命をいただく5 【※グロ表現あり】
カティア達が元にもどると、フィフィも帰って来ていた。
さきほどより作業が進んでいて、皮も剥がされ、内臓も無くなっていた。
ジョーはニカっと笑い、「さぁ、席につけ」と元気よく言う。
カティア、フィフィ、メリーダは促されるままに元いた席に座っていく。
「よし、揃ったな……次は枝肉にしていくから、肉の塊を解体する作業を見せよう」
ジョーはそう言って弟子達に告げる。
先ほどから手袋を変え、道具もノコギリを持ちだしていた。
それからジョーはさっそく腰周りの骨にノコギリをあて切りだした。
「腰まわりの骨は大きく硬い、なので中心線にそって半分にしていく、肉を解体する時、皮膚は完全に剥がしておく事、余分な脂肪も取った方が美味しくなる……」
そういってそのまま背骨の部分に切れ込みを入れると、道具を持ちかえ、大きめのナタで一気に脊髄を割った。
「まずは、こうやって半分にしていく。あとは部位によって切り分け枝肉にしていくんだ」
ジョーは真っ二つに割れた肉塊を見せた。
その後でまた道具を取りかえ、脇の部分に切れ込みを入れていく。
そして、そこからは一気に枝肉に変わっていく水馬の肉塊。
「ほら、これがネック、カタ、カタロース……、カタバラ、ヒレ、だな、骨がついているけど美味いぞ」
ジョーは豪快に肉を切り分ける。
そして、サイリアが助手として優秀に動き、作業台の上に切り分けられた肉が並べられる。
「ここが背中だが、美味いリブロースの部分だ。一般的に高級肉の部位だな」
――その後も、ウチもも、しんたま、ランイチ、スネ、そともも、と部位を切っていった。
すべての部位が枝肉に分かれると、今度は余分な脂肪を取っていく。
その作業はサイリアとジョー2人で行っていた。
「これは余分な脂肪は身体に悪いから、こうやって取っておくんだ」
ジョーは作業をしながら見せつけるように包丁を動かしていく。
「そうして、出来た肉を布で包んで“保存箱”の中に入れていきます。細かすぎると使うのも大変だし、大きすぎると余計な隙間で無駄になるので、そこは勘と経験でなんとかしましょうね……」
サイリアもそういってカティア、フィフィ、メリーダに注意事項を述べていく。
そうして―――数分後。
「よし、これで解体作業は終わりだ。時間が掛かってしまったけど解体作業は1刻(=2時間)以内に済ませるように出来る事が目安になる。後は道具の洗浄と場所の片付けも大事な事だ。そして、あまった脂肪や骨などの処理も済ませるように、特に、その辺に捨てるなんて事をしてはいけない……」
「「「わかりました、ジョー師匠」」」
「俺達は、こんな時に“こういう方法で処理”をしている」
ジョーは後方に目線をやると――蛇腹刀が樽の中に置かれ、サイリアがソコに残った骨や余分な脂肪を投げ入れていく。
そして、すぐに[ゴリゴリ、ポリポリ、ギュチャリ、ネチャリっ]と音がして、【おやつとしてはまあまあだな、サイリア、もう少し肉も入れてくれ】と催促していた。
実は――急に消えた内臓も同様の方法で処理を行っている。
「ああやって余計な廃棄物の処理が出来るのも冒険者としての気構えの問題になる。俺としては、カティア、フィフィ、メリーダにそんな下品で無計画で周りに配慮のない冒険者になって欲しくない、もし、このような事になったらしっかりとした処理行動をしておくんだ」
「「「わかりました、ジョー師匠」」」
「よし、いい返事だ。これより、最後の勉強に入る」
ジョーは弟子達の声から納得の表情を浮かべ、真剣に『最後の勉強』という言葉を伝える。
「ジョー師匠、最後のってなんですか?」
カティアはすぐに質問した。
「うん、水馬の解体も済んだ事だし、そのお肉を昼飯代わりに食べる事にする。さあ弟子達よ。ここからは一緒に手伝うんだ」
ジョーの言葉にカティア、フィフィ、メリーダは――意気消沈、混乱波乱の怪訝も怪訝な表情をジョーに分かりやすく見せていた。
