緊急昼飯会議1
ジョー達が洞窟に戻ると内部で音がする。少し籠った熱気が伝わり、中で影が動いていた。
確認するとサイリアの姿があり、包丁とまな板を用意し野菜をきざんでいる。
目の前には鍋が用意されグツグツと煮込んだ音が洞窟内に反響していた。
「大丈夫か……、顔色が悪いぞ」
「サイリア師匠、起きたんですね?」
「師匠、起きて大丈夫なんですか?」
ジョーを始め、カティアもフィフィも心配そうに駆け寄る。
振り返るサイリア、表情はどこか青白い、体調は優れないようだ。
「うん……起きられる位にはなったから……」
サイリアは返事を返した。
「バカだな……、まだ良くないだろ? 寝ていろ!」
「でも……昼飯の用意、3人だけで出来るの?」
「ウッ……」
ジョーは言葉に詰まる。サイリアに指摘された事はジョーにとって最大の難関でもある。ジョーは簡単な料理なら可能なのだ。しかし、それが万人受けする料理とは言い難い。普段の料理はすべてサイリア主導で造られているので、育ち盛りの2名の弟子達を満足するほどの味を再現できるとは言えなかった。
「それに、どうせ簡易食料で済まそうとか、携帯食料でなんとかやり繰りするつもりだったんでしょ?」
「ウッ!!」――図星を突かれ、ジョーは焦る。
『今日は緊急訓練の日だから食料も簡単に済ませるぞ』と言おうとしていたが、その目論見は外れる。
「カティアもフィフィも成長期なんだから訓練した後は、しっかりと栄養を考え無いとダメでしょ? スープだけでも身体に入れておいた方がいいでしょ? まったく……」
少し不機嫌そうに呆れた様子でサイリアは告げた。
「そうだな……」
「それよりも肉とかパンとかジョーが焼いてよ、カティアもフィフィも手を洗って来なさい、それから手伝ってね」
「わかりました、師匠」
「ハイ、いってきます」
2人は外にある水樽まで走っていく。
「本当に、大丈夫か?」
「うぅん……結構つらい……、でも、作らなきゃダメじゃない?」
「そうだけど……」
「そう思うなら皿とか用意し始めてよ」
「わかった……、用意しとく。そうだ、メリーダは大丈夫なのか?」
ジョーは思いだしたようにサイリアに尋ねた。
「うぅん、辛そうにしていたから先に寝かせた。後で……薬作りたいから“裏”の薬草畑にいって摘んで置いてくれる?」
「わかった、種類は?」
「エブラフの葉、アラウル草、タイム、メリックだけあったと思うから、出来るだけ摘んできて……」
「いいぞ、肉とかパンとか外で焼くから、それを作り終ったら寝てくれ。昼飯を作ろうか迷っていた所だったんだ。助かった」
「うん……」
サイリアは力無く答える。
***
その後、出来た飯を食べていく、ジョーとカティアとフィフィ、洞窟内での一休みとしてはお茶を沸かして静かに食べている。
傍で寝ているサイリアとメリーダへの配慮の為だ。
茣蓙の上に食事を並べてそのまま座って食べ始めている。
スープの容器に肉の焼かれた皿、お茶にパンと――それなりの食事が整っていた。
「美味しいか?」
ジョーは2人に聞いた。
「はい、でもいつもより味気ない感じ」
「みんなで食べるのに慣れたので……、2人がいないと寂しいです」
「カティア、フィフィ、そんなに落ち込むな。大体2日前後で直るから……、それよりも食事に関して質問する。仕事中に遭難した時、この中でもっとも必要な物は何だと思う?」
突然の質問をジョーはする。
食事中の雑談に交え、知識を教え込もうとしていた。
「えっと……、肉かパン」――カティアは答える。
「そうですね……スープでしょうか?」――フィフィは答える。
「カティアは外れ、フィフィは惜しい」
ジョーはそう答える。
「正解は何ですか?」――カティアは訊いた。
「正解はお湯(=水)だ」
ジョーはそう言った。
「師匠、また引っかけですか?」
「違うぞ、食料の確保で最も大切な事は水だ。それは肉やパンでもなく、水の確保が最優先になる。だから、さっきの訓練で水の確保をやらせただろ?」
「やりましたけど……あんな水、飲めません」
「……本当の緊急時には飲むんだよ。それにそのまま飲まないで濾過方法を教えただろ? アレをやってキレイな水の確保をするんだ。または、茶葉をいれて香りを変えたりしてお茶にして飲む。そうしてからパンとかを食べろ。逆に水が無い場合には食事をとってはいけない。おっと、水が無い状態で肉とか食べるなよ」
「ジョー師匠、どう言う意味ですか?」
フィフィが質問をする。
「そのままの意味だ、水が無いと食べ物の消化が出来ない。そして具合を悪くしてしまうからだ。脂っこい食べ物は避け、水に浸したパンとか、固形物の入っていないスープから飲んだほうがいい」
「ほぉ~、そうだったんですか?」
カティアは感嘆の声をあげる。ジョーの知識に舌を巻いた。
「あぁ、さらに、その辺にある水分の確保でいけない事は、川の水を飲む事、海水を飲む事、魔物の血を飲む事、あとは極寒地で雪をそのまま食べない事かな? この辺はさっき教えたな」
「「はい」」
「よし、では次の質問になる。食料確保ではその辺の雑草や木の実、植物の根っこ、果実などが取れる訳だが……、その中で最悪の場合、お腹を壊す可能性がある訳だ。そんな時、薬も無い状態だった場合どうすればいいと思う? ヒントはこの洞窟内にある物で代用できる」
「すこし……汚い話しですが……う~ん」――カティアは悩みだした。
「薬を作る? ちがうか、無いん状態でどうにかするのか……」―――フィフィも食べるのを止め考え始める。
悩み続ける弟子達をよそにジョーは食事を摂り、暫く待っていた。
「どうした、わからないか?」
「師匠、もう少しヒントを下さい」――カティアは堂々と助言をもらう態度だった。
「ヒントか……、目の前にある物だ」
ジョーに言われて、辺りを探す、2人、しかし“それらしい物”は無かった。
「師匠、……分かりません」
「もしかして、食べ物を食べて体力を回復するという事ですか?」
「2人共外れだな、正解は“コレ”だ」
ジョーはそのまま焚火近くにある火箸をもって、燃え終わった“炭”を取り出した。
「正解は“炭”でした」
ヤバい時に炭を呑め!
そう言われるほど活性炭は有効です。お部屋の空気の汚れ取りなど、一部(作者内)で万能説が出来上がっています。
ご使用方法は次回に書きます。




