集団戦闘訓練5
「それじゃあ、もう一度同じ訓練をするぞ。先ほど見せた土人形達の“だいたい”の能力は頭に入れたな、今度は能力が分かっている相手だ。どうやって突破するのか考えていくんだぞ」
ジョーは弟子達を前にもう一度始めの時と同じく説明をしていく。
「「「ハイ、師匠!」」」――同時に返事が弟子達から返ってきた。
【それじゃあ、始まる前に私からもアドバイスを送ろうと思う】
ジョー背中から蛇腹刀が喋り出した。
「なんだよ、急に喋るなって、それに過剰なアドバイスを送るなよ」
ジョーはそう注意する。
【稀にはいいだろう。では、良く聞くがいい、未熟な冒険者達よ……――】
スネークはそう、預言する者のように告げる。
やたらと雰囲気を出し、さも重要な神託のように行った。
【――まず、集団戦闘訓練という事を自覚しろ。次に戦闘に連続性を持たせること、“繋ぐ攻撃”が特に重要になってくる。そしてもっとも重要な事は魔術士の位置である。『魔術士はつかず離れず、包むように配置すべし、中途半端な位置は最悪だ』という言葉を送ろう】
そのスネークの言葉に――
「連続性、繋ぐ?」
「魔術士ってわたしの事だよね、どうすればいいの?」
「集団戦闘訓練という事ですか?」
カティア、フィフィ、メリーダはそれぞれ混乱してしまっている。
【そうだ、これを刻まなければ、この訓練はクリアできないだろう……】
「ちょっと、スネークさん、質問です。どう言う事ですか?」
カティアは手を上げて質問した。
【分からなかったか? 仕方ない……】
スネークがそこまで言うと、ジョーは柄を叩いた。
「そこまでだ、スネーク。後はカティア達に考えて貰う必要がある」
ジョーは途中で話しを遮った。
【そうか、それなら仕方ない。では、カティア、フィフィ、メリーダよ、教えは以上だ】
――そう言って柄にある瞳が閉じてしまった。
「そう言う事だ、それを踏まえ戦略を考えてみろ、時間は少しやるから“みんな”で考えるんだぞ」
ジョーはそう言って手を叩いて合図をした。
そのまま――弟子達の質問に答えないまま訓練は始まろうとしていた。
***
「でも、どうやったらいいのかしら?」
「カティアちゃん、魔術士の位置が勝敗を分けるみたいよ?」
「お嬢さま、集団戦闘訓練とは普段の通りに戦う事では無いのでは? 助言に従いましょう」
カティア達は河原にある白旗の近くで岩に座って話し合う。
地面にはそこら辺にある石を置いて簡易的な訓練場所の地図を制作していた。
「そうね、でもあの数が問題よね。それにゴーレム達はどこでも移動可能でしょ? すこし卑怯な感じもするんだけど……」
カティアは木の枝を動かし、悩ましい表情をした。
「それは、土そのものだから仕方のない事だけど……。でもね、分かった事が1つあるよ」
フィフィはそう言う。
「エッ、なに、何なの?」
「あのね。囲まれた時に岩の上に逃げたらゴーレム達が追ってきたんだけど……、あの時に出現するポイントは地面だけで岩からは出てこなかったの……」
「そう言う事ね。つまり岩自体からは身体を造れずに地面の土や小石から身体を造るのね?」
「うん、そうだと思う」
「さすが、フィフィちゃん」
「えへへへへッ……」
――フィフィはハニカミながら笑った。
「それはいい発見ですね。それではお嬢様、私からもよろしいでしょうか?」
メリーダは笑顔になりカティアに尋ねた。
「メリーダも何かあるの?」
「はい、基本的な事ですが……。今回はハンドサインは止めた方がいいと思います。声を掛けあい位置の情報と敵の出現するポイントを常に教え合っていく方が効率的かと……」
「そっか、師匠達と移動中はずっと静かに移動していたから静かに移動する癖が付いたけど訓練では声を出し合っていいんだ」
「そうですね、そう言う意図でジョー師匠は“声を掛けあえ”と言っていたんでしょう」
メリーダはカティアにそう伝えた。
「授業の本にも集団戦はこれから何かをする時に短い言葉で意味が伝わるように行動した方がいいって書いてあったね」
フィフィもそう言って同意する。
「じゃあ、これからはゴーレム達をみたら各自で声をだして行きましょう」
「はい、」「うん、わかった」
カティアの決定にメリーダとフィフィは頷いた。
「でも、それだけじゃダメよね。そのまえにフィフィちゃんの戦列はどうしよう……、スネークさんが何か言っていたけど……」
「たしか、包むように配置するだったよね」
「ですが、近すぎず、離れすぎず、半端でもダメだと言っていました」
そうやって――これからの戦略の確認を煮詰めていた。
***
「ピキュー、ピッ、ピッ、ピキュキュキュ」
ノームが何かを訴え、サイリアの手の近くで喋っていた。
「ジョー、ノンちゃんがね、特性に気付きだしたって言ってるのよ……、岩からは身体をつくれないって分かったみたい」
サイリアは座りながらカティア達を遠くに見ているジョーに情報を告げた。
「わかった、でも、まだまだだな。他にも気がつく事はあるぞ」
ジョーはそのまま岩上に達、腕を組んで待っていた。
「でも、少し卑怯じゃない? 作戦中の話しに聞き耳を立てるなんて」
サイリアはジョーに問いかけた。
現在はノームの力を借りてカティア達が作戦会議を行っている場所の近くに『分散土人形』を飛ばして、その分身が諜報した内容をノームがサイリアに教えていた。
つまり、カティア達にとって――極秘の内容が、完全に漏れている状況なのだ。
「別にいいだろ? 弟子達がどう考えているのか知るのも師匠にとって必要な事だし。“実戦”を想定した訓練ならば、もっと隠密に話し合う事も必要だという事を知らす為であり、そしてノーム自体の能力を教えて欲しいと言わなかった、弟子の情報不足の隙の多さの問題だ。そして、『なんでもアリ』と事前に通告している」
ジョーは悪びれもせずに返事をした。
その言葉に――「カティアもフィフィもメリーダも大変よね、こんな意地悪な師匠を持って……」と同情した様子で嘆息を漏らした。
「何か言ったか?」
ジョーは振り向く。
「いいえ、このまま情報収集を続けさせてもらいます」
仕方なしにサイリアは返事をした。
「そうしてくれ……」
そういって、またカティア達の方に向き直った。
「まぁ、この訓練は、気がつくまで、ずっと負け続ける事が決まっている訓練なんだよ……な」
ジョーはそう悪い笑みを浮かべて呟いた。
情報戦は勝敗をわけると言います。
実は特性についてノームとゴーレムは感覚を共有しています。
変形し、耳のようにつかって隠れるように話を聞いているのです。
前回の時にゴーレムの特性についての話を入れてきましたが――魔術的な応用の話でもありました。
そして――訓練では何でもアリなので卑怯は方法ではなく、正統派の話で無くてもOKだと思っています。




