麻薬と薬草1
カティアは頭を押さえながら「うぅ~~」と唸って痛そうに患部をさすっていた。
そして――顔を上げ、ジョーに強い目線を向ける。
「師匠、わたしは暴力に屈しません! 師匠が麻薬の売人であるなら強い姿勢でのぞみます!」
強い宣誓を行った。
ジョーはその言葉を認め、――今度は手を振り上げる。
またも拳骨を落とされると思ったカティアは身構え、防御の姿勢をとった。
しかし、意外にも今度は頭をナデナデし始めたジョーは、そのままその行動を続けた。
「あれ、師匠、どう言う事ですか?」
何も無く、きょとんとするカティア、予想外の事でまだ状況が飲み込めていない。
「褒めているんだ。目上でも悪い事をしている時にハッキリとモノを言える事は善い事だと思って……な」
ジョーは、そう言ってほほ笑んだ。
「師匠、これは、“カイジュウ(=懐柔)”というヤツですか? ですがワイロなんて、わたしに効きませんよ」
「違うから安心しろ……、その前に色々と説明してやる」
ジョーはそう言って最後に軽くカティアの頭にチョップした。
「あぅッ、これは暴力です」
「暴力じゃないから。それとフィフィ、動揺するな、いま説明してやるから……」
ジョーはそう言って、先程から近くにいて、アタフタしたままどうしていいか分からない状態になってしまったフィフィに声を掛けた。
「あっ、ハイ!」――と元気な返事だけが返ってきてまだ状況を完全に飲み込めていない。
「しょうがない、あっちで説明するぞ」
ジョーは石椅子のような場所を指さした。
***――閑話休題。
「じゃあ、説明していく。お前達には早いと思って説明を省いていたが、見つかってしまった事で話さないと納得しないだろう……」
ジョーはそう切り出した。
先ほどの植物の“ダイマ”についての説明を行うために、石の椅子に腰を降ろし向かい合うように、それぞれが座っていた。
「師匠、それで納得しなかったら、わたしは警使(=警察組織)に通報しますよ」
カティアはジョーに凄んだ。
正義感溢れる言い方である。
師匠でも断固引かない姿勢を出していた。
「わかったよ、あの“ダイマ”は本物だ。紛れも無く禁薬の原料の“ダイマ”に間違いない」
「やっぱりッ! 師匠……、さぁ、町に戻りましょう……」
カティアは懺悔(言い分)を聞いた後で驚き、悲哀の目をもってジョーを誘導しようとする。
「おい! 最後まで聞け! それに俺は法に触れてはいないぞ!」
ジョーはそう言って大声で否定する。
「でも、ジョー師匠、あれって本物なんですよね? それだったら問題じゃないんですか?」
フィフィは恐る恐る訊いた。
「ちょっと違うな、“ダイマ”を町に持ち込んだら法に触れるが、持ち込まなければいいだけだ。ここは町の外で問題無い」
「あっ、そうだ……」――フィフィは失念の声をあげる。
「正確に言えば、持ち込もうとした時点で罪になるけどな」
ジョーの言うとり禁薬の町への持ち込みは禁止されている。
しかし、町に持ち込まなければ問題は無かった。
「でも、師匠。“ダイマ”は麻薬です。使ったら人生を破滅する禁薬ですよ!」
カティアは声を荒げて反論する。
「カティア、落ち着け、その辺も説明してやるから……」
ジョーはヤレヤレといった表情で彼女をなだめた。
「そうですか、納得のできる説明をお願いします」
「はいはい、任せてくれ……、その前に“ダイマ”についてどの程度の知識があるんだ?」
ジョーは質問をした。
まずは目線でカティアを見る。
「えっと……国を滅ぼしかねない禁薬だという認識です。激しい幻覚を見せて、頭のおかしい人が使うっていう話しを聞きました」
「まぁ、大体合っているな……フィフィはどうだ?」
ジョーは――目線をフィフィに移した。
「はい、幻覚による錯乱状態を引き起こす薬で、中毒性がひどくて止まらなくなって、呼吸困難になったりして、身体を震わして、奇声をあげて町を徘徊する人に変わってしまう薬だと聞いています」
「それも症状の1つだ。中毒者は町で突然、裸になって『ダイマァー! ダイマァー!』とか叫ぶ事もあるそうだ、つまり正常な判断の出来ない人間に変わっていく薬だと思った認識で間違って無い。カティアの言う、国を滅ぼしかねない薬とは、実際には戦争の発端となった話しの事だな。200年近くまえに『チンセイ国』と『エルゲレス王国』の戦争を通称『ダイマ戦争』と呼ばれている。おおむね症状としては間違っていないが、その他に異常な発汗、倦怠感、そして突然、思考停止のような症状が出たりするために“阿呆薬”とも呼ばれている。中毒性の酷さから回復まで何月もかかり、毒を抜くために拘束し、その間に死亡する者まで現れる事で昔から禁薬指定されてきた物だ」
「師匠、そこまで分かっていながら、なんでこの場所にあるんですか?」
「カティア、それは“ダイマ”の事を全て知らない者の発言だ。ダイマとは禁薬のイメージが強すぎて、他の有効性を見逃されている植物なんだよ。それに冒険者の多くは“ダイマ”草を“薬”として使用してきた歴史がある」
「そうなんですか……、ダイマを昔から使っていた。つまり……冒険者は中毒者集団って事ですか?」
「おい、違うからなッ! 言っとくけど錯乱した状態のまま、魔物と戦うと大抵の場合、死ぬから。冒険者やっている奴で中毒者の奴なんて逆に見た事無いわッ! 中毒者になるヤツなんて大抵、暇人のアホでカッコつけのヤツらだけだ!」
ジョーは大声で焦って否定する。
自身の働いている事が“中毒者”という不名誉な言い方には耐えられない話しだった。
「そうか……、そうですね……」
カティアは言われてみて納得した。
「はぁ~、まぁ、ソコを含めて説明していくぞ。麻薬と薬草の違いについて説明してやる」
ジョーは溜息を吐いてダイマの有効利用について説明を始めた。
麻薬と聞いて思い出すのはスイスです。
何故かと言うと――旅行中に公共のようなトイレに無造作に注射器が捨ててありました。
当時、家族旅行中の幼い私でしたが、理由を両親に聞くと、帰国してから話してくれました。
実際、近くにすっごくやせ細った人が徘徊していたのを思い出します。
つまり、スイスって麻薬OKの国らしいです。
アメリカの一部の州でもOKということですが、見ていてみすぼらしい記憶があります。
さすが永世中立国、麻薬まで入ってもいい国!――と当時を思い出して、麻薬について調べていましたら、なんとなく思い出したヤバい記憶の一部です。
やっぱり、アルプスの少女ハイジはヤク中だからすっごく長いブランコに乗って、空を飛びまわり、崖近くで遊んでもハイテンションなのでしょうか? 物凄く笑っているし……。
そう思わずにはいられませんでした。




