ジョー先生のお悩み相談~カティア編
カティアはテントから外に出てきた。
そっと歩み寄り、 ネグリジェ姿で髪も少し乱れた状態であるが茣蓙にどっしりと座った。ジョーの近くにいる彼女は無言のまま焚火を眺めている。
「……どうしたんだ?」
そう訊いて欲しそうにしている様子の彼女に、ジョーは欲しい言葉をかけてやる。
「師匠……、わたしは親友を失いそうです……」
カティアはそう述べた。
昼間に行った『挑発口撃』での訓練の一環でフィフィと不仲になった事をさしている。
あの後、気不味くなったのはジョーのみでは無かった。
実際に食事中もフィフィは目を合わしてくれなく、拗ねている様子であったのだ。カティアは仲直りしようと話しかけたのだが、上手く会話が続かずにいた。
ジョーも、その事を何となしに気にしていたが、上手く間を取り持つ事が出来なかった《※隔離させられていた為》、落ち込むカティアを見て少し心が痛む。
「そうか……」
ジョーはそう言うと、焚火に薪を投げ込んだ。
パチッと火が弾ける。
「フィフィちゃんは、わたしを許してくれないかもしれません……」
いつものように強気では無く、落ち込んでいる、籠った声で告げた。
「……大丈夫だ。親友ならその程度の事では揺るがないはずだ。遠くに離れていようと、喧嘩をしようと、いつの間にか仲直りしているもんだ」
慰めるようにジョーは助言を送った。
「……本当に、そうでしょうか?」
カティアはジョーの顔を見つめた。
「あぁ、そうだとも。それにきっかけは、些細な事で、いつまでも怒る事じゃないだろ?」
「でも、こじれるかも……、ひどい…こと、言ったんで……」
「下着や、胸の事だろ? 年頃の女の子は発育が違うじゃないか? 気にする事なんて無いだろ?」
「師匠、分かっていませんね、年頃だから、他の人の下着とか、大きさとか気にするモノなんですよ」
カティアは呆れるような目線をジョーに送った。
ジョーは弟子に言われ、(そうかッ!)――と、得心がいく。
「まったく、だからメリーダに余計な事を言うんです!」
カティアに言われ、ジョーは心に10コンボくらったような衝撃を受ける。
さきほど、同じ様な事を愛刀にも言われたばかりだったのだ。
「悪かったよ……、それで、ここに座っているって事は何か話しがあるんじゃないか?」
「えぇ、でも、女心を分かってない師匠に、デリケートな相談など……」
「おいおい、分かってないとは言わせないぞ。これでも色々と歳を重ねているからな」
「では、なにか仲直りする方法があるというのですか?」
そう言われ――ジョーは考える。
千とも万とも答えの出ない回答を――。
千状万態のように状況はそれぞれ違い、千変万化のように人間関係は変わっていくモノ、その答えに千思万考をしてみたが回答など得られません!――と、半ばあきらめる。千緒万端であった。
実際に500、5000と考えてみた訳ではないが――デリケートな相談で画一的な答えが出せるほど千秋万古の時を生きてきたわけではない。
「……ないんですか?」
「……カティア。違った話をしよう」
「なんでしょうか?」
「この答えのタメになるか分からないけど、俺の生まれ故郷にこんな話がある」
「師匠の国の話ですね」
「あぁ、今日習った《虚撃》についてだ。ある剣士が虚撃の達人だった。来る日も来る日も決闘に勝っていく。あるモノはその剣士の術中は見事だと言った。いつの間にか隙を突かれ負けてしまっている、まさに霞の如き剣の使い手だと、そんな称賛する声を何度も聴いた。虚撃を使う剣士は鼻を高くして浮かれていた。ある日の事、決闘を申し込まれる。この決闘に勝てば100連勝の記念すべき試合だった、それの相手はただの若い剣士。老練を重ねた剣士である自分が負けるはずないと思い対峙する。そして、虚撃の達人はあっさりと破れてしまった……」
「師匠、……なんで?」
「それは、若い剣士に破れた後に聞いたんだ。『なぜ、効かぬ?』と、そしたら若い剣士は『何も考えずに、ただ勝機を見据え攻め込んだだけだ』と返した。つまり、何も考えずに攻めていった結果だという事だ。これを南部では『虚謀の思案は実に屈する』という。つまり虚撃の剣士は考え過ぎで、何も考えていない真っ直ぐな攻撃にやられたという事だ。別の言い方だと『下手な考え、休むに似たり』とかいうコトワザがあるんだよ」
「なるほど……でっ、どう言う事でしょうか?」
カティアの返しにジョーはズッコケるように動いた。
(何も意味ないッ、長々と喋った事が通じ無かった!)
