挑発口撃2
「まずは、お互いに挑発し合う事、そして動じない事が大事だ、内容は何でもいい、相手が焦る事でもいいし、特に制限は設けない、難しいとおもうけど、やってみることが重要だ」
ジョーは格好だけ木剣を構えさせ、カティアとフィフィを対峙させ、その真ん中で審判のような事をやっている。
「わかりました、師匠、やってみます」
「……はい、できるだけ頑張ります」
「フィフィちゃん、いや、この場合、敵になるから“フィフィ”いくわよ」
「あっ、うん、あの、その、頑張ろうね、カティアちゃ……カティアッ」
「なれ合いは不要、行くわよ!」
「うんッ!」
カティアは格好もきまり、やる気に満ちている。だが、フィフィはどこか地に足がついていない様子だった。
「よし、始め!」
ジョーの声で挑発口撃の訓練が開始された。
「フィフィのバーカ、バーカ」
――カティアはまずそう言う。
「カティアのバーカ、バーカ」
――フィフィは言い返す。
「バーカ、バーカ、バーカ」
「バーカ、バーカ、バーカ!」
「バーカァ! バーカァ! バーカァ!」
「バカァッ! バカァッ! バカァッ!」
「バぁぁぁぁカぁぁぁ、バカバカバカッッ!!!」
「バぁぁぁぁカァァっ!!! バーカーァァァ!」
そのまま同じ単語を言い合っている。強弱はあるが、それだけだった。
(こいつら同じ事しか言いあって無いぞ! もっと言葉選べよ!)
【まるで、ガキのケンカだな……】
ジョーの背中でスネークが呟いた。
「そうだな……」
ジョーはなりゆきを見守っていたが、これ以上の発展は望めないと判断すると――「止めぇぇぇッッ!!」と大声で言って訓練を止めた。
***――閑話休憩。
「おい、バカ弟子達よ。なぜ、その「バカ」と言う単語しか使わない」
ジョーは言い争う2人を止めて、そう尋ねた。
「だって、意外に難しいんだもん、何言っていいか分かんなかった……」
「……普段から、そんなに言わないので……」
弟子達からの返答にジョーは頭を抱える。
(こいつら……、というか、特にカティア。いつもの自然な振る舞いはどうした)
ジョーは普段からカティアに手を焼いているので、その自然な挑発に何回も自制し思いとどまった事だろうと――回想をした。
「いいか、挑発っていうのは、『バーカ』とか罵声を浴びせるだけでは無い事は教えたろ? 簡単にいえば、ハゲている人に「ハゲてる」とかでもいいわけだ。身体的特徴、性別も考慮して挑発してもいいんだ。もっと色んな方向から挑発を考えてみなさい」
「「……はい」」
ジョーに注意され、渋々返事を返した。
「それじゃあ、もう1回やるぞ、準備を」
そのままカティアとフィフィは間をとり、同じ様な位置に戻った。
***―――閑話休題。
「それじゃあ、気を取り直していくわよ、フィフィ」
「こ、こいッ!」
カティアがまず口火を切った。
「フィフィの、ソバカス、赤毛、癖っ毛、パン屋!」
「カティアの、金髪、えっと……長くて髪がキレイ、いいなぁ~」
「エッ、そうかなぁ~、えへへへッ」
「そうだよ、キレイだもん、憧れる」
「まぁね、専用のシャンプーを使っているから……」
「へぇ、そうなんだ……」
「ちょっとお前ら、マテぇぇぇッッ!」
ジョーは変な方向に行く前に訓練を止めた。
「師匠、なんですか? 急に……」
カティアがビックリして声をかけた。
「いや、なんだろうな、賺し(=褒めて油断させる)の技術の一部と考えれば良いかもしれないが、その前に褒める事で和んでどうする。怒らす前提で訓練するかと思えば、普通の会話になるし……、それだから、やり直し!」
ジョーは仕切り直した。――そして3回目の本番が始まった。
***
「仕方ない、とっておきの話をするわッ!」