先ほどまで、解体した物体のお肉をイタダク事など、想像しただけで遠慮したかった。
「おいおい、なんだ、その表情は、『命をいただく』それこそ食べないといけないだろ?」
「でも、やだ……」
「さっきの光景が頭に……」
「さすがにすぐには……」
3名の否定的な意見が飛び交う。
ジョーは首を傾げ。――(普段も肉とか魚とか食べているだろ? やっぱり内臓まで見せるとダメなのかなぁ~)と、どこか納得する。
しかし、気を取り直し。
「でも、手伝って食べるんだ。そうすることでより生きる事への感謝が出来る!」
そう強く命令した。
***
グツグツと煮立つ湯気。
包丁とまな板のぶつかる音。
肉の焼ける匂い。
女性陣の声が聞こえていた。
「サイリア師匠。これってどう切るの?」
「カティア、煮るからこういう風に切れ込みを入れてね」
「食卓の用意が整いました」
「わかった、先にみんなの分のスープをお願いね。メリーダ」
「はい、畏まりました」
「サイリア師匠、お肉がちょうどよく焼けています」
「うん、それもお皿によそっておいて」
――などと、楽しそうに調理をしている。
ジョーはそれを見ながら、丁寧に解体に浸かった道具を洗い、布で脂をふき取っている。
***
「いっただっきま~~~~す!!!!」
元気な声が洞窟前の広場に響いた。
食事の準備が整いそのまま昼食が始まる。
作業中に気分の悪くなった者が多発して食事が喉を通らないかと思っていたが――調理中の匂いと自然とお腹が空く時間が重なって、本能的に食欲が勝っていった様子で、始めの頃よりもガツガツと水馬の焼いた肉を頬張っていく。
「おいてぃ~いい」
「柔らかな肉、美味い!」
「あら、スジも無いですし、融けるようです」
解体したばかりの肉に塩と山で採れるスパイス類を振りかけ、骨付き肉を炙っているだけなのだが、肉の本来の旨味がそのまま出ているので好評であった。
「よし、綺麗に食べるんだ。すべてをやってこそ、今回の授業の終了となる」
ジョーはそういっておおむね満足していた。
「よかった、みんな喜んでくれている……、やっぱりやってよかった」
サイリアは感慨深く、目を赤くしていた。
しかし、何故、ジョーが解体ショーなどという事をやりだしたかというと――実は近年解体出来ない冒険者が増えたという事が書物(=バイブル)に書かれており、『やばいな、最近の子は解体も出来ないのか……』と心配になったためである。
『冒険者はなんでもできるようになっていた方がいい、なぜって? そっちのほうがカッコイイからさっ!』――という、冒険者の金言が伝わっていたのも関係しているかもしれない。
その晩、ジョーは夜中に悲鳴と寝言を聴いた。
カティア、フィフィ、メリーダは水馬の事が夢の中に出て寝言を言っているのを――。
本日使った解体道具についた脂を丁寧に拭きながら――ジョーは静かにほほ笑んだ。
「これで『命をいただく』という事が理解出来た……かな?」
【ジョー、アレは見てはいけないモノをみて魘されているだけだ……】
スネークは的確にツッコミをいれた。
本当はタンとかの切除部分や、レバーペーストにする話、など詳しく書きたいのですが基本的な事に留めておきました。
しかし、なんでしょうか? 解体した映像を見た後でステーキを見ても美味しく感じなくなっている自分がいます。
考察。
色々書きましたが、内臓関係の処理はスネークに一任してあります。
あれです、ご都合の為です。
ソーセージなどを作ります――編とか考えたんですけど。それじゃあグルメ小説じゃん、と自身にツッコミをいれ、この解体話はここまでにさせていただきます。
屠殺の話ですが、タイトル通りに最後は命をいただいて食べるんですよ! というメッセージです。
ジョーとサイリアの冒険者としての戦闘外の技術を見せたい話でした。