ジョーは気を取り直して――。
「カティア、つまりな……、お前は考え過ぎていると言いたい。もっとフィフィと真正面から謝ってこい、そうすれば仲直り出来るから」
ジョーはまともな助言を送った。
「なるほど、では早速、行ってきます!」
カティアは立ち上がり、そのまま笑顔になると、ジョーに挨拶をして元の寝床に戻っていった。
(あいつは本当にスグ行動するな……)
その様子をしげしげと眺め思っていた。
***――閑話休題
ジョーは寝床に戻ったカティアが何かを話しているのを静かにして、聞き耳を立てていた。
《フィフィちゃん、起きてる?》
《………うん》
《あのね、その、昼間はゴメンね。わたしが言い過ぎた》
(偉いぞ、ちゃんと謝れているじゃないか)――ジョーは思う。
《……いいよ、もう、寝るね》
《まって、胸のことを言ったのは悪かったと思うの……、それなら、わたしにも考えがあるの》
《……なに?》
(何する気だ……)――ジョーは思う。
《それでね、ムネの事で傷ついたなら……、わたしのムネを好きにしていいよ……》
(あいつ、何言っているんだ!)――ジョーは驚く。
―――しばらく、布ズレの音がする。
《本当にいいの?》
《二言はないわ、さぁ……》
《それじゃあ、いくよ、えぃッ》
《ハヒャンッ♥》
《えい、えい》
《フィフィ、そんな、強く……、ヤンッ♥》
《好きにしていいはず、カティアちゃん、隠さないで》
《でも、先っぽは…ダメッ》
《いいじゃない、揉んで大きくしてやる》
《フィフィちゃん、目が怖い》
《いいの、カティアちゃんも大きくなって、“うしちち”って呼ばれればいいでしょ》
《そうだけど、あひゃん♥、それじゃあ、サイリア師匠みたくなっちゃうぅ~》
《大きくなっちゃえ、ほら、ほら、メリーダさんサイズになっちゃえ》
《あぁぁ~♥、ダメぇ~♥ でも、大きくなるのはいいかも♪》
(これは、止めるべき問題だろうか?)――ジョーは悶々(もんもん)としながら事の過程を見守っていた。
カティアの年端もいかない色っぽい声とフィフィの容赦ない攻めが続いている様子で――、その内にテント内は静かになった。
《――フィフィちゃん……、気が済んだ……》
《うん、もういいよ。カティアちゃんの気持ちも分かったから》
《それだったら、今日は一緒に寝よう》
《いいよ、ほら……こっちでね♥》
《うん♪》
そのまま笑い声に変わり、ジョーはホッとする。
(あいつら……、まぁ、最後に仲直り出来たようだから“善い”としよう)
【カティアはいつもまさかの方法を思い付くな】
「そうだな、あの行動力は見習らっておいた方がいいかもな」
【それじゃあ、ジョーもメリーダに“正直”に謝った方がいいと思うぞ】
「明日になったらそうしよう……――」
そのままジョーとスネークは喋りながら夜明けを待っていた。
時には真正面からの謝罪も必要。




