実地訓練~その3
「魔術的なやり方としては色々あるの。1つ目は風魔術で周りに匂いを散らさない事、風の方向を変えるなんて事をする、2つ目は幻術で周囲に同化するか視覚的に見えづらくする方法があります」
「サイリア師匠、視覚的に見えなくても魔物は鼻がいいので分かりませんか? 方向とか?」
サイリアの言葉にカティアは反応する。
「そうね、でも逃げる時には効果的よ。特に霧を発生させるといいわ。見えない者に魔物は警戒心を出して近寄ってきません」
「そうなんですか……」カティアの声にフィフィもメリーダも頷いた。
「魔術で霧の発生方法を教えましたが、これは色々と使えます。特に水は匂いを消してくれるので魔物に近寄り易くなる効果があるの、雨の日とか警戒心薄いのよ」
サイリアの言葉にカティアとフィフィは納得する。
その折――ジョーは「雨の日は確かに近寄り易いが、注意しなきゃいけない事がある。こっちも雨音に気をとられ、気配や匂いに気が付かないで逆に魔物が近寄ってくる事を忘れるなよ」と、至極当然の助言を送る。
「そうね、こっちが有利だと思っていることは“むこう(魔物)”からしても有利かもね。雨の日とかは事故が多いのよ」
サイリアは豆知識としての情報を教えておく。
カティア達も悩んでいた。
「サイリア師匠、結局、雨の日に近寄った方がいいんですか?」
カティアは再び疑問に思った事を質問する。
「違います、状況によって判断しなければいけない事なのよ。実際の仕事では依頼日数とか足らないと雨が降っても仕事に行かないといけないし、突然雨が降る事もあります、そんな時は、みんなと話し合って現状判断とリーダーの決断によって決めていかないと更に危なくなりますからね」
「はい、わかりました」
カティアは元気な声を上げる。
「少し話しがずれちゃったけど進めていきます。いいかしら?」
サイリアは再度、場を仕切った。
弟子達は了承の頷きを見せる。
「では、続きです。これまで話してきた魔術は前提として隠れる事、欺く事の方法でしたが、こちらから動きを探る少し特殊な方法もあります。探知魔術と呼ばれる方法です。この方法は魔術で魔力を飛ばし周囲にいる魔物を“知る”事が出来ます。それによって大体の位置を知覚できるの。これはこっちから積極的に探して見つける時につかう魔術です」
「師匠、知ってます。探知魔術は学校でも習いました」
サイリアは手を上げる。
「でも、アレって難しいですよね?」とフィフィも手を上げた。
「あら、よかった、現在の学校は探知魔術まで教えるのね……」
サイリアは驚いていた。
昔はそこまで細かく魔術を教えていない事が多く、攻撃系が重視されてきていたのだ。
「はい、自分の周囲の状況を探る魔術は冒険者にとって必要な事だって言っていました」
「そうね…重要よ、カティア。でも自分の周囲だけじゃなくて、遠隔操作した魔術は習った?」
「遠隔操作する探知魔術?」
カティアは首を傾げた。
「そこまでは教えてないのね……わかった。遠隔操作する探知魔術は罠魔術に近いんだけど、その場所を通る動物を感知する事ができるの。実際の使用方法としては自営での休憩個所の周りに配置したり、罠魔術の周囲に配置したりするのよ。後は獣道とか通りやすそうな所にも配置する魔術ね」
「へぇ~、私達にも使えますか?」
「大丈夫、基礎は教えるわ。探知魔術が出来るなら使えるけど、少し訓練が必要なのよ……覚えれば有効な魔術です」
「はい、サイリア師匠、是非教えて下さい」
「お願いします、サイリア師匠」
カティアとフィフィも乗り気だ。食い気味にお願いをしていた。
「わかったわ、拠点にもどったら教えていきます。では、その他の特殊な方法であるのですが、見つからないように“呪術”での“魔除けの術”がある事も覚えておきましょう」
「師匠、それってなんですか?」
「魔術陣を描いて魔力を送り込めば出来るお手軽な魔術です。後で魔術陣の術式を教えるから、カティアもフィフィも使ってみなさい。効果は対象の気を逸らす事のできる有効な魔術なのよ」
「へぇ~、そうなんですか。便利そう」
カティアは感想を言う。
「気を逸らすってどんな効果なのかな……」
フィフィはサイリアの言葉の意味を知りたくなった。
「フィフィが気になる事はよく分かっています。実際に効力は見つかってからでは遅いけど隠れているなら特に有効に働く魔術なの。なんというか、あやふやであるけど……、意識しにくくする魔術と言っていいのかな? 見る前に意識するのよ、匂いを嗅ぐ前に意識をするものなの、その前段階で意識しないようにする魔術なのよ」
あやふやな説明でカティアとフィフィは同時に首を傾げる。
「要するに隠れている者にとって有効な魔術という事ですか?」
メリーダが手をあげて答えた。
「そ、そう、その通りです」
メリーダの回答にサイリアは正解を与える。
この魔術はお手軽であるが、見つかってはすべての効果が切れるという特殊なモノだった。
「それくらいかしら……魔術で追跡して、逃走する術は、他にも細かくあれば言えるけど後は戻ってから説明しましょう」
サイリアの簡単講義は終わった。
「そうだな……、長々と説明し続けても危ないから……よし、栄養をとったら山を下るぞ。あとは行きと同じで静かに行動だ。ゴミは捨てずに腰鞄に入れとけよ」
「師匠、落とした簡易食料はどうしますか?」
カティアは悪びれもなくきいてきた。
「落とすなよ、食料は大事にしろよ。まぁ……そのまま捨てとけ、下手に食べるとお腹を壊すし……、動物が食べるだろうから……」
「じゃあ、拾った木の実も置いておいた方がいいですか?」
「それは好きにしろ。それじゃあ、片付けたらすぐに移動する」
ジョーの言葉で締めに入った。
そうして、静かにジョーを先頭にカティア、フィフィ、メリーダ、サイリアは移動していく。
――移動した後を小動物達ガサリッと茂みの中から出てジョー達が座っていた場所の匂いを嗅いで、落ちている食料を争うように食べていた。
魔力で探す事はこの世界では普通です。
しかし、魔力は有限の為に場所を絞り、行動を予測した上で探知魔術を使うのが一般的です。
なので、足跡なのど痕跡をもとに割り出します。




