緊急行動訓練
「ほら、掘れ、掘れ!」
ジョーは激しい激を飛ばして林の近くの地面を掘ってくカティアとフィフィを見ていた。
ケンスコップを持ちながら2人は地面を掘りあげていっている最中だった。
「師匠、うるさい!」
カティアは焦らせるように行動しているので少しイライラしている。
「ほら、早くしないと日が照ってくるぞ。想定は砂漠地帯、照りつける太陽から逃れる為に避難場所をつくるという設定だ。早くしないと暑さにやられて体力がドンドン奪われる事になる。早く2人分の穴を掘って場所の確保をするんだ」
そのように設定つけをして作業をやらされている、ジョーはその様子只見ているだけだった。
「魔術で掘れば良いと思います!」
カティア案を出す。
「ブー! ダメです。設定は残りわずかな魔力で発動できません。それにこの訓練は緊急時を想定している訓練だから楽をするな!」
案にすぐに反論するジョー。
「師匠、でも魔力の節約で……」
「いつも、ぶっ倒れて、寝ちゃうのは誰だ?」
「うゥゥ……」
「そんな顔をするな。訓練とは常に想定は緊急時なんだよ。体力満タン、魔力満タン、健康で体調もいい状態なんて訓練にならないだろ?」
「わかりました! 黙って見て下さい!」
カティアはそう言って黙々と掘り始める。
***――閑話休題。
「よし、四隅に木の棒を立てて……天井に張る布は2重にしろ」
ジョーは掘った後の穴の周りで造りを確認しながら次の指示を出した。
「師匠、なんで2重なんですか?」
「砂漠地帯はカティアが思っているより厳しいんだ。特に昼夜の寒暖差が激しい。水とかが無いとすぐに体力を奪われる。その為、移動は“夜間行う”のが基本だ。昼間の時間は日差しが強い、何も装備しないでいると2時間程度でフラフラになって死ぬ、その位の熱射があるので暑さを和らげる為に断熱の層を造る必要がある、その為の2重構造だ」
「そうなんだぁ~」
フィフィは驚きの声をあげる。
「そうだ、だが実際このように土が柔らかい砂地なので木の棒が立たない場所もある。その場合は盛り土して周り積み上げて、おもしで固定する方法もある。少しの変化だが何度も挑戦して作業時間を取られないように応用したやり方も覚えておいた方がいい」
「わっかりました。すぐにやります」
カティアはジョーの説明をきいて、元気な返事をしていった。
「よし、これが終わったら極寒地方と熱帯雨林地方のやりたかも教える。冒険者は色々な場所に行く可能性が高いので応用したやり方をすべて覚えるんだ」
「「ハイっ!」」
カティアとフィフィは元気よく返事をした。
***――閑話休題。
「これが熱帯雨林地方のやり方だ。違う部分は地面から高くあげて寝る場所を確保する事。木々の組み合せる時に紐をしっかりと縛る事を確認していくべきだ」
ジョーは木のくぼみに木材を差し込み、三角に近い台形の型を造った土台をつくり、脚をつけ高床式の寝床を造る。上には雨避けの防水シートをつけての簡易式であった。
「師匠、なんで床を高くして寝るんですか?」
カティアは疑問を呈す。
「簡単にいえば熱帯雨林地方は急激な雨が多い、その為地面がぬかるんでいるので濡れて体力を奪われる事が多い。そして最も厄介なのが虫だ。小さい虫でも毒を持っている奴がいて刺される危険があるからだ」
「でもそれだと砂漠地方も毒持っている奴がいますよね?」
「そうだけど、あっちはそれよりも熱波が厄介だ。カティアのいうとおり毒を持っている生物もいるが、それよりも木が無い。もしあったとしても高床式だと魔物に見つかりやすい不利な点が出てくるわけだ。……違う選択肢として『洞窟』という選択肢もある事はある。設置等の時間が省けるが……、しかし、一概に良いとは言えない。魔物の住処である可能性もあるし、逃げ場所が少ないという不利な点があるんだ。常に状況によって有利、不利は受け入れ、その上で考えるわけだ」
「それを選択していくのですね」
フィフィは言う。
「そうだ、常に完全に有利とは限らない。その時の状況、仲間の体力、手持ちの装備も含めた“総合的な判断”が求められる。例え、寝床1つにしても……な。それよりもハンモック形式の寝床が作れるならそっちの方がいい」
「「わかりました。ジョー師匠」」
「よし、今度は極寒地方のやり方を教える」
***――閑話休題。
「小さいけど、つまりこう造るわけだ……」
ジョーは“かまくら”方式の緊急避難場所を造っていく。
現物と20分の1スケールで――これは、雪なども無く、先程掘った土の残骸を利用している。(※重力の関係で実際作っても上手くいかない可能性あり)
始めに木の角材(小さい)を置き、その上に土を被せ固めていく。そして、脇から掘っていき角材を取り出し空洞を完成させる。
それを屈んで見ているカティアとフィフィは砂場で遊んでいる子供のようでもある。
「ここまでは分かったのか?」
「はい、問題ありません。荷物に雪を掛けて、その後で固めて脇から抜き出すんですよね?」
「その通りだ。カティア、その時に雪の量を確認する事。足りないと悲惨な事に寝ている時に崩れる恐れがある……」
「……それはヤダ」
「そうならない為に完成後、水を掛けるというか、炎魔術で表面を軽く溶かすと、水になってすぐに気温の関係で氷になるので表面が少し強固になるというテクニックがある」
「ほうほう、裏技ですね」
「そうだけど……アホな奴は、この時に全部溶かすとかバカをやるので魔力量の調整は必須だ……」
ジョーはしみじみと昔を悔恨した。
「師匠、いたんですか、そんな人……」
「あぁ、ひとりだけな……。そんなことより、これから内部について説明していく」
ジョーは砂山の城を崩すように砂を半分取り除く。
そして、手を動かしていく。
「いいか、寝る場所よりも一段低い場所を造ると冷気がソコに流れ込む、風呂とかで冷めたお湯があると、下が冷えて上がぬるま湯の時があるだろ? 暖かい空気と寒い空気を利用する……」
――今度は壁に指一本分の穴を開けていく。
「必ず、通気口を造る事、最低でも2つだ。そうする事で換気される。一段低い所に出入り口を造るとベストかもしれない」
――寝床に木々を置いていく。
「床は雪なのでそのまま寝たら身体が凍る。なにか遮る物を置くように、木でもいいし、動物の毛皮や極寒地で使われるシートなんかも有効だ。そのまま寝たら『翌朝、死んでしまいました』という事態もある」
カティアとフィフィは作業を見て真剣に頷いている。
そうして、全ての事を教えていくと、再びカティアとフィフィの前にジョーは立つ。
「よし、これが大体の事だ。他にもあるが一番はこのように温暖な気温で食料も水も豊富な場所が良いという事になる。このやり方はあくまで緊急時という事を忘れるな。しかし、知っていると知らないとでは生存の確率がグンッと違ってくるので覚えておく事」
「「ハイ! ジョー師匠!」」
「よし、次は魔術を使わずに水を集めるやり方を教えていく」
ジョーは熱い目を2人に向けた。
考察と展開について。
修行編と書いておきながら、最近まで訓練内容がサバイバル生活に移行している感じがする。
しかし、どうしてもやっておきたい話の1つ。
冒険者を教える上で、生存訓練を欠いた状態で戦闘訓練だけをやるのは不自然ではないだろうか? という思いが前からあり、そんな部分の話もアリだと作者は思っております。




