訓練8日目
――訓練も8日目に入った。
ジョー達は元の洞窟にもどって訓練を続けている、昨日は前と変わらない訓練をしていたが本日は趣向が違っている。
朝の訓練を終えると――朝食を摂り装備を整えて山の中を探索しているのだ。装備も完全装備で手荷物を背負い移動している。
冒険者に必須となるあらゆる場面での逃走術と追跡術の実地訓練をしているのだ。
全員が紺色のマントを着て大木に成長した木々の合間を根っこと苔の生えた岩と倒木に気をつけながら進んでいた。
ジョーを先頭に カティア、フィフィ、メリーダ、サイリアの順番で一列に並んでいた。
辺りを警戒しながらジョーは朝日が差し込む森林の中を見渡している。
「大丈夫そうだな……」
【あぁ、危険な生物の感じはしないな】
ジョーの背中に背負われたスネークも同様の意見を言う。
周囲には綺麗な景色が広がっている。緊張感はそれほどでもない様子でジョーはハンドサインを後ろに送った。
「ねぇ、カティアちゃん、綺麗だね……」
フィフィがうっすらと靄のかかる景色を見て前にいるカティアに話しかけた。
大声ではなく、殆ど小さな小声だった。
「そうね、訓練場所の山の中と少し違うかも……」
「うんうん、なんか、こう、神秘的で匂いも違うよ……」
「そうかしら……」
カティアはクンクンと鼻で匂いを嗅いだ。
「カティア、フィフィ、お喋りはそれ位にして、ちゃんとジョーについていきましょうね」
後ろからサイリアが声を掛けた。
「は~い、師匠」、「わかりました……」
そうして――ゆっくりとジョーに先導され山の奥に進んでいく。
***
ある大木の根っこの部分でジョー達は円陣を組むように座って休んでいた。
携帯食料を片手に山奥で休憩をしているのだった。
「師匠、何もありませんね」
カティアは安らかにそう言って、この遠足のような状況を楽しんでいる。
「カティア、何も無いんじゃない、危険な魔物が出てこないだけだ……」
ジョーは無表情で携帯食料を口に含んでお茶で胃袋に流し込んだ。
「どういう事ですか?」
「実際に結構な数の魔物には出会っている。俺達に向こうが気付いて逃げているんだ」
「それって、本当なんですか? デタラメじゃなくて?」
「おい、師匠を信用しなさい、それに前に説明しているじゃないか?」
「でも、鳥の鳴き声はするけど……虫とかいるんですか?」
「まったく、ちょっと待ってろ、すぐ近くにも気配はするから……」
ジョーは立ち上がると、そこら辺にある小石を拾う。
すると、茂みの中を振り向くと、振りかぶって小石を投げた。
[ガサッ、ゴソッ]と木に当たる音がすると――なにか得体の知れない“モザイクのような”ものがかかった物体が飛び出した。
形容詞しがたい光景だが、景色そのものが動いているのだ。
ジョーはそのまま駆けだす、肉体強化魔術を併用し、地面を飛ぶように駆け抜けると、その動く、物体を両手で捕まえた。
「ピキュ―、プキュー、ブキュー」と声が響くと、景色に変わっているモノが変形しマヌケ面をした8本足のタヌキが姿を現した。
「ほら、『シノビタヌキ』が居るんだよ!」
ジョーの手で足をバタつかせて暴れているシノビタヌキをジョーはカティア達の元に持っていった。
「わぁ、かわいい……」
「すごい……かわいい」
「愛嬌のある顔ですね……」
女性陣はシノビタヌキの繁々と眺め感想を言う。
(そうか……、ただのマヌケ面をしているようにしか見えないけど……)
ジョーはそう思う。
女性陣と美的感覚が違いすぎた。
「いいか、こう言う風に ランクの弱い魔物は周りの景色と同化する術を身につけている事が多い、しかし気配そのものを探る事ができるので注意深く観察すると発見は容易だ」
ジョーの説明に――弟子たちは誰1人聴いていない。
カティアは手を出して頭を撫でようか迷っている。
フィフィはシノビタヌキを優しそうな表情で眺め。メリーダは興味深そうに顔を見ていた。
ジョーは溜息を吐いて、シノビタヌキを地面に降ろした。
素早く、逃げるように方向を変えシノビタヌキは去っていく。
「あぁぁッッ……」とカティアは悲しそうな声を漏らした。
その非嘆の声は他の弟子達も同様であった。
彼女達はその愛らしいシノビタヌキの尻尾から胴体を撫でまわしたかったのだ。
「師匠、なんで逃がしちゃうんですかぁ~……」
カティアは寂しそうにジョーを見つめた。
「当たり前だろ、あの体勢じゃ噛みつかれるのがオチだ。その前に理解したのか? こんな風に俺達の周りには隠れている魔物は無数にいる。しかし大抵の魔物というか戦闘能力の低い魔物は逃げ出すんだ」
「わかりました……」
明らかに気落ちしているカティアの返事はフィフィとメリーダの意見を同時に現しているようだった。
「……じゃあ、質問だ。シノビタヌキはギルドの査定ではGランクと最低だがこの理由はなんだ……カティア、答えてみろ」
ジョーは雰囲気を変えようと質問する。
突然、質問されたカティアは声を詰まらせるが――「……危険度」と答えを出した。
「そうだ、正解」
「うへへへへッ」
ジョーに褒められ、ニヤケた笑い声をあげるカティア。
「じゃあ、次は危険度の“はかり方”を、どうやって査定している? フィフィ答えてみろ」
ジョーはカティアの隣にいるフィフィに尋ねた。
「はい、え~~っと、あれ……、はかり方?」
フィフィはそこまで言って止まってしまう。
「どうした、考えてみろ?」
「えっと……ですね、戦った報告ですか? 誰かが強いとか弱いとか決めているという事でしょうか?」
「惜しいというか、考え方は似ているな」
「そうなんですか……」
フィフィは落ち込む。
「師匠、正解はなんですか?」
カティアはすぐに答えを聞こうとしていた。
「わかった、決め方の方法を教えよう……」
ジョーは弟子達の熱い眼差しを受け、じっくりと間を溜めて口を開いた。
書いていて、戦闘してないなぁ~と最近思っています。
普通の小説の主人公だったら強い魔物が出てピンチ、撃退となるわけですが……。
まぁ、主人公体質な話ではありませんのであしからず。
あくまで冒険者として成長していく術を学ぶ所になります。
地味ですいません。




