危険な植物
「ちょっと待ってくださいね……、わかりました。ほとんどの薬草の苗が“不良品”だった!!」
カティアはズバッと手をかざし、ジョーに答えを言った。
「ちゃうわいッ! どこの店に8割近くも不良品を置くんだ!! もっと違う理由だわッ!!」
思わずジョーはツッコむ。息を切らして、激しいツッコミを見せた。
言語の不安定さが出るほどのツッコミである。
「え~、ちがうんですか?」
「それが正解だと思っていたお前が恐ろしいよ……、フィフィは何か思いついたか?」
ジョーは疲れた表情で次にフィフィを見た。
彼女は焦った様子で答えを探している、そして――「……はい。魔素の関係だと思います」と答えた。
「おっ、フィフィはいい所に目がいくな。そうだ、湖の魔素が関係している。魔力回復薬の原料となる薬草は、その土地にある魔素を吸い上げて力を蓄える。つまり、その土地の魔素の吸い上げる量が決まっている訳だ。植物の数を増やしても、その土地の魔素の絶対数が決まっている為に15株しか成功しなかったという訳だ……」
ジョーは嬉しそうに正解を言う。
その後で――「わたしも、そう言おうと思ってました!!」と、カティアの普遍的な正解巻き込みの事案が発生し、「おい、それは違うだろ!“不良品”娘!」とジョーが言う。
――閑話休題。
「師匠、それじゃあ、この土地だと、どの位出来るんですか?」
カティアは質問する。
「あぁ、そうだな、土地の大きさから考えると、いいところ2、3株って所じゃないのか……な?」
「少ないですね……」
「だろ? それに依頼では10~20株以上が普通だし……出来るまで最低でも3月はかかる。そう考えると、ここでは無くて、いつもの候補地を探したほうが合理的というんだ」
「うぅ……それが『ここでは意味が無いという理由』ですか?」
「そう言う事、薬草の栽培も現在研究されている課題なんだよ、学術都市って知っているか?」
「はい、えっと大陸の中心部にある中立国の一部ですよね? 確か、都市名は“アスカ”だったと思います」
「そう、効率的な方法をソコで研究しているって話だ。それによって魔力回復薬の値段が下がるっていう話しだが、実用化には至って無い。だから自然発生する薬草を摘むしかないのが現状なんだよ」
「ほうほう、薬草摘みにはそんな意図があったんですね。魔素の関係も深いです」
「その通り、あともう1つの理由は湧き水の所にある石碑にある」
ジョーがいう“石碑”という単語にカティアとフィフィは反応し、中心部にある場所を見た。
「作業を止めて見て来てもいいぞ、なんであの石碑があるのか、解るから……」
ジョーにそう言われ、カティアとフィフィは作業を止めて、駆けていった。
泉の中央にある場所は浅瀬ではあるが、足場にとび石が敷かれているので行きやすい場所だった。
石碑らしい物は周りに苔が生え広がり、長い年月その場所にある事を示している。
「これって何か彫ってあるのかな……」
カティアは石碑に彫られたアトがある事を発見する。
「そうだね、これってどっかで見た事あるような……」
「あっ、サイリア師匠が教えてくれた、呪術の術式だ。魔除けの術と同じ様な魔術陣が彫ってあるね」
「カティアちゃん、そうだよ。ここは秘密の場所だから魔除けの術を掛けてあるんだ」
「そっか、だからジョー師匠達はこの場所を隠していたのね」
カティアとフィフィはそう言いあって石碑に彫られている紋様について話しを進めていた。
「おい、答えが解ったようだな」
ジョーは後ろから声を掛ける。
その声にカティアとフィフィは振り向いた。
「はい、わかりました。この場所全体に呪術が掛かっていたんですね?」
「そう言う事だ。それはこの場所だけじゃなくて洞窟までも効果範囲に入っている。さらに泉の魔素を吸い上げて半永続的に効果を発動しつづけている。だから魔物などに見つかりにくい。まぁ、その為に薬草が育たない土地ではあるけどな……」
「なるほど……それだから育てて無いってことですね、そして、みつかるまでは安全という事ですか?」
フィフィはそう聞いた。
「だろうな……それがこの場所を訓練場所に選んだ理由でもある。始めから呪術付きの場所だったという訳だ」
