集団戦闘訓練2
真正面から突っ込んでくるカティアに土人形達が一斉に身体埋め込んでいる石で投石を行った。
河原で弾となる石は無限近くある。そして不思議な事に土人形達は手をかざして石が飛び出すようになっていた。
「キャッ、何ッ?」
あまりに突然の攻撃にカティアは声をあげ、緊急停止した。
そして振ってくる石の雨を避けるように岩陰に隠れる。
(あんな攻撃があるなんて……)
カティアは動揺していた。
土人形なんてただの人型の土の塊で命令通りに動く存在だと、攻撃も棒を振り回す位しか出来ないだろうと勝手に解釈していたのだ。
「カティアちゃん、大丈夫?」
後方からフィフィが岩陰に潜んで声を掛けてきた。
徐々にではあるがメリーダと共に前に距離を詰め始めカティアの援護に回ろうとしている。
「大丈夫、フィフィちゃんもメリーダも気をつけて、投石みたいのが飛んでくるわ」
カティアもそう言って後方に下がった。
その間も――雨のような投撃は続いていく。
***
「ジョー、この後どうする?」
サイリアが訓練場所を見下ろしながら質問した。
「カティアは後ろに下がったんなら進路を塞いでしまえばいい。そうしたら、またカティアは力ずくでくるだろうから……アソコとアソコの岩陰に土人形を待機させよう。道が狭くなっているから、ソコを通るはずだ。前線に20、後衛に10に分けて移動してくれ」
ジョーが指示した場所は巨岩がある間だった。
地上からくればソコを通る方が近道である。
「でも、ジョー……、カティア達は岩をよじ登る可能性もあるんじゃない?」
「それは問題ない、まだ正面からの戦闘しか知らないカティア達だ、今頃、焦っているさ。それに来たら来たで対応策もある」
ジョーは静かに戦場を眺めてそう言う。
「そう、それならノンちゃん、お願いね」
「ピキュゥゥ――!!」
ノームの声が響き渡る。
***
「カティアちゃん、どうしよう、なんか予想より強いよ……」
「でも、突破するしかないわよ。それに投石攻撃だって弱いから、ちゃんと守りを固めていれば前に進めるわ」
「お嬢さま、ここは私が前に出ましょう」
フィフィ、カティア、メリーダは岩陰に集まり緊急の会議を開いている。
先ほどの攻撃に出鼻を挫かれ今後の策略を決めているのだ。
その間も隠れている岩場に石が当たる音がする。
「ですが、どうなさいますか? むこうは道を塞いでいます。右と左どちらの道をいかれますか?」
メリーダは静かにカティアに質問した。
「そんなの決まっているわ。右の方が目標に近いからそっちに行って蹴散らして一気に進みましょう」
カティアはそう答える。
ハッキリ言えば熟考した考えで無い事は分かっていた。
本能的に最短の道をカティアは選択する。
「……わかりました。ではやりましょう」
メリーダも戦況判断を正確に出来る知識も経験も無くカティアの案に従う。
「わかった、なにすればいいのかな?」
フィフィも頷いて同意する。
「そうね……メリーダを前に、わたしが近くにいったら跳び出すから、フィフィちゃんは援護して。魔術の矢で牽制して怯んだ所で跳び出すから」
カティアの作戦に乗って、彼女達は動き出した。
投石攻撃が止み、両者は距離を詰めていく。
静かにではあるが戦局が動こうとしていた。
カティアのハンドサインでメリーダとカティアが一斉に飛び出した。
右側の土人形5体に向かいメリーダは盾を構え距離を詰めた。
土人形も同時に飛び出す。
そこに後方からフィフィの魔弾が飛来する。
命中精度はいまいちだが、前に出てきた土人形の2体に直撃した。
飛散するように土が辺りに飛んで動かなくなる。
「よし、ここだ! メリーダ抑えてね」
そう言ってカティアはメリーダの背中から飛び出した。
そのままメリーダを追いぬき、そのまま岩場の通路にいる土人形に斬りかかった。
目の前にいる土人形にそのまま袈裟斬りを仕掛け――見事に左肩から剣閃が入る。
(よし、いった!)――とカティアが思った瞬間に鈍い振動が剣から伝わり、そのまま胴体の中間で止まってしまった。
「あれッ?」
予想との違いに思わず声を出すカティア。
その衝撃は身体内部にある小石の集合体にぶつかった衝撃だった。
しかも、土人形はカティアを掴もうと動き出している。
(危ないッ!)
そうカティアは直感し、剣を話して対応するか躊躇する。
しかし、思いとどまったのも一瞬で、すぐに攻撃に頭を切り替えた。
「風よ、子の如く渦を巻き、渦の如く敵を払え……。渦竜巻」
土人形に腕を掴まれながらカティアは魔韻を唱える。
剣の先が淡く光、そのまま――土人形に魔力を集め。風魔術が発動された。
爆散するように土人形の身体が吹っ飛び、そのまま渦巻く風が直線上の敵を襲う。
サイリアの習った新たな魔術であるが、しっかりと詠唱し、的確に発動した魔術の威力にカティアは満足した。
(やった、できたぁ~)
内心で始めて上手く呪文を唱え、しっかりとした対応が出来た事に跳び上がりたいほど、喜んでいた。
「大丈夫、道が開けたわ」
通路には土人形の影は消えている事を確認したカティアはそのまま後ろに知らせる。
しかし、それと同時に――「お嬢さま!」とメリーダが叫ぶ。
後ろを守っていたメリーダに横から大量の土人形が襲いか掛かり始めていた。
「メリーダ!」
慌ててカティアは叫ぶ。
そして、すぐさま助けに向かおうとした。
その時だった――「キャアッ!」
カティアは親友であるフィフィの悲鳴が響く。
「フィフィッ!」
驚き顔を悲鳴のする方に向ける。
――フィフィの周りに土人形が10体ほど周りを囲っていた。
(あぁ、どっちを助ければいいの!? どこに土人形がいたのよ!!)
あまりに突然の事でカティアは混乱する。
どうしていいか身体が動かないカティア。メリーダもフィフィも囲まれている。
仕方なしにカティアは飛び出した。
「ヤァァァァァッッ!」と、気合いを入れた叫び声をあげて、近くにいるメリーダの方を助ける為に土人形の集団に飛びかかった。




