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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第5章;弟子達との修行
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実地訓練~その1

「実は(おおやけ)には公表を控えるべき事なんだが……。決め方は大きく分けて4つある。


1つ――その魔物によって被害を受けた冒険者以外の一般人の被害数。

2つ――その魔物によって殺されたランク別の冒険者の死亡数、または被害数。

3つ――その魔物によって被害にあった村や町の損壊具合。

4つ――その魔物の生態、繁殖具合、討伐方法の確立がなされているか等を加味する。


こんな所かな? それが魔物のランクに反映されるんだ。それによって“だいたい”の危険度が割り出されている。

後は特殊な事例として変異種(バリエル)もいるから、系統別の魔物の種類と能力が調べられてランクが決まるという訳だ。

……どうだ、わかったか?」


 ジョーは弟子達に問いかける。

 弟子達はジョーの答えを聴いて怪訝な顔を向けた。


「ジ、ジョー師匠、1ついいですか?」

 カティアは手を上げる。


「なんだ?」


「あの、変な考えかも知れませんけど……“あやふや”過ぎませんか? その、なんていうか、ちゃんとしていないっていうか……」

 カティアは非常に心配そうに尋ねている。


「うん、その通りだけど何か?」

 ジョーはあっけらかんと答えた。


「ですけど、それでいいんですか?」


「しょうがないだろ、魔物の強さなんて正確に測れる訳ないんだから、客観的な被害者数や死亡数、それに事実から割り出すしか無いんだよ。それこそどうやったら正確に計れると思っていたんだ? 過去の人々の知恵と経験と情報の積み重ねによって魔物のランクっていうのは決まっているんだよ。確かに“そんな方法で?”と思うかもしれない、でも“あやふや”な部分は確かにそう思うかもしれないけど……。数値化することなんて到底無理なことだな」

 ジョーの発言に弟子は困惑していた。


 明確な回答では無い事はジョー自身も分かっている。

 しかし、実際の被害者数も発見された部分でしか無い可能性も、報告されていない可能性も多数ある。さらに1匹1匹魔物の被害の総数など分かるはずも無く、確定という訳では無い、その為に細かい査定調査はギルド職員も行う決まりだが、見てきた訳ではないので部分的に予測の補足を加えている。

 その為に時代とともに変化しているのだった。


「だから言ったろ? 公に出来ない理由がそこなんだよ。『これが正解です』なんて言えないだろ?」


「まぁ、そうですけど……」と、カティアは歯切れ悪く言う、その言い方は納得していない。


「そう言う訳だ、フィフィには悪いが『正確な計り方なんてありません』が正解と言った所だろう」


――ジョーの発言にフィフィは落ち込む。先ほどの質問が意地悪過ぎた。


「師匠、それじゃあフィフィちゃんが可哀想です」

 カティアはすぐさまその様子を見て抗議した。


「そういっても、冒険者にとって正解な戦い方は無いという事だ。なので“どんな魔物”にも緊張感をもって臨むべきという教訓だな」

 ジョーは自慢げに告げるが――弟子達からは不評であった。


 その後、休憩を終えた一行はさらに山林の中を進んでいく。


***


「し、師匠。アレって巨大猪よね……」

 カティアは茂みに身を潜めながら崖の上から下を見下ろしている。

 声は極力小さく、ほとんど聞こえない位の声しか出していない。


「そうだ、音を立てるなよ……」

 ジョーも同様に答えていく。


 ジョー達は現在崖の上から巨大猪の行動を観察していた。

 観察とはいえど、そこは命がけに近い、なにしろ相手は巨大な魔物だ。

 ジョーとサイリアは慣れているがカティア、フィフィ、メリーダは初めて対峙するゴブリン以上の高ランクである魔物だった。


 巨大猪は“ヌク場”と呼ばれる“ぬかるんだ場所”で身体中に泥を擦りつけている最中だった。ゴロゴロとネコのように身体を地面に擦りつけていた。


「サイリア師匠、アレは何をやっているんですか……?」

 フィフィは質問をする。

「アレはね、身体に泥をつけて汚れと匂いを落としていると言われているの。猪系の魔物がよくやる行動の1つよ……」

 サイリアは答える。2人ともヒソヒソ声で話し続けていた。


「師匠、あの行動と私達が隠れている事は何の関係性があるんですか? それよりも討伐しないんですか……」

 カティアは続けてジョーに質問する。

 ジョーがココにいるのは彼自身が指示を出し、ゆっくりとこの場所に近寄っていたので事の真意を弟子達は理解していなかった。


「カティア、考えが浅はかだ。愚か者だぞ、それだと……。猪はヌク場に行く事が確認出来ればいいんだ、魔物の生態を知ることが今回の課題だからな……。よし、そろそろ引くぞ、みんなゆっくりと下がってくれ、音を出すなよ……」


 ジョーは小声で指示を出す。後はハンドサインで徐々に茂みから後退していった。


***


「これだけ、離れれば大丈夫か……」

 ジョーは辺りを確認して気配の探知を終えた。


「師匠、もう普通の声で喋っても大丈夫……?」

 カティアはジョーを見上げて質問する。


「大丈夫だ、それよりカティア、さっきの質問はなんだ。“討伐”できる訳ないだろ」

「エッ、なんでですか、巨大猪ってそんなに強いの?」

 カティアは驚いている。


「ちがう、討伐は出来るが“運ぶ事”も考え無いといけない。それに前にも説明しただろ? 生態系を乱す事をしてはいけないと……」


「アッ、そうだった……」

 カティアは思いだしたように声を上げた。


 ジョーは溜息を吐くと――「よし、これから追跡術のおさらいをしよう」と言い出した。


 そのまま近くにある倒木の上に座りだすジョー。自然とサイリアを始め、カティア、メリーダ、フィフィも追従して近くに座りだす。


「まずは今回の訓練の目的はなんだ? メリーダ答えてみろ」

 ジョーは先生のように教え子に質問をする。


「はい、現地において魔物の生態と行動を確認し、その追跡術と逃走術の基礎を学ぶ為です」

 メリーダは答えた。


「よし、正解、これは行く前に確認したな。次になんで魔物の生態を知る必要があるのか? それについてフィフィ、答えてみろ」

 目線をずらし、質問を続ける。


「はい、えっと……、魔物の行動を知る事によって生息範囲の予測がたち、近くにいるのか遠くにいるのか追跡出来て、そして行動範囲に“罠”を設置しやすいからです」

 フィフィは迷いながら答えた。


「そうだな、でも設置だけでは無く、合わない道の予測にもなる。目標以外の敵との交戦も避けないといけないからな。じゃあ、最後にカティア、追跡術について大切な事を全部述べよ」


 ジョーは意地わるそうに笑みを浮かべた。




ヌク場とは泥が多い場所の事です。泥濘とも表現しますが、今回は専門的に『ヌク場』と表現しました。

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