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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第5章;弟子達との修行
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サイリアの魔術講座

「ううゥゥゥ……、もう無理ですぅぅぅ~」

 そんな、情けない声を上げながらカティアはゴロンと床に倒れ込んだ。


「お嬢さま、はしたない格好は……」

 メリーダはいつのも通り、何度も窘める。


「メリーダ、わかっているけど、落ち込んでいるの……、そっとしておいて……」

 カティアは非劇のヒロインのように告げる。


「ですが、下着も見えておりますので……、淑女(レディ)の嗜みはお忘れにならないでください」

 メリーダはそっとカティアの下着のラインを手に持っている布で隠した。


「カティア、少し上手くいかなかったからって諦めては駄目よ……」

 サイリアも困り顔で注意する。


「でも、師匠! 上手く行きません、途中までしか伝わらないんです……」

 寝転がりながら手に持った花を見せるが、確かに中間地点までは元気な様子だが、その先がヘタっている。

 

 ――サイリアはそう言って溜息をもらした。


「カティア、魔術って何度も反復練習が必要なのよ、呪文唱えて、すぐに発現はしないの……、諦めずに何度も挑戦なさい!」

 語尾を強め、サイリアはアドバイスを送るが――「は~い、わかっています」と、やる気を削がれた少女の返事が返ってくる。


 そんな折――寝床からフィフィが起きて出てきた。


「アッ! フィフィちゃん、大丈夫?」

 カティアはガバッと起き上がり、フィフィの所まで駆け寄った。

「……カティアちゃん、…うん…大丈夫」

 眠そうにフィフィは答える。


「そう、よかった!」

「いま、何してたの?」

「回復魔術の練習!」

「そうなんだ……わたしも参加するね」

「ダメだよ、マナ切れ起こしたばっかりじゃない」


 カティアとフィフィの会話にサイリアが――「大丈夫、フィフィ?」といって割り込んで来た。


「サイリア師匠、大丈夫です」


「うん、まだ兆候は出ているから……無理は止めましょうね、よし、お茶にしましょう。それから魔術の学習時間にしましょうね」

 サイリアの提案に弟子たちは返事をする。


***


 お茶を飲み、お菓子を用意して、乾燥したフルーツを皿に出したまま――サイリアの魔術講義は始りを迎えた。


「まず、いいかしら、魔術には属性魔術、呪術、無系統魔術、特殊魔術と分類出来ます。これは学校で習うわね。今回は属性魔術について詳しく説明していきましょう……。いいかな?」


 サイリアの問いに弟子たちは返事を返す。お茶をのんで満足そうに黒板とサイリアを見ていた。

 リラックスしながらの講義はいい方向に向かっているようだ。

 力みも何も無く、サイリアも饒舌に喋り出していた。


「それじゃあ、属性魔術の系統は『炎』『水』『風』『土』の4大元素を基本としている事は承知の上だと思います。派生として『雷』『氷』『地』のような特殊な形態の魔術も生まれています。また、『光』『闇』のように特別な魔術もあります。そしてそれは生まれながらに持つ特性によって上手に扱えたりしているのです。今回は属性系統魔術の訓練法について詳しく解説をしていきたいと思います――」


 弟子たちに講義を始めた――。

 ――基礎から始め、徐々に応用について喋りはじめる。


「ここまではいいかしら?」

「はい、サイリア師匠大丈夫です」


「よろしい、じゃあ、次は混合魔術について説明します。混合魔術とは2系統、3系統の魔術を同時に合わせる事です。威力は当然のように大きくなりますが……、基本的に扱いは難しいと言われています。なので、始めは簡単な2系統から始めるのがいいです。


