魔物と人と文明~その2
「だから、落ち着けって、実際に昔は、危険な場所、それも地図に乗っていない場所の探索や、危険な場所の開拓任務などを行っていた時期もあった。しかし、徐々に……だな、国としての形成がなされ、文化交流が盛んになり、そういった大物の仕事は国自体が請け負う事になったんだ。実際に迷宮の攻略の半数以上は国の支援というか主導の元、行われているし、新大陸の発見などの海運任務も国の支援は必要不可欠で、個人で行うには大きすぎるし危険なんだよ」
「だからって師匠……夢を壊さないで……」
カティアは打ちひしがれたまま、ジョーに告げた。
「カティア、その前に……お前は冒険者に何を求めていたんだ?」
ジョーの問いにカティアは顔を上げ、目線を強くし――「超絶な魔物と死闘して、迷宮を攻略し尽くして、有名になって、町に私に憧れて女性冒険者が殺到し、皆に褒められて、後の世に残る位の功績を上げて、そして最終的に町に像が立つくらいの冒険者になりたいです」と、素晴らしく真っ直ぐな意見を言う。
「…………」
流石のジョーも唖然としている。
(おい、カティアの親父様の為に有名になるんじゃないのか?)
カティアの夢は前に聞いた時より野望の位が格段に上がっていた。
「なぁ、前に聞いた時よりも、だいぶ……というか、なんだ、夢の度合いが上がっているんだが?」
「師匠、夢とはいつまでも“同じ”ではありません。段々大きくしていかないと」
カティアは常人では思わない、かなり大きな事を言うドリーマーだった。
目を輝かせてジョーに当然とばかりに意見を言う。
(なに、この子、大物ッ!)
ジョーはさらに驚く。
「まぁ、そうだな……、そう考えてもいいのか……、あれ? いいのか?」
あまりに未知数であるカティアの夢。ここで現実を教えて潰すのか、このまま夢を育てた方がいいのか、ジョーには理解出来ずに考え込む。
「ん~~ッ、そう言えば、聞いて無かったな、将来的にどんな冒険者になりたいんだ?」
ジョーは突然に疑問が舞い降りた。
いままでは冒険者の仕事方法や戦闘の仕方等を重点的に教えてきたが、そもそもの将来設計の話しはしてきていない。
「カティアは聞いたから、フィフィはどんな冒険者になりたくて、どんな夢がある?」
突然の質問にフィフィは身体を真っ直ぐにして硬直した。
「は、はい、わたしは……、あの、夢って程の話では無いんですけど……、有名になりたいとかでは無く、その、普通に冒険者として独り立ちして、おカネを稼いで、家族にも仕送りとかできたらしたいです……」
(おォッ! 普通で安心した。なんだろう、この安らぎは……)
ジョーはいえもしない安らぎの気持ちが心の中に芽生える。
「そうか、いいじゃないか」
「で、その……」
「まだ、あるのか?」
「はい、あのですね。その将来的には優しい人と結婚して、家庭を持ちたいです……」
フィフィは顔を真っ赤にして答えた。緊張して下を向いてしまっている。
なにも、その人生設計までは発表しなくていいが、普通の女性の夢を語る。
(なんて、安心できる回答、超普通だ……)
ジョーは満足そうに頷いた。
「そうか、じゃぁ、メリーダはどうだ」
ジョーに尋ねられたメリーダは、静かになって動かなくなってしまった。
そして――モジモジと恥ずかしそうにして、口を開いた――。
「……そうですね。私は冒険者としての夢は持っていません。あえて言うならばお嬢様が健やかに育ってくれればと思います――」 と、メリーダは答えた。
(うん、まぁ、お付きとして始めた冒険者稼業だもんな……)――ジョーも納得する
「ですけど、その、私にも夢がありまして……――」
(エッ、何を言うの……)――ジョーは驚く。
「その、将来的には、け、結婚もしてみたいですし、子供を産んで育ててみたいです」
と、メリーダも顔を赤らめて答えてしまった。
いつの間にか『冒険者としての夢』から『人生の夢』への発言大会に変わってしまった。
(なに、その可愛らしい夢は……、相手は……俺でもいいのだろうか?)
などと、弟子達の夢に当てられて、ジョー自身も夢の中に入っていこうとしていた。
――ほっこりとした気分になる、。
そんな時、丁度よく、「ほら、お茶の準備が出来たわよ」と、サイリアがモノを運んで、一時休憩となる。
***――閑話休題。
「まぁ、話しはズレてしまったけど各々の言いたい事はわかった。でもな、やっぱり冒険者はあくまでも冒険者であって、特別な存在ではない。危険な仕事もするからそれなりに敬われてはいるけど、実際にはフィフィの親父さんのパン屋だとか、モノを売る雑貨屋とか、酒場を経営する者や食堂屋、武器、防具屋を経営している者とかと、なんら変わらない、その町や村で生活する奴の事だ。特別に偉いわけでも無く、かといって重罪を犯してもいい立場でもない。まさに冒険者とはそこら辺の一般人というわけだ。この説明は前からしているな?」
ジョーは湯気のたつ暖かいお茶を飲んでいる弟子達に問いかける。
「でも、師匠、有名になって、劇の芝居に使われる冒険者の話しもありますよ」
カティアはそう言って反論する。
「そりゃぁ、何百年と続く職業だ、その中に超絶すごいヤツがいても不思議じゃない。だがな、大抵というか10000人の内9999人は普通に仕事をして、何事もなく人生を終えているぞ、確率の問題なだけだ。逆にそんなに話しになっている奴はいないだろ?」
「まぁ、そうですけど……」とカティアは歯切れの悪い返事を返す。
「カティア、将来なんてまだまだ分からないだろ? それにこれは一般的な冒険者の話しであって、特殊、それも超絶に特別な存在の話なんてしないからな」
「はい、わかりました」
カティアの返事に1つ頷くと、ジョーは持っている茶を一口飲んだ。
「じゃあ、次は人と魔物の関わり合いについて話しをしていく」
そう、静かにほほ笑んだ。
カティアの夢は有名になって町に女性冒険者を取り込む事です。
まぁ、始めてあった時に話していましたね。
その頃はまだ、初々しさの残るカティアがいました。
文明とは常に進んでいるものです。
そう、ご都合の如く主人公が迷宮制覇とか突然に起こらず、先人達の開拓の上にあります。
時代は流れ、情報の整理され、進んでいく中で冒険者の仕事も変化していると作者は考えました。
あれです、100、500、1000年変わらずに同じ仕事のわけないよな?--という、普通の考えです。