「でも、師匠、それだったらこの場所に緊急で逃げ込む人も少ないじゃないですか? 師匠達は避難場所として開放している訳ですよね? 見つからなければ意味無いじゃないですか?」
カティアは説明を聞いて新たな疑問が生じていた。
「だから、この場所に来る前に看板を下げていただろ? 魔物が“人の文字”を理解している訳じゃないから、あの看板はそう言う意味だ」
「あぁ、なるほど、そう言う意味だったんですね! 隠れ家だけど自己主張するみたいな!」
カティアはどこか合点がいく。
「あっ、うん……なんかズレているけど、そんな意味合いだ。隠れ家だと思った事は無いけどな……」
ジョーは肯定も否定もしない。微妙な物言いでいたが、カティアが思うならそれでいいと思っていた。
「でも、すごいですね。昔住んでいた人は、こんなのも設置できるなんて……」
フィフィは感慨深く、そして懐古するように前に住んでいた住人の事を思いやった。
「だろうな……、多分、独りで生活していたんだろうな……、当時、町があったか不明だが集落にも属さずにこの場所を寝床に選んだあたり……相当な強者だと思う」
(それか、そうとうな変わり者か個人主義者だろうな……)――ジョーはそう考える。
「よし、作業に戻るぞ……」
ジョーが弟子達に問いかけると――「「はーい♪」」と返事が返ってくる。
***――閑話休題。
「じゃあ、これで終わりだな、戻るぞ、手を洗って片付けをしよう」
注文された薬草と他に手頃な薬草の種と葉を摘み終えたジョーはそう言って作業の終了を宣言した。
カティア達はわき水で手を洗い少しお喋りをしながらジョーの近くに戻って行こうとする。
カティアの目線の先に白い花――それも中に赤い斑点の入った綺麗で大きい花弁が目に入る。
(あっ、綺麗な花……)と思うと同時に、どこかで見たような形だったと思いだす。
そして、衝撃が走った。
カティアは思いだした、その花は町に持ち込む事が禁止させている『ダイマ』という植物である事を――。非常に危険である植物で多くの国で乾燥し抽出し粉状にした物の取り扱いが禁止されている薬草の一種である事を。
(なんて事なの……だまされたッ!)
カティアの怒りは頂点に達する。
ベルンの町でも当然のように持ち込みが禁止されている危険な植物であったからだ。
「師匠! 師匠! 来て下さい!!」
突然、大声をあげてジョーを呼び付けた。
フィフィもカティアの突然の変貌にビックリして身体を硬直させる。
「おいおい、どうしたんだ?」
ジョーは疲れた様子で近寄ってきた。
「どうしたじゃありません! 師匠、この植物は何て言うか御存じですか!?」
「“ダイマ”だけど、それがどうした?」
ジョーは当然のように答えを言った。
「知っていたんですか! それだったら師匠も御存じのはず、これは禁薬の材料です! 町中に持ち込みが禁止されているモノなんですよ! それを、こんな場所で育てるなんて――」
――カティアはそこまで言ってハッとする。
自身の師匠の自然な態度がカティアを混迷の思考に誘う。
「秘密の場所、そして隠れ家的な洞窟。いままで隠していた事実を繋ぎ合せると――、師匠達は禁薬の売人だった! そして巻き込まれるムクな弟子の私達! これは危ない! 師匠、これから一緒に町に行きましょう! 自主的に出頭すれば監獄にわたしが毎日差し入れを持って行きますから、お願いします、自首してください!」
カティアはジョーの服をもって必死に訴えた。
泣きそうな表情で訴えた。
悲しそうではあるがどこか覚悟を秘めた瞳でジョーを見ている。
ジョーは立ち止り、そして1つ呼吸を吐くと――拳骨をカティアの上に落とした。
「アッひゅん!!」――と、カティアは声を漏らし、それが閉鎖された空間内に響く。
遂に出てきました。
王国編でも魔女薬と麻薬についての話を少ししました。
あちらは薬として登場してくるんですが、こっちの話は少し重めの麻薬についてです。
興奮剤とか……、戦闘補助剤とか……、色々考えたんですが、原料について論じていきます。
麻薬といっても感覚的には大麻の方で、覚醒剤とかの話とは別です。
異世界でもそういう風に危険な植物はあるよって話をしていく予定で、その関わり合いを少し話ていきたいと思っています




