緊急昼飯会議2
ジョーは『炭』を取り出して正解だと言った。
しかし――弟子達は苦い顔をしたまま――。
「師匠、嘘はいけません。炭なんて食べられませんよ」
「身体に悪そうな物じゃないんですか? 焦げた部分は食べちゃダメって言われた事もあります」
即座に否定の言葉を吐く弟子達に――ジョーは寂しい気持ちを覚える。
(いや、俺だってこんな時に嘘はつかないぞ……)
気を取り直して、ジョーは、もう一度炭を手で掴む、掴んだ瞬間、湯気が上がるがジョーは、熱そうにしていない。魔力操作で膜を作っているからだ。
「嘘じゃない、前に話した濾過装置を始め、毒沼という特殊な環境下で使うマスクにも使われている、“対”毒物につい多くの冒険者が信頼している材料だ。炭とはそれほど昔からある、お手軽な解毒薬と言える」
「わかりました。ジョー師匠がそう言うなら信じます。でも、師匠、どうやって使うんですか?」
カティアは疑問を呈す。
「そうだな、このまま飲めとは……言えない。炭を砕いて煎じ、細かい粉状にした上で使う。腹痛の場合にはコップ一1杯(250ml)に対して小さじ1杯(10g)程度を混ぜて飲む。毒物の場合はその5倍位が適量だと学術書にも書かれている」
「ふむふむ、裏技ですね」
「その通り、だが、事前に薬を用意すれば足りる話しだ。あくまで緊急時という事で覚えておけばいい……」
ジョーはそう言って、炭を元の焚火の場所に戻した。
「ジョー師匠、1ついいですか?」
フィフィがそう言って質問をしてきた。
「緊急の場合ですと、食べ物を探すのも難しいと思うんです。でも採った食料でも毒物が含まれているモノもあります。その見分け方とかあるんですか?」
「なるほど……な、確かに水の確保っていっても食べ物が無いと動けないよな。そんな時に森とかで食べモノを採っても、それが毒を見分けて食べられる方法を知りたいという事か?」
「はい、その通りです」
「分かった……、見分ける方法は単純に言って、知識だ。図鑑や著書で食べられるかどうか覚えておく事が大事だ。例として茸類でも毒があるヤツとそれに似た食用があるので本当に注意が必要だ……、成長途中では毒の判別する斑点が出ていない事もある。なので…知識量を増やすのが近道ではある」
「師匠、知識が無い場合に食べられる方法を探る裏技が知りたいんです」
カティアはそう言って、お願いという名の、裏技風な答えを求めていた。
「おい、少しは勉強をして『覚えます』とか返事をしておけよ……。まったく、ある事はあるが……『食料適正テスト』みたいなのはある」
ジョーがそう言うと、「おぉ~!」期待した目を向けて弟子達から声が上がる。
「師匠、その方法を“可愛い”弟子達に伝授してください」
「カティア……、“可愛い”は自分で言わないほうが“可愛いぞ”」
「まぁ、いいじゃないですか、教えて下さい」
痛い所を突かれ、カティアは目を逸らした。
「……まぁ、いいか……方法は……、少量の物を唇の外に食料をつけて180の数字を数える。その後、異常が無ければ、舌の上に乗せて1000の数字を数える、その間に痺れやかぶれが出なければ飲み込む。その後、半日ほど待機して、そこから異常が無ければ食べられると判断する。この時、異常があれば急いで水を飲んで吐き出す事。食べられると判断した後でも少しずつ量を増やしていけばいい」
ジョーはペラペラと喋り終る。
「師匠、すっごぉぉぉっく、めんどくさい」
カティアは腹の底から轟くような声を上げて否定した。
「……教えてくれって言っただろ? キノコ類とか山菜類もそうやって食べられる物を発見していくしかない」
「他に、他に方法は無いんですか?」
「まぁ、……あるけど……、そうだな……、飼いならした動物に食べさせて様子を見るやり方や、他の1人を犠牲にするやり方もある……」
「師匠、それって、食べた方はどうなるんですか?」
「そりゃあ……運が悪ければ、そのまま……」
ジョーはそこまで言って口を噤んだ。
毒を口にすれば、危機的状況の場合――結果は分かりきっている。
「師匠、キチク、そのやり方はキチクです!」
カティアはその後を察し、声を上げた。
「おい、カティア、メリーダとサイリアが寝ているから静かにしろ」
ジョーにそう言われ、カティアはハッとなる。
立ち上がろうとしていたが、中腰の体勢から座り直した。
「とにかくだ……そうならない為に一番簡単な方法は単純に知識を増やす事だ」
「「は~い」」
カティアもフィフィも返事を返す。
簡単な魔術検査方法でもあると思ったが、それらしい方法も無く、現実的で厳しい方法しか残されていない。
他の方法として――部屋を貸し切り、その中で器具を使い検査する方法があるが、それは現実的に一番かけ離れた方法でもある。
「緊急時には方法も道具も限られる。だから、こうやって安全な食事を食べられる時に食べておけ……」
ジョーはそう言って、お茶を飲んで喉を潤した。
***――閑話休題。
食事を終えたジョー達は後片付けを済ませると洞窟内の奥に行き木箱の積まれている前まで来ていた。
「カティア、フィフィ、そっちを引っ張れ」
フィフィとカティアは魔術の腕もどきを使い、懸命に木箱を動かす。
ジョーがそう言って木箱を退けると、地面の下に木板が何枚も地面に敷かれている場所があった。
ジョーはそれを取っていくと、地面の下は空洞になっていて、坂道のように真っ暗な道が続いていた。
「師匠、これは何ですか」
「わぁ~、暗いです」
カティアとフィフィ
「庭に続く道だ」
「ほうほう、裏口ですね」
「全く持って違うけどな……、じゃあランプを持って降りるからついてこい。カティアとフィフィは木箱鞄を持って来てくれ」
ジョーの命令に「わかりました」といってカティアとフィフィは敬礼する。
教官と新兵のような設定を唐突にやりだす2人だった。
そうして、ジョーを先頭に大人1人分の空洞がある、ゆるい坂道を降りていく。
「わぁ~暗い」、「なぜこんな空間があるのか……」、「まさに秘密の場所」、「いままで教えてくれて無いのには意味があるのかな」、「フィフィちゃん、秘密の場所は教えちゃダメなんだよ」、「そうだねぇ~」
などと会話をしながら道を進む事、数十秒。
「ほら、そんな、話しをしていると転ぶぞ。それに出口はすぐそこだ!」
ジョーの目線の先に日の光が入る洞窟の出入り口があった。
はい、炭の使用方法は色々本で調べた結果です。
特殊部隊の本を参考に使われている方法を採用してみました。
書いている最中、日本の【食べ物の安全性】を作者は再確認して感動しています。




