帰還
4日間の修行を終え、ジョー達はベルンの町に帰る準備をしていた。
朝食を摂り終えると早速――掃除に取り掛かる。
「拠点の清掃は重要だぞ。使ったら片付ける、まさに生活の基本だ!」
ジョーの掛け声と共に洞窟内の清掃が開始され、慌ただしく動きまわる、フィフィ、メリーダ、そしてカティア。
特にメリーダはやり慣れているのか動きがスムーズである。
さすが現役のメイドといえる動きで掃き掃除をして、細かな器具の汚れを落としていく。
カティアとフィフィは何かを歌いながらテントを折りたたみ、サイリアは食器などを洗いに出かけ、ジョーは薪の燃えかす、生活ゴミの処理と馬車の準備を行っていた。
「掃除が終わったら、使った寝具と服を川に洗いに行きますよ!」
サイリアが言うと、弟子達から楽しそうな返事か帰ってくる。
***
「よし、戻るぞ……」
全ての準備を終えた、ジョーは馬車に愛馬を繋げて、そう伝えた。
フィフィとカティアは馬に餌を与えながら、楽しそうに返事をしており、メリーダとサイリアは馬車内で作業をしていた。
ジョーは最後に洞窟の入り口に羽目板を立て掛けて、目立つ所に看板を設置する。
その後――馬車に乗り込むと――休みの日に出かける家族の如く。賑わいながら拠点を出た。
道中――ジョーとサイリアが操縦場所に座りながら辺りを警戒して進んでいる。
「昨日の雨で泥濘が凄いわね……、車輪止まっちゃわない?」
「心配するなよ、出来るだけ進みやすい所を行くのさ、家の愛馬は……なっ、“パインブ”」
ジョーは愛馬に問いかけると、ブルルッと返事のようなモノをしてくれる。
「それならいいけど……、それでさ、結構、充実した訓練だったわね」
「まぁな、始めは大人数の訓練で大変だと思ったけど、それなりに……な」
「いい師匠具合だったわよ」
「そりゃどうも……」
「褒めたのよ……」
「わかっているけど上から目線だな……」
「なによ、ダメなの?」
「別に……、随分と自信を持ってきたと思ってな」
ジョーは目線をサイリアに向け、優しく笑う。
「なによ、気持ち悪い……」
「おい、褒めて、すぐに貶すなよ!」
ジョーとサイリアはそんな会話をしながら山間の道を町に向かって進んでいく。
カティアとフィフィな何やら上機嫌に鼻歌を歌いあい、道中に見える動物を馬車の後ろから発見し合い、それなりに楽しみ、メリーダは静かに腰をかけ、その様子を見守っていた。
※※※
ベルンの町に入り、そのままジョー達は冒険者組合に到着した。
「よし、到着、降りていいぞ!」
ジョーの声かけと共に、弟子達が馬車から飛び降りる。
「はぁ~、疲れた。身体中カチコチッ」
カティアは早速身体を伸ばす。2時間程度の小旅行だが、乗り過ぎでスッカリなまってしまった様子だった。
「カティアちゃん、待って……」と、フィフィは馬車に取り付けてある鉄梯子から丁寧に地面に降りた。
「お嬢さま、危ないですよ!」と、メリーダがいつものように小言を言った。
そんな、普段の光景に戻っている。
訓練は訓練の表情があり、町に入ったらどこか安らいだ表情に変わっていた。
「よし、集合!」
ジョーはすぐさま声を出した。
素早く集まる3人の行動は訓練の跡が見てとれる。
「並んだな……、では、これから解散になる。再集合は明後日の朝に集合だ。場所は同じギルドの待合室、時間も同じだ。ここまでで何か質問はあるか?」
「特にありません」と、カティアは代表して返事をした。
「うん、ではこれから家に帰って結構だが、その前に言う事がある。まずは家に帰ったら集合までに武器、防具の手入れはしておく事」
ジョーの命令に――
「「「ハイッ!」」」と弟子達から返事があった。
「――家の人に報告を忘れるなよ。早寝早起きをして体調を崩さない事――」
「「「ハイッ!」」」
「――休みの時は身体を動かさず、“完全に何もするなよ”」
「「「ハイぃ?」」と、ジョーの命令に一斉に不思議な顔をした。
「師匠、どう言う事ですか?」
カティアは代表するように質問をした。
「んッ、カティアもフィフィもメリーダも身体が重く感じないのか……?」
ジョーも不思議な顔を返す。
「重いですけど……、それが何なんですか?」
「だったら、身体を酷使したという事だ、訓練で長時間魔力を使った。だからしっかりと回復させる事が重要なんだ。魔力に関しても筋肉に関しても自分が思っている以上に使っている。ここでしっかりと休む事により身体の回復を計るんだ、そうする事によって前よりも身体のキレもよくなって、訓練の成果が良くなる事が多い。それに一流の冒険者ほど依頼中に休憩の取り方が上手い。余計な体力を使わない事が出来ているんだよ。さらに体調を休みの間に整える事も立派な訓練になるんだ、いいか?」
ジョーの説明に弟子たちは頷く。
「よし、他に何か質問はあるか?」
「あの~、ジョー師匠……」メリーダは手を上げる。
「どうしたんだ、メリーダ」
「いえ、私は御屋敷で仕事がありますので……、何もするなという命令は……」
「そうか……」
「師匠、わたしも家の手伝いをしないと……」
フィフィが思いだしたように告げる。
――ジョーは少し考え込む。
「わかった、それだったら手伝いはしていいが……出来れば最小限に済ませてくれ。親御さん達には事情を説明して、なんとか取り計らってもらうんだ」
「わかりました、旦那様に相談します」
「わたしもお父さんに聞いてみます」
2人は返事をした。
「そうしてくれ、自分達が思っている以上に訓練での消耗は激しいからな、気を抜くと急に身体が重くなってしまう事もある。“マナ欠乏症”の軽度の症状が出てしまうかもしれないから注意しておく事。よし、俺からは何も無いけど……サイリアは何かあるか?」
「特に無いわ……」
サイリアは首を振る。
「そうか、じゃあ、開散するか……」
ジョーも、これ以上思い付かなかった。
後はサイリアとこの後に買い出しに出かけるしか予定は無い。
【ちょっと待て、最後に言わせろ!】
ジョーに背負われているスネークが声を出す。
柄の先の宝玉から目玉がギロリと見えていた。
「なんだよ、スネーク」
【こう言う時に言う言葉があるのだ……】
「それはなんだ?」
【あぁ、『訓練は家に帰るまでが訓練だ』……そうだ】
スネークの言葉に、微妙な表情をジョーは浮かべる。
そうして、4日間の始めの訓練は終わりを迎えた。
訓練の第1クール終了です。
やはり連続で訓練しても効果は薄いかもしれません。
誰かが言っていましたが休む事も訓練である。そういう風に作者は思います。




