命をいただく1
「ジョー師匠、凄かったんだよ~ぉ!」
カティアの揚々とした声が、夜空の出始めた場所に響いていく。
それは隣にいるフィフィに話しかけていた。
辺りは暗く、焚火と食卓の上に置かれランプがその場所を照らす中でジョーを始めとする集団は夕食を摂っていた。肉料理を始め、スープ、パン等の置かれた皿が食卓の上にあがり。そしてジョー用の麦酒も置いてある。
パンに齧りつき、カティアは自分がやったように得意気に話しをしていた。
「はぁ~、寝ていたから……、でも、見てみたかったぁ~」
フィフィはそう言って嬉しそうな顔でカティアの話を聞いていた。
「向かっていって、すぐに首を飛ばしたの、それも水に浮くように歩いていくんだもん。水馬は何も出来ずじまいだったんだよ」
「ほぇ~、水の上って歩けるんだ。どうやって歩いたの?」
「フフフッ、それは師匠の“ミズグモの術”で歩いたのだよ、フィフィちゃん」
少し溜め気味にカティアは答える。
自分だけが目撃した光景を自慢するようだ。
「ミズグモ……? ってなんだろう?」
フィフィは不思議な顔をした。
「さぁ……とにかく、水に浮くのかな?」
フィフィにそう言われたが、カティアも正確な答えは持っていない。
そのまま言われた言葉を鵜呑みにしてしまっていた。
「お前達、早く食べなさい……それとも、もう、いらないのか?」
ジョーは弟子達に注意をした。
「「は~い、師匠。食べます」」
そんな返事をしてカティアとフィフィは食事に戻っていった。
「それで、師匠、ミズグモって何ですか?」
カティアは食事をしながら質問をした。
ジョーはスープを飲んでいたが、食器を置いて――。
「あれだ、沼地や川辺にいる蜘蛛のことだ。南部ではその動きを真似て水に浮く術がある。そいつは蟲でありながら水の上に浮いて移動できる奴なんだ」
「へぇ~、それでミズグモの術なんですね」
「そうだな……動物の動きを真似ていく名前が多いな……何かを象形する事が武道では多く使われる。その多くが合理性の追求によってなされている」
ジョーの言い方にカティアやフィフィは不思議そうな顔をした。
「しょうけい? 合理性?」
「師匠、動きを真似るとは?」
フィフィは何かを考え、カティアは質問をした。
「なに、魔物もすべて同一の強さでは無い事は知っているだろう? それは前に教えた“適応”についての話だ。魔物の縄張りではあっちが有利な事は教えたよな?」
「はい、知っています」――カティアは瞬時に答える。
「なら、なぜ強いのかは分かっているはずだ。その場所に適応したからだ。何かを真似るにしても山の獣と川の獣では身体の造り自体が違う。空を飛んでいる魔物と地上の魔物の形が違うように……、そして俺達はどちらも不利に出来ている。しかし、どこにでも対応出来る頭を持って生まれたので、その能力を活用して合理的に生きなければならない……」
「でも、その合理的っていうのは?」
「あれだ、強いヤツの真似をする事だ。そうすれば強くなり、そして、その相手の弱い部分を探して考えて攻撃する事だ。それはこの修行中に教えているぞ、全ては繋がっているのだよ……フフフっ」
ジョーはそうやって笑う。ニヒルな笑いだった。
「でも、師匠。さっきの水馬の戦闘ではわざわざ水辺に入って行きましたよね? 相手にとって水辺って有利じゃないですか?」
カティアはジョーの意見に反論するように言う。
確かに、先の戦闘ではジョーは水辺の中に入って攻撃している。
カティアに教えていた事と真逆の行動をとっているのだ。