カティアは木剣を突き出してフィフィの方に向けた。
「な、何ッ」
フィフィは驚く様子だった。
「前の身体測定でフィフィ、あなた、ムネのサイズが、また大きくなったはずよ」
「う、うん、そうね」
「でもね、みんな言ってたけど、ムネが牛みたいだって、『ウシ乳』だって言ってたわ」
「エッ、本当に! みんなってエリちゃんやミーちゃんも!」
フィフィは驚いていた。
かなり前から、フィフィの身体は変化している。その事をいっているのだ。
栄養が胸にいくように大きくなっている事はフィフィ自身も自覚していた。
「そうよ、胸デカのチチオバケだって!」
「そ、そんなぁ~」
「それに着けている下着がおばさんぽいって!」
「アレは、可愛いのか無くて、お母さんのを借りてるの、いいサイズが無いだけ!」
「でも、茶色いやつでしょ。もっとかわいいのでもいいはずよ」
「だって、お店にないんだもんッ!」
「タイマンッ、それは女性としての怠慢よ」
「だって……、いいのが無いの……」
「それだから“ウシ乳”って言われるの! 大きければいいてもんじゃなでしょ?」
「だって、だって……わたしだって可愛いのがいいのにぃ~、ウエェェェェェェ……」
フィフィは、そう言って目を潤ませ、泣きだした。
――カランッと木剣が地面に落ちる。
「あっ、ちょっとフィフィ……、ゴメン」
カティアは泣いているフィフィに駆けよって謝る。
「エェェェェェン……、うし、うし、ちちって言われた。それに、下着は違うのにぃ――ィ! アァァァァァ――ン!!! ――」
フィフィは泣き続ける。
――カティアはオロオロとしてしまっていた。
【おい、泣いてしまったぞ、どうする?】
スネークはそう言ってジョーに話しかけるが、ジョーは再び頭を抱えていた。
(外見とか……、性別の問題は入っていた……、しかし、ネタが身内過ぎる……)
ジョーは色々考え、素直にこれ以上の続行は不可能と判断し――。
「2人共、止めぇぇぇッ!!」
ジョーは、そう言って訓練を止めた。
***――閑話休題。
「確かに、改善がみられた。でも、さっきとレベルが一緒だ……」
泣きやんだフィフィと、泣きそうなカティアに向かって、ジョーは先ほどの訓練の総評を言う。
3回行った結果。――心に傷を負った弟子が生まれただけである。
これがこの訓練の最も辛い所だ。――人間関係の破綻に繋がるかもしれない訓練だった。
挑発行為とは相手を傷つける行為でもあるので、仲のいい者同士がやると、グズグズになってしまう危険を孕んだ、大変危険な行為である。
「師匠、難しくて……」
カティアは落ち込みながら言う。
「そうだな……、この訓練はまだ早いという事だ」
「師匠、酷い訓練です。心の痛む訓練でした」
「そうだな、でも始める前に言ったぞ、『人の尊厳を奪う』とか『色んなモノが壊れていく』とか説明しただろ?」
「でも、ここまで酷いだなんて……、誰がこの訓練をやろうって言ったんですか!!」
カティアは勝手に怒り始めた。
「それは“お前”だ。バカ野郎!」
ジョーは先ほどまでやる気満々の彼女の事を指さす。
「うぅ、そうでした……、でも、友情まで壊れる所です……」
カティアは効果音がでるほどの衝撃を受け、うなだれる。
「はぁ~、まだ色々と早かったようだな。仕方が無い、俺と……メリーダで『大人の挑発行為』というヤツを実演しよう」
ジョーは溜息を吐いて、この訓練の手本を見せようとした。
挑発シリーズ。
「フッ……だが、断る」
「なん…だと」
「わたしの戦闘力は5300000ですよ」
「おい、モジャモジャ」
「のーびーたー!」(ジャイアン専用)
「あら、かわいいオ●ン●ンねっ!」