それでは、良い組み合わせとして『火』『風』が上げられます。


これは単純に火に風を送り込む事で炎の温度が上昇するからです。まぁ、鍛冶屋とかで使われているけど、風と炎の相性はいいわ。


次に『水』と『土』で一帯を泥にように変化させる事も出来ます。


これは形状の変化をする魔術ね。泥濘(ぬかるみ)にすると魔物でも足止めになるから有効な混合魔術よ、自然物を真似て考えられた魔術でもあります。


このように自然物を真似た魔術は多数存在します。


『水』と『炎』で霧や靄を発生させる事も出来るのですが……この場合は割合が重要になっていきます『水』と『炎』を7:3で混合する事が重要です。『分理法則』とよばれる現象でこの場合5対5にすると魔術は上手く発動しません。相反する効果の場合はどちらか一方を強くし、他の系統魔術は補助として使うのが一般的です。無理に発動すると大変危険な事になるので注意しましょう」


 ココまでを小型黒板に書いて説明していく。

 サイリアは一度弟子たちの目線を確認し、理解しているか、していないかを確認していく。


「大丈夫かしら?」


「はい、大丈夫です。ですが、どう言う風に危険なのか言って欲しいです」

 カティアは手を上げハキハキと答える。


「そうね……一般的に魔術事態が発現しない状況の方が多いけど、多量の魔力を移行している場合。暴発が起きてしまいます、大変危険なのでやらないように、過去の事例でも大怪我を負った人もいる話しです。2系統を合わせるにしても組み合わせが大事と言う事なのよ」


「はい♪」とカティアから返事が返ってくる。

 そこまで進むと――フィフィが手を上げた。

「サイリア師匠、混合魔術にはやってはいけない組み合わせがあると聞きました……」


「そうね、フィフィ、これらかその事にも触れていきましょう。まずは2系統の混合魔術には混ぜると威力が下がる組み合わせが存在します。


『炎』と『雷』は混ぜてはダメです。


基本的に互いに干渉しあい、威力が下がるとされています。同じ魔力量でも単体魔術で撃った方が、威力が高いという研究報告がなされているの……。つまり大きな魔力が必要の割には低い威力の魔術攻撃になってしまうダメな例です」


「サイリア師匠、それはなぜですか?」

 カティアはそう不思議そうに尋ねる。


「うん、詳しい事は専門書を読まないと分かりませんが……、感覚としてお湯などを部屋に置いておくとそのうちに冷めるわよね? 熱いお湯と冷たい水を混ぜると温くなると同じだと考えられています。炎魔術は十分に高温で危険な魔術です。属性魔術でもそれだけで十分な威力があるのですが……『雷』魔術はもっと高魔力の塊なのです。その2つを合わせるという事は同等量を混ぜた場合“ぬるく”なり中程度の威力に下がってしまう事になります。だから『炎』魔術と『雷』魔術は混ぜじゃ駄目なの。もっと言えばそれぞれを単体属性で放った方が、威力があります」


「それは、割合を変えてもだめなのでしょうか」と、フィフィが尋ねる。


「そうね、相性が悪いから割合を変えてもダメね。威力に変化があるでしょうけど、混ざらず全て威力が落ちるという話しらしいわ……」


「そうなんですか……」


「そうよ、フィフィ。そういえば知っているかしら、磁石って言う石はね、雷精を纏っている石だと言われているわ。砂鉄なんかを分別する時に使われる石だけど……アレを高温の火に入れると砂鉄が付かなく成ってしまうんですって。つまり、威力が落ちたという事になるの。合わない魔術を組み合わせることは『反干渉法則』と魔術理論の本では言われているので参考にしましょうね」


「「「はい!」」」と弟子たちから元気な返事か返り、サイリアも満足する。


「さぁ、どんどん行くわよ、教える事はもっともっとあるから。終わったら次は回復魔術の基礎、呪術とその対抗策についても講義しましょう……」と、ニッコリ笑い弟子たちに教えていく。






作者の中で熱力学の考えが頭をよぎりました。

物理系の話ですが、実際に磁石を熱するとくっつく威力が落ちます。よく知られていますね。


実際に雷などは高温です。

炎も高温なのですが、数万度と数千度の違いもあります。

ここではプラズマ化は考えていません。

ですが、火炎程度の温度は雷に勝てるかという疑問が作者のなかによぎります。

熱力学とエネルギー学に基づくと、威力が下がってしまうのは仕方のない事ではないでしょうか?

安易に高威力の二つを混ぜて強くなる――とは、作者は思いません。

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