集団戦闘訓練4
(カティアは『負けた』とは言わずに、恥も気にせずに強気に知ろうとするな……)
ジョーはそう思い、ニタニタと笑っている。
「なんですか、師匠?」
少し怒り気味にカティアは聞いた。
「別にいいけど、カティア、さっきは“敗け”なんだからちゃんと反省して次は上手くやるんだぞ」
そうやって嫌味を込めて注意する。それも優しく、カティアの自尊心に触るように。
「いいえ、先程の勝負は“コテ調べ”です。“練習試合”です。本番ではありません!」
「プ――――ッ!ククククッ……」
ジョーは思いっきり噴飯するほど声をあげ、その後、必死に笑いを堪えていた。
それは余りに負けず嫌いの発言で可笑しくなってしまったのだ。
――サイリアも同じ様に笑っている。
「師匠達、なにがおかしいんですか!?」
カティアはプンスカと怒り出す。
「悪かった。もういいから……、サイリア説明してやれ」
「わかったわよ……、じゃあ、ノンちゃんお願いね」
サイリアは笑いながらノームに命令して土人形達を動かしてもらった。
***
「じゃあ、いいかしら、これが『集合体土人形』よ」
サイリアの説明に従い――土人形が10体ほど合体しウネウネと身体を集合させて、手足の太く、胴体も大きい3メートル程の土人形が現れた。
「大きい……」
「腕が太いね」
「圧がありますね」
カティア、フィフィ、メリーダはそれぞれその姿をみて感想を言う。
マジマジと見上げて細部を確認していた。
「土人形10体分の重さもあるし、大きいから力持ちなの、でもね、その分動きが少し鈍くなるわ」
サイリアの説明に従い“集合体土人形”はシャドーをするように腕を振り回し、動きの鈍い蹴り足を見せた。
「でもね、大きくなるから腕に長さがあるの、それに威圧的でしょ、胴体が太い分、倒すのも大変になるのよ」
そんな長所と短所を説明していく。
***
「次は『手型土人形』よ、これは単純にゴーレム自身の形を変えるだけの性質なの」
サイリアに命令に1体の土人形が形を変えて手と腕だけの形に変わっていく。
「変な格好になったわ」
「地面に生えているみたい……」
「土人形といっても色んな形があるんですね」
先ほどと同じ様に弟子達は感想を言う。
そう言って、カティアが不意に“パー”にしている手に“チョキ”を出したら、ゴーレムは“グー”に形を変形させた。
「サイリア師匠。このゴーレム面白い!」
カティアは目を輝かせてそう言う。
「わたしもやってみるね」
フィフィはそう言って「ジャンケンポン!」と言って手遊びを楽しむ。
「そうでしょ? でも実際に操っているのはノンちゃんなのよ。すべて命令し動かしている存在なのよ」
サイリアはそういって肩に座っているノームを見た。
――ノームはそのまま手を振っている。
「へ―、そうなんだ。ノンちゃんが相手をしていたのね」
カティアは言う。
「そうなの、ノンちゃんは凄いのよ。それに変形できるのは手だけじゃなくて脚にも変形出来るの」
サイリアは嬉しそうにそう言うと――「ピキュゥゥゥッ」とノームが嬉しそうに声を出した。
***
「じゃあ、次は『分散土人形』よ、1体、1体小さい土人形が出来上がるの」
サイリアの説明によって、1体の土人形が崩れていき、小さい球体になると、今度はその1つ1つがウネウネと動きノームと同じ15センチ程の大きさの土人形が生まれた。
「わぁー、小さくなった」
「可愛くなったね」
「これは1つ部屋に欲しいですね」
先ほどと同じ様に弟子達は感想を言う。
そして今度は渇愛する目で土人形達を見ていた。
“分散土人形”――サイリアの肩にいるノームと同じ様に地面で踊っている。
「小さいけど、こう言う風に分ける事で色々と活用出来るの。例えば隙間とか私達が通れない場所とかにも入っていけるし、偵察を兼ねて使う冒険者もいるのよ」
サイリアはそう説明を加えた。
「すごいですね。土人形は色々な使い方が出来るんですね」
フィフィはそうサイリアに言う。
「そうよ、でも土人形の魔術だけじゃなくて、殆どの魔術は応用に満ちているわ。フィフィも魔力操作を極めて、その幅を広げてみなさい」
サイリアはアドバイスを送った。
「はい、わかりました、サイリア師匠」――と、フィフィが返事をする。
その横でカティアは機械体操のように精密に同じ動きを続ける土人形達を無言のままメリーダと一緒に見続けていた。
そして、急にサイリアの方を振り返り――「サイリア師匠。これってどうやって動いているんですか?」――と、突飛な質問をする。
「急に、どうしたの、カティア?」
サイリアも突然のカティアの質問に驚いた。
そのままカティアはサイリアに駆けよっていくと――
「気になったんですけど、土人形ってどうやって動いているのかなって。物を持ったり、投げたり、動きまわったり、いろんな動きをするんですよね? どこで命令しているのかなって。自分で動いているんですか? それとも動かしているんですか?」
カティアの質問は、土人形は自動操作か遠隔操作という話だった。
その1体1体の複雑な操作をどうやってこなしているのか疑問が湧いたのだ。
普段、魔弾の遠隔操作に苦しんでいるカティアらしい質問だった。
「えぇ、そう言う事! そうね……、それの説明は難しいわね。コレをこなしているノンちゃんは元々が“土”そのものなのよ。だから自分の手足のように動かせるの、数が増えても複雑な操作まで出来るし、感覚の共有が可能だからなのよ。でもね、私がやったら同じ様な動きで6~8体程が限界かな? 数は出せるけど多くなるほど単純な命令しか出来なくなっていくのね、歩く、攻撃する、隊列を組む、防御するとかの動作を加えるだけだと20体程度が限界かも知れないわね。それ以上だと全部が同じ動きになちゃう感じかしら……」
サイリアはそうやって説明していく、何かを精密に動かす動作とは自分自身がやる事でも大変であり、それを遠くにいる他の者を動かしながらやろうとすれば多大な訓練時間が必要になってくる。
「そうですか……、勝手に動いてくれる訳じゃないんですね?」
カティアはそう少し残念そうに言った。
「あら、勝手に動くと思っていたの?」
「そうなれば、魔弾も操作出来るかなって思って」
「う~ん、確かにそんな技術は可能だったかもしれないわね。条件さえ整えば追尾してくれる魔弾も出来たと思うわ……」
うろ覚えのまま、サイリアは昔の魔術書の内容を思い返していた。
「本当ですか、師匠! 教えて下さい!」
「カティア、まだ、ダメよ。順を追って訓練していきましょうね。向上心が有るのは良いことだけど、基礎を疎かにしては成長にも良くないわよ」
「え~、ダメですか?」
カティアは潤んだ瞳で見続ける。お願いする時に使う常套手段だった。
「ダメです。まずは基礎から、応用するのはまだ早いわ」
サイリアはピシャッと断った。
「ちぇッ~、師匠のケチ」
「ケチじゃありません、ほらほら、カティア、次は“本番”よ。準備しなきゃダメでしょ」
サイリアの言葉を合図に集団戦闘訓練“2回目”の本番が始まった。
こっちも再開します。
ゆっくりではありますが更新を続けていきます。




