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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第5章;弟子達との修行
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限定剣術訓練

「師匠、まだ……わたしは負けてないッ!」


 修行をしている岩場にカティアの声が響く。


「いや、負けを認めろよ……」

 ジョーも近くいて、カティアに嫌々ながら声を掛けた。


 事の始まりは――数分前に遡る。


 昼食後に食後の腹ごなしとして剣術の実戦稽古をジョーとカティアはするようになっていた。

 実践といっても真剣は使わずに木剣で殆どが打ち合い稽古である。

 条件は1本取られたら負けという極めてシンプル内容であった。

 しかし、本日は限定条件が付く、『岩場の上だけを足場として訓練する(※小石や地面とする所に付いたら負け)』――というルールが付け加えられた。

 つまり、限定条件実戦訓練『落ちたら負けよ』というわけだ。


 そして――訓練は開始される。

 

 幸いにも岩場だらけのこの場所で、足場は多い。飛び跳ねて移動出来る、そして地面に着いたら負けである為にカティアにも十分勝機はあった。


 カティアは少し離れ、周囲を確認し、岩場の場所を探る。

 戦闘の基本として『地の利を生かせ』と教えられたカティアは自分が戦い易い場所を探そうとした。

 しかし、ジョーは手早く間合いを詰めていく。

 驚いたカティアは一端後方の広い岩場に跳躍し距離を取ろうとした。

 跳躍と同時に声が掛かる、「ほら、相手から目を離さない」とジョーからお叱りを受けた。


 急に距離を詰めてきたカティアは驚いて、すぐに突きを出す、狭い岩場なら避ける範囲も小さいと判断した。

 しかし、上半身だけで華麗に(さば)かれ不発に終わる。

 距離を詰められ、さらに互いに一太刀の間合い。

 そして、目の前には不敵に笑うジョーがいた。

 明らかに余裕がある。――だが、カティアは攻撃する。すぐに横一文字に剣閃を振るう。

 先ほどまで躊躇(ちゅうちょ)していたカティア。過去の彼女なら焦って無様な剣を見せるはずだか、これまでの訓練の成果と日々の努力のお陰で綺麗な右薙ぎの型が出来ていた。

 横薙ぎの攻撃は狭い範囲で有効である。まず受けなければならない、場合によってはジョーが後ろに跳び退くかもしれないのだ。


 しかし、カティアの目論見は見事に外れで、ジョーは剣先をカティアが振るう木剣の鍔付近から真上に斬り上げた。

 木剣を短く持ち、ジョーはそのままカティアの木剣を上に飛ばす。

 カティアの手に痛みが走るが一瞬の事でよく分からないまま、手には――木剣は無かった。

 次の瞬間にはジョーの肉体が迫り――ドンッっとぶつかる。

 それも激しくでは無く、優しく、そして、カティアが後ろに倒れるくらいに加減した“ぶちかまし”を行った。


 なすすべなく体勢を崩すカティア。

 このまま背中に地面を付ける寸前まで来ていた。

 近くには木剣が地面に落ちる音がする。このままカティアも同じ様に落ちてしまうと誰もが思っていた。

 

「ふんッ!」

 カティアはそう声を上げ、80度以上倒れた身体がその場に止まる。

 倒れる瞬間に、ジョーが前にやったように足の裏に魔力形成で剣を造り岩場に突き刺し足場を固定したのだ。

 

 しかし、弱々しく今にも倒れそうではあるが――。

 


「ほう、やるな、カティア」

 ジョーはカティアの粘りを称賛した。


「まだまだ……」

 カティアは元に戻ろうと顔を真っ赤にして必死に抵抗している。


 しかし、ジョーはそっと木剣の切っ先をカティアの腹に押し付けた。


***


 ――そのような経緯があり、カティアは負ける寸前である。

 しかも逆転は不可能なほど追いつめられていた。


 カティアはジョーが腹に置いた剣先を両腕で掴み何とか耐えている。



「おい、この体勢からの反撃は無理だろう……というか、離せよ……剣を」


「師匠……、勝負は終わっていません……」

 カティアは身体をプルプルと軟弱な小動物のように震わせて耐えている。

 その体勢は非常にお腹の筋肉を使う。


「いや、終わっているって……それに実戦だったら両手剣先を掴んで血塗れだぞ」


「わたしは……こんな所では負けない! たとえ下が煮えたぎるマグマのような場所にいても逆転してみせるんだぁ――!! 正義は勝つ――!」

 カティアの自己脳内設定を大声で叫ぶ。


 そう、ヒーロー劇のようにカティアの脳内ではヒーローが悪者(=ジョー)に危険な場所でトドメをさされる瞬間のように設定されているようだ。


「カ、カティアちゃん、がんばってッ!!」

 フィフィの声援が飛ぶ。――まるで、主人公に声援を送るヒロインのように。


(おい、もしそれが自分を追いこむ為でも……マグマだったら熱いって、溶けるって……、そんな事より俺、悪役かよ! なんか納得いかない……)

 ジョーは懸命に頑張る弟子の必死の抵抗を見せつけられ、不思議な感情を抱くようになる。


 ――悪い笑みを浮かべ、本当の悪役のような感じを出す。


「カティア、お前の負けだ、素直に認めろ……」


「やだ、まだ、負けてない……」

 木剣と足場に支え慣れながらカティアは拒否した。


(そういえば……)

 ジョーは思いだす。カティアは訓練でも剣の稽古でも何度も、何度も、何度もなって、やっと出来ないと悟ると初めて無理だと口にする諦めの悪いタイプだという事を。


「仕方がない……トドメだ!」

 ジョーは決意し――そのままカティアが必死に掴んでいる剣をお腹の上に置いて――上下振動を与えた。

悪役のように悪い笑みを浮かべ、容赦のない攻撃を加える。


「アッ、あぁぁぁぁッッ、し、ししょう、だめぇ~ぇ~ぇ~」

 カティアは悲鳴を上げる。

 支えになっている木剣が限界寸前のカティアの腹筋に振動を与えた。

 さらにそれが身体全体に伝わる。


 まさに――鬼畜の所業!!


「らめぇ~……、そんな刺激を……♥ お腹に……ズボズボしないでぇ~」

 ――カティアの断末魔が響く。

「ほら、ほら、早く、あ・き・ら・め・ろ」

 ――笑みをつくりジョーはそのまま無慈悲に攻撃を続ける。

「わたしは……屈しない」

「だから、その体勢では無理だ」

「でも……負けてない」

「だから、ま・け・だ」

「ら、らめぇ~……、もう、もう……れちゃう……」

 ジョーの容赦ない弱点攻めは功を奏し――カティアは暫くすると地面に崩れ落ちた。


***


「うぅ……、師匠、酷い……」

 カティアは完全敗北のまま、地面に身体を投げ出し寝ていた。

 このまま「くッ、殺せ」と最後を迎える前の女騎士のようにも見えなくもない。

 

 男女の師弟関係で間違いがあり、その後色々あった後のようではあるが――立派な訓練の一環である。


「早く諦めればいいだろ……まったく」


「ジョー師匠、わたしは希望がある限り諦めません!」

 キリッとした表情でカティアは反論する。


(本当に、コイツは英雄(ヒーロー)タイプの人間だな……)

 カティアの強い言葉にジョーはそう思った。


「わかったから……、じゃあ、決着もついた事だし、次の訓練にいくぞ。次は『集団戦闘訓練』だ」

 ジョーはそうニカっと笑い、次の訓練の指示を出した。


 



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