挑発口撃4
「――、こうやって、異性の場合には様々な言い方が出来る。逆の場合にも考えてみればいい、女性が男性にむかって、「なんだ、この下手くそ!」とか言われると普段と違い、ムカっとする事だろう。そうやって性別差を逆手にとる事も考えて挑発行為を進めた方が効果的だ」
ジョーは多種多様な言い方で挑発行為の説明を終えようとしていた。
「――他に何か意見はあるか?」
辺りを見渡すと、カティアが手を挙げていた。
「何かあるのか?」
「はい、大体は理解できました。けど、挑発って汚い言葉の罵り合いって感じがするんですが? 師匠の言葉は……“お上品”ですよね? もっと上手なはずです」
「おい、なんだ、普段から上品じゃないモノの言い方は!」
「そんなに怒らないでくださいよ、まったく……、しかし、実戦だとスラングなどの言い方もあるはず……」
カティアは難しい顔をして自身の考えを述べた。
「……まぁな、ギリギリのラインを計って気を使っていたんだよ。それに卑俗語を普段から言うはダメだぞ」
ジョーはそのように説明した。
その言い方はまるで、放送コードを気にしているかのようである。
「じゃあ、実戦では役に立たないじゃないですか? まったくもぉ~」
カティアは自然とジョーを“挑発”する言葉を吐いた。
(まったく、こいつは自然な挑発行為は天才的に上手いな……)
などと思いながら、心を静めていく――が、実際に何かが切れて、煮えたぎる感情が生まれる。
「仕方ないッ! それなら、本気でスラング混じりの挑発ってヤツを見せてやろう」
ジョーは強く言って、メリーダの方を見た。
彼女は少し怯えるような動作をする。
「メリーダ、ここからは手加減無しだ。本気でいく」
「は、はいッ」
返事と共にジョーは息を吸って吐いた。
これから言う言葉の準備をして肺を綺麗にしていくかのように――。
「『おいッ、貴様良いケツしてるじゃねぇかッ、切裂いて、●●まわしてやる』――」
「『へへへッ、その胸で●●●をしてやるよ、この●●●●女がッ!』――」
「『もう知らねぇぞ。どんなに喚こうが、俺はキサマの●●●を☓☓☓してやるからな!――』
「『☓☓☓☓を●●して△△△を☓☓☓してモミモミしてやるよッ! どんなに●●●をしようが☓☓☓☓――』」
「『●●●女ッ! ☓☓☓??????????☓☓●●』――」
「『PE――――――、PE――――――――』」
「―――――――――――」
「――――――――――」
「――――――☓☓☓」
「●●●!!!!!」
《※ひじょうに強いスラング言葉が飛び交っている為、作者側で自主規制をさせていただきました。申し訳ありません(焦)》
――強めのスラングが混じる多種多様、“ゲス種ゲス様”な言葉でメリーダを嬲り倒すように、罵る言葉を加えていった。演技も真に迫るモノがあり、迫真の演技と言っても差し支えない。
ジョーは一度決壊した理性の制御が出来ず――結果。
メリーダはうずくまり、両腕で胸とお尻を隠すように座ってしまった。
※※※
「ジョー、サイテぇぇぇッッ!!」
サイリアが怒鳴りこむように入りこんで、身体を震わせているメリーダを介抱しながら、ジョー・カバライを汚物で視るような瞳を向け、言葉の刃を突き刺した。
「メリーダ、大丈夫? この人でなし師匠ッ!」
カティアまでも加わり、メリーダを慰めている。
――ジョーは小さくなり、静かにその場に立ちつくした。
「メリーダ、大丈夫なの?」
「……はい、初めての経験で……」
「仕方ないわ、ほら、ハンカチを使って」
サイリアはハンカチを差し出した。
「……ありがとうございます」
「いいのよ、ほら…拭いて」
サイリアはニッコリと笑いメリーダを労わる。
ジョーは何か言いたそうにしているが――サイリアの厳しい目線が彼を襲った。
「ちょっと、どこか行ってよ。変態ッ!」
厳しい一言で、ジョーはその場を退散するしかなかった。
「は、はい……」
静かに返事をして、ジョーはその場を去る。
これが、カティアにも言っていた、この訓練の辛い所である。(※パート2)
少しの失敗が、全てを壊す危険な訓練でもある。
信頼関係も破綻する――危険な訓練である。
説明した通り、彼は全ての信頼を失ったのである。
そのまま――強制的に挑発訓練は中途半端の強制終了で幕を閉じた。
***
その後は――静かな地獄が待っていた。
サイリアは怒り、ジョーのメシは作らない宣言をして。
メリーダに話しかけると、極上の冷たい目線が彼を襲う。
弟子達の好奇な目線。
そう、孤独であった。
あれだけ楽しかった食事も簡易食料で栄養を独りでとる事になった。まさに『孤独の食事』。
ジョーは後悔する。
なぜ、自分を抑えきれなかったのだろうと――。
すこし、ほんの少しの運命の歯車が狂いだした。
そして――時間は過ぎ、夜の警備の時間。
寂しく洞窟内にいた。
焚火の燃える中で静かな夜を過ごしている。
失意のジョーは普段と同じく蛇腹刀に話しかけた。
「おぃ……、なんで俺は嫌われたのだろうか?」
【それは簡単だ、女性にセクハン紛いの事を言ったからだ】
「でも、許可は下りたよな?」
【ものには限度がある。おまえはそれを越えたからだろう?】
「でも……さ、訓練の一環じゃないのか?」
【前にも言ったはずだ。セクハンは相手が思ったら負けだという事だ、どんなにいいって言っても、直前で掌を返されたら終わりだ。それが人生ってもんだ】
「まさか、スネークに人生を語られるとは思っても見なかったぞ」
【私もだ、そんな相談を受ける事になるとは思っても見なかった】
「…………」
【そうだ、行っておくぞ、今度のセクハンは長引きそうだ。なにせ実害を被ったからだ】
「………」
【まったくバカモンだな……、相手の気持ちを推し量る事こそ弟子と師匠の関係ではないのか? なんだっけ、【忖度】といったかな?】
「……」
【例え、訓練でも異性相手では難しい事は分かっていただろう? 師匠面して、いい気になっていたからだ】
「…」
【言わざる事は美徳なりや……だな、余計な事を言いよって!】
「……うっせッ!」
ジョーは静かにキレた。
スネーク正論に耐えきれなかったのだ。
【あぁ、怖い、怖い、負け犬の遠吠えだな】
おどける声が剣から聞こえる。
その時だった――「師匠、うるさいッ」――と、カティアがテントの入り口から顔を出した。
補足。
「孤独のグルメ」は知っている方もいると思いますが、深夜ドラマでやっていたメシテロ番組です。原作漫画の奴です。
スラング――はつまりは、危ない言葉です。
場所によっては銃で撃たれるかもしれない言葉であり。今回の場合は侮辱語ともいえますね。
みなさんは使ってはだめですよ。
他には俗語の意味合いもあると思いますが今回の場合には外させていただきます。




