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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第5章;弟子達との修行
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長距離移動訓練5

 ジョー達は休憩を終え、装備を整え直す出発した。

 林の中を進み、育った草木をかき分け進んでいく。

 先頭のジョーは(なた)を持ち、通りやすいように無駄な草木を落としていくと同時に地面の草木を踏み固めていく。そしてまた前を向く。


 そして、視界を開くと辺りを確認していき、後方にいるカティアとフィフィ、メリーダの進行速度の確認をした。

 再び進むと――【おい、他の匂いが濃くなった。“テリトリー”をかすったかもしれない】と蛇腹刀から危険察知の通知が入る。


「よし、止まれ……集合」

 ジョーは後方を進んでいるカティア達を止めた。

 急いで固まる一同。


「ジョー……魔物?」

「たぶん……、サイリアは探知魔術…用意」

「わかった」

 サイリアは杖を取り出し、魔力を高め、魔韻(スペル)を唱えていく。

「――……、探知(ダイブ)

 杖が光り――そのまま光玉がはじけて消えてしまう。

「ウッ・……うん……」

 サイリアから言葉が漏れる。目をつぶり集中していた。


 探知魔術は――万能ではない。効果範囲があり、そして術者の力量と使い方でその範囲も変わる。

 サイリアの探れる範囲は調子のいい時で200メーター程度、指向性に変えれば400から600メーター程度が探知範囲となる。

 無論、探る範囲が広まるほど魔力も比例して消費する。

 現在は全方向に向けての捜索の為に150メーターを探っていた。


「……何も無い感じ。大型の魔物は近くにいないはずよ」

「そうか……、ちょっと速度を速めよう。スネークが言うには魔物住処(テリトリー)の近くに入っているのかもしれない」


 ジョーとサイリアの会話をカティア達は静かに聞いて、すこし緊張した様子だった。


「よし、もどれ、一列」

 ジョーは、指示を出して再出発した。


 警戒しながら藪道を進んでいく。

 飛び立つ鳥の声にフィフィは驚き、進行が止まってしまった、後方からサイリアがなだめ落ち着かせていく、それほどの緊迫感があった。

 警戒行動をしながらの目的地までの進行をカティア達に仕込んでいたので、静かになりながら全員で辺りを(うかが)っている。

 少しでもおかしな所があれば声をあげるように身構えていた。


【ジョー、匂いが濃くなっている感じだ】

「警戒して進路を風下に変えたんだけどな……、つけられたのか?」

【再度の警戒は必須だろうな】

 スネークはそうやって警戒を強める警告をする。

 ジョーは後方に『止まれ』と指示を出した。


 再び集まる一同。

「どうしたのよ……」

 サイリアは眉をひそめ、尋ねた。


「どうやら、追跡されている感じだ。警戒の為にもう一度、探知魔術を発動してくれ、俺達が通ってきた方向に……」

 ジョーはそう指示を出す。

「わかった……ちょっと待って」

 サイリアは探知魔術を発動した。指示した通りに後方に向けて。

 そして――彼女はビクッと身体を震わせる。


「いた、後方からゆっくりとだけど、歩いてくる……」

 と、ジョー達に教える。


「どの程度、離れている感じだ? サイリア」


「……そうね、200メーター程度かな?」


「大きさは?」

「大猪位? 500キロ級かも? 分類すると8“デラ”程度の大きさね、感覚的には4足歩行の魔獣かも」

 サイリアは自身の感覚でそのように述べた。


“デラ”とは――成人男性1人分の大きさを指す用語である。それが大体の指標となる体積にしても正確に測れないので結構適当な表し方である。しかしながら指標としての役割を冒険者の中でもっている。


「わかった、このまま撒く事は出来ないと思うから、対峙戦闘用意。場所も開けた場所まで行くぞ」


 ジョーはそのように指示を出して、一行は急いで進んでいった。

 フィフィとカティアも居る為に、急な行動は出来ないと判断する。


 林の中でも平地で草木の少ない場所に出る。

 急いで荷物を置いて、ジョーを先頭に武器を持って待ち構えていた。


「カティア、フィフィ、メリーダは先に手を出さなくていい。サイリアは俺の後方支援をしてくれ」


 ジョーの指示にカティア達は頷いて、サイリアは「いいわよ」と返事をした。


 待ち構えていると――(くさ)(やぶ)が動き、ジョー達を追跡した魔物が姿を現す。


「あぁ、角熊(ヘディベイ)か……」

 ジョーは姿を見て、魔物の名前を言った。


 目の前に居るのは顔に傷が入り、頭、肩、背中、腕から(とが)った硬角が生えている大型の魔獣だった。

 野生の魔物らしく、引き締まった肉体をもった魔物としてはよくいるタイプ。ランクはEランクの上位である。名前は角熊(ヘディベイ)、突進と角で獲物を突き刺すか、前肢の爪で切裂くか、鋭い牙で噛みつくかという攻撃方法を持つ。