「まぁ、そう映る事だろうな……。でも、あれも理だ。つまり急激に近寄る事に寄って相手の選択肢を取り除いた、水馬は始めから遠距離で攻撃する為に水弾を出した。でも魔術攻撃っていうのは距離が必要だ。だから撃った後、すぐにかわせば、次の選択肢の幅が狭まる、そして……次を撃つまでに近寄ってしまえば、相手は距離をとるか、そのまま防御しかない、そのまま迎撃も出来ないほど動きが鈍かったから、後は水の膜を張るか、背走するしかないので、その距離なら俺が勝つ。距離による危険度の話しは授業で教えているだろう? 近距離では魔力を込める時間も無くなり結果中途半端な水の膜を出してきた。その時、俺は体勢もよく、力も込める剣撃が可能だった。結果――水馬の首が飛ぶ事になった――という訳だ」
「じゃあ、あの動きはすべて計算だったんですね!」――カティアは力強い目を向けた。
「そう言う事だ。魔物の動きを見れば、興奮状態であった事と気性の荒さが出ていた事に気がつく。繁殖期近くで食料を探し、若くて緊張していたのだろう。その結果、俺の強さも計れずにそのまま戦闘を仕掛けてきたという訳だ。普段だったら水馬っていうのは何十、何百というグループで生活する魔物だ、それに渓流沿いではなく、流れのゆるい河に住む魔物だから、出会ったのは偶然だろう……」
ジョーはそう言って洞窟の入り口付近に置いた、水馬の死骸を見る。
しっかりと浮遊する板の上に置かれ、布をかぶせ、保存の魔術を掛けてあるので、腐る心配もない。四肢を切り取り、血抜きも終えている。そして、その処理は全てスネークが終る。
「でもジョー師匠、それでアノ水馬の死体はどうするんですか?」
フィフィはそう尋ねた。
「そうだな、このような場合には冒険者としてやらなければならない事がある。1つは埋葬をする事。そのまま放置って言う事は匂いを放ってしまいあまり好まれない、それに悪精霊に取りつかれて“腐食魔物”になって徘徊する事も考えられるので、処理方法では火葬して骨を砕き、精霊水をかけて清める行動が一般的だ。まぁ、だけど……、そこまでやるにしてもカネが掛かるので焼いて埋めるだけにしている冒険者が大多数を占めているけどな……。
それが1つ。もう1つは食べる事だ、水馬っていえばこの地方では高級肉に分類される。特に牝の肉は柔らかく美味い、さらに若い方が脂も乗っていて美味いそうだ」
ジョーはそう説明していく、そして食用にしていく報告をした。
つまり、あそこに置かれているモノを食べると宣言する。
「それじゃあ、ジョー師匠、アレを食べるんですね」
フィフィは目を輝かせていた。
「そうなるな……」
「でも、どうするの、ジョー? 保存の魔術はそんなに長く持たないけど……」
サイリアは心配そうに訊いてきた。
町にはまだ戻らないので時間が経ってしまうと効果が切れた時、腐り始めてしまう恐れがあるからだ。
獲物の処理は出来るだけは早くした方がいいと――冒険者の中では常識的な事だった。
「明日、“解体作業”をしよう、この修行中に食べればいいだろ? 基礎訓練が終わったらそこら辺で解体をする。これも良い経験になるだろう」
「師匠、解体なんて、できるんですか?」
「わたし、見た事無い……」
「ここでは少し不衛生では?」
弟子達は一斉に騒ぎだす。
カティアからしてみれば始めてする。――つまり、初体験であった。
「出来るよ、解体技術は冒険者になれば必須と言っていい技術の1つだ。覚えておいて損は無いだろう……」
ジョーはそう言ってスープを一気に飲み干した。
そして肉に齧りつき、そのまま麦酒を胃袋に流し込み。
「フフフッ、染みるぜぇ~」と感慨深い言葉を出していく。
次回から【グロ表現】があります。
見たくない方は中止してください。
心臓の弱い方も読まないで下さい。
見た後で、よくもこんなの読ませやがって!と思ってしまう方も中止してください。
後々、作者に文句を言うのはやめましょう。
タイトルに【※グロありマス】と表記しますので注意しましょう。
よし、これで何を書いても大丈夫。
屠殺の話ですので、牛豚の解体です。
注意書きは済ませました。後書読まない方も、先に出しておけば法には触れません。




