
「それじゃあ、これからどうするの?」と道端でお茶をするような感じでサイリアはジョーに尋ねた。
「まずは人員の確認と状況の確認周知。次に賊の遺体を集めて収納、周囲に延焼箇所が無いか確認。最後にある程度復旧して戻る。これが大まかな流れ」とジョーは魔力回復薬の入った水筒を持ったまま説明をした。
「そうじゃなくて……いえ、そうだけども、その前にアレはどうするって話」とオブジェとなった球体状のレッドブロー封印を指さした。
「そのままだな。普通は少しの時間で圧死か窒息死するけど確認とれてないし安全を考えて1刻ほど時間を置いておく、それから回収だな」
「それは、そのさ……殺しちゃうって事?」
言いにくそうにサイリアは問う。
「??? 何言ってんだ? アイツは賊側、俺たちは討伐側だ、立場が違えど着いた側で処理するのはごく自然だし、何よりもこの依頼の邪魔をした奴だぞ。俺たちはこれまで依頼でも魔物を駆除してきたし、いまさら“命の何たるか”を学生の如く討論しあう仲でもあるまい。それにこの依頼前にも色々と取り決めていったはずだ」
「そうだけど……何だかと思って」
「サイリア、それは優しさだけど“正しさ”ではない、この場では気の緩みだよ」
「分かってるけどさ……」
「分かってるなら口に出すなよ。それは決意が足りなくて、迷って誰かに聞いて欲しい時に言う言葉だ」
「うん……」
「本当に理解しているのか?」
「わかってる、大丈夫だから!」
「本当に大丈夫か?」
と、ジョーが言った所で――。
[パッキィィ――――――――ン!!!]と乾いた音が辺りに響いた。
咄嗟に音の出た方角に顔を向ける。
音の正体は、オブジェとなった球体に亀裂が入った時の音だ。
それを見た瞬間に「構えろ!」とジョーは叫ぶ。
だが、アンジーやミレイ、ラビスも一瞬で武器をとって待ち構えていた。
「ちょっと本当に、アレを破るって事?」と驚愕した声でラビスは後退する。
「アンジー! ラビスとミレイを連れて下がれ! サイリアも離れろッ!!」と大声で指示した。
次第に亀裂が大きくなり、絡まっている根っこがミチミチと音を立て始める。