 攻撃力特化の肉体派である敵に一同は構えをとる。


 ジョーは剣を構えずに、まずは殺気を出した。

 目をキッと鋭く見つめる。


[グルルルッッ]と角熊は声を出すが、睨み合いの沈黙が続いた。

 ――約20秒で、角熊が後退し、そのまま藪の中に消えていく。


「よし、冷静な魔物だったな……」

 ジョーは蛇腹刀をしまい、振り返った。


 そして、そのまま行くぞと固まっている弟子たちに声をかける。


***


 ジョーは、そのまま藪の多い林の中を抜け、次第に周囲の木々が開け、落ち葉の道をひたすら進んでいた。


「師匠、さっきは戦闘をしませんでしたね」

 後方に居るカティアが、話しかけてきた。


「なんだ、カティアは戦うのが好きだなぁ~」

 目を合わさずにジョーは周囲の確認を続けている。先ほどの藪道よりも余裕があった。


「いいえ、そうでは無く、魔物住処(テリトリー)に入ると魔物の警戒心で排除しようと攻撃を仕掛けて来ると前に聞きました。ですが、魔物はそのまま去って行きました」


「なるほど、角熊はなんで戦いもせずに帰ったのかが知りたいのか?」

「はい、そうです」

「わたしも聴きたいです」

 カティアとフィフィは同時に声をあげた。


「移動中だから簡単に説明しよう。確かにテリトリーに入った場合、魔物は警戒する。しかし、戦力、数を理解して戦闘を仕掛ける前に止めた。つまり、戦うと勝てないと判断したんだよ。魔物も生存本能というヤツがあるので、勝てない時は逃げる行動をとるのは珍しい事じゃない。死にたくないなら逃げるは冒険者も魔物も一緒だ」


「なるほど、……それでジョー師匠も追いかけなかったのは長距離移動をしているからですね」

 カティアは説明を聞いてニヤリと笑った。

 ジョーが追いかけて仕留めないのは、敵を倒しても意味が無いという事が解っていた。

「そう言う事だ。解ってきたじゃないか」

「河原で出会ったゴブリンも石投げて撃退していましたよね」

 渡河前に起きた出来事をカティアは話している。


「そうだ、移動中は戦闘による体力の消耗を避ける事こそ大事だ。『無駄な事はしない――鉄則だ』冒険者になれば、依頼外で面白半分に魔物を狩るとか、出会う魔物を全てを倒しても、大半は意味のない事で無駄と無知の行動だとバカにされるぞ。俺の弟子なら全滅するまで始末しますとか言うなよ。常に程度と常識をもって行動だ……――」


 ジョーはカティアとフィフィに冒険者のあり方を説明していった。

 そして、次第に崖がある場所に辿り着く。



考察。

 探知魔術についてはドレイク討伐の時とか、色々な所で言葉に出ています。今度はその応用といった所でしょうか? しかし、普段から連続効果持続とは違い、一回限りの魔術です。それに効果範囲も意外と狭く、使いづらい印象の魔術にしました。

 本当は数キロとか数百キロでも大丈夫ですよ……みたいにすると色々と思う所があり取止めです。


考察2

 魔物との対峙について――命を奪う事はしません。なぜなら無駄だからです。RPGのようにレベルアップの材料としての魔物狩りでは有効かもしれませんが、この前に振れた食物連鎖の話と合わせると生態系を乱す行為とは他の部分に負担をかけ、結局はキングゴブリン騒動のような災害に発展すると話してきました。

 それに、実際には魔物は逃げます。ドレイク討伐の時も逃げる魔物を抑える為にくくり罠を使いましたし、それくらいの知恵はあります。大抵の生物はですが……。

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